02-31 過去の王都 その15
加筆・修正話です(2019/02/19)
前回の話を修正できていない事に気づけず、大変申し訳ありませんでした
メルスの発動した光系統の魔法によって、残る瘴気はレイヴンに纏いつく邪神の使徒が放つ物のみとなる。
必死に抵抗を試みるレイヴンだが、彼の背で輝く日輪の力に屈していた。
「グァアア……テメェエエエエエェ!」
「ほらほら、汚物は綺麗に焼却しないダメだぞ──“煌域顕現”」
「グギュァアアアァァアアアアアァッ!」
水分と高熱で気化するように、広間にこベりついていた瘴気が完全に消滅する。
煌きの名を冠した領域は、日輪の力を増幅させ禍々しい力を否定した。
「ギ、ギュガ……ギュウォオオオオォッ!」
「あれ? もう壊れたか……まあ、瘴気は回収できたからいいんだけど」
「ジュドゥル■ルル■■ルルル■……ギュガァァアアァ!」
「ああ、使徒に主導権が移っただけか。中途半端な言語能力は、適正云々の無視とかそういう感じかもな」
自身の知識と照らし合わせ、推測をする。
悶え苦しんでいたレイヴンの表情は、切り替わるように憎悪に満ちた顔となった。
痛覚など感じていないのか、歯軋りをする彼の歯は、その強く噛み締める力によって欠けていく。
言語にならない言葉を発し、人の身を超えた力を振るう。
「ああ、他にできることは……無いか」
「ジュド■ビュディ■アドロォ■!」
「何語だ? ……レベルが足りないな。もう少し上げとけばよかったかー」
「■ブジュディ■ヴァ!」
ガラスを引っ掻くような不快感を思わせる叫び声を張り上げ、レイヴンを乗っ取った使徒はメルスに攻撃を行っていた。
それは目の前に居る生命を本能が屠ろうとするのか、レイヴンの意志がメルスを殺そうとしているのか……そこすら定かではない。
だが、ただ一つだけ言えることがある──どちらであろうと、その攻撃は一度として、対象へ届いていないことだ。
「肉体は限界を超えてるみたいだし、リミッターがぶっ壊れてるな。となれば、直接注ぎこまないと駄目っぽい」
「ギャイア■■ドェバドォ──」
「ええい、喧しい──“煌拘束”!」
眩い輝きが紐のようにレイヴンの肉体を囲うと、濃密な光が瘴気ごと彼の体を縛る。
抵抗しようともがくが、その力の源となる瘴気が生みだされては浄化されてしまい何もできずにいた。
メルスは目を閉じ、自身の体内を流れる魔力に意識を集中する。
そう何度も使える技ではない。
瘴気を一欠片でも残せば何が起こるか分からない今、広範囲を殲滅するだけの莫大な火力が求められていた。
「だから使う、多少は疲れるだろうけど……今はスーが居るしな」
練り込んだ魔力に属性を与える。
普人族には扱える者はいない、竜の系譜に連なる種族にしか扱えない特殊な属性。
「眠れ、邪神教徒。太陽の竜、その息吹を浴びろ──“竜の息吹・陽光”」
これまででもっとも強烈な閃光が、メルスの口内から解き放たれた。
強烈な光は的確にレイヴンの肉体を貫き、その姿を周囲の視界から消し去る。
「“快適調整”……あっ、ヤバい。寝巻きにしても物凄い誘惑が……」
そして、メルスはふらりと倒れる。
同時に結界が解除され、自由となったジークはすぐに騎士に指示を出す。
──新たに生まれた英雄を、今この場で死なせるわけにはいかなかった。
たとえそれが、寝間着姿であろうと。
◆ □ ◆ □ ◆
「……知らない天井だ」
定番の台詞を言ってから、スキルを用いてすぐに状況を確認する。
居る場所は治療室、国お抱えの回復魔法の使い手が待機しているヒーリングスポットとでも言おうか。
そんな場所のベッドに寝かされていた……まあ、疲労も相まってスーに堕落させられてしまったのだろう。
なんだか体が軽い気がするし、グッスリ眠れていたな。
「けどまあ、ヤバかったヤバかった……なんで邪神なんかをイベントで出すんだよ」
せめてこう……プレイヤーたちのレベルが百台に行きつつあるとか、物凄く弱体化されているとかなら分かるけれど──配下をそのままの状態で送りだすのは、イジメに該当すると思う。
「グーの解析によれば、アレがこの世界における堕ちた神。けど、なんか違和感があるみたいなんだよな……記述にそう書いてあったし。俺、全然わからなかったよ」
ただのモブに、神の存在を明確に認識する力なんてないんです。
レベリングで【魔具使い】のレベルを上げたからか、魔具適正も微増してより魔武具とのリンクが強まったのだろう。
グーが解析結果を記す魔本のページに、これまでとは別に新しく特別な文章が加えられるようになった。
「結界も常時張り替えないと瘴気にやられてたし、一定以上の魔力が無いと攻撃も通じてなかった。神様ってのは、どいつもこいつもあんなチート能力の持ち主なのかよ」
光属性のダメージが通常通りの威力となるだけで、他の属性はすべてがその力を軽減されてしまうという、いろいろと文句を付けたくなるような黒い霧。
瘴気と解析結界に出たそれをどうにか消し去り──レイヴンの肉体ごと消滅させた。
……すでに割り切っていたのだが、どうしても殺人という行為は好きになれない。
現実で目指した偽善に、当然ながら殺人を織り込んだ計画など用意していなかった。
だが魔法が存在するファンタジー世界で、そんな不殺を貫いていれば決して偽善を完遂することはできない。
すでに魔子鬼を国民としたうえで、そうでない別の魔子鬼を殺している……そうしたことから、俺の思考は殺しを許容していた。
「……正当防衛、なんて言葉じゃ拭いきれない罪悪感だな。まあ、不思議と楽観的な思考に入っているから怖いんだけど」
なぜだろうか、まあいいやと考えている自分がいるのだ。
それこそたしかに、普段通りの俺ではあるが……そんな状況でそうしていられるのは、はたして普通と呼べるのだろうか?
「──まっ、俺だけで考えていてもしょうがないか。グーの考察に注目だな」
結局はそこに至ってしまう。
どれだけ頭を凝らそうと、脳や精神の専門家でもない俺に何が分かろうか。
ある意味自分自身の問題なので一番分かる気もするが、それこそ【傲慢】だろう。
と、いうわけで思考を切り替えた。
だって……考えるの疲れたし。
閑話休題
改めて、ログを調べてみた。
途中までレイヴンの行動はしっかりとログに記載されていたのだが、例の動作をしたあとはいっさいが表示されなくなっていたぞ。
俺に干渉した場合のみ、ログにも載っていたんだが……すべてが『?』や『■』で隠蔽されていた。
ログに出せばスクショをされ、掲示板に情報を挙げられるという可能性を考慮しての偽装工作だろうか?
どちらにせよ、挙げる気は無いのでまったく意味のない作業なんだが……まあ、気にせずにいよう。
「ああ、ちゃんとクリアしていたか」
そんな中、探していたアナウンスに関するログをようやく発見することができた。
それがどんなものかと言えば──
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CLEAR!!
秘匿クエスト
過去の王都防衛戦:王城の乱
報酬:???
説明:邪神教徒を一人討伐したことにより、防衛戦を有利に進められることになった
城に居る者すべてを守り抜いたその貢献は、あらゆることを願うに価する働きである
さぁ、君の望みを告げるとき
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──物凄くツッコミたいが、一つずつ噛み砕いていこう。
防衛戦を有利にできるというのは、相手に施されたバフが減るというモノらしい。
邪神を崇める力が減少したことで、その力の恩恵を受けた者全員が弱くなると……つまりはそういうことだ。
後半は、レイヴンを彼以外の犠牲を無い状態で倒したことに対するテキストだろう。
たしかリョクたちが起こしたイベントも、門の破壊度によって報酬が変わるという仕組みだったし……そういうことだな。
「願う、望みね……」
あらゆることという、ずいぶんと大それた内容が記されているものだ。
もちろん、国が払える物という制限は設けられているとは思うが……俺もさすがに、永遠の命を欲するほど【強欲】ではない。
だが一つだけ、叶えたいことがあった。
ひどく歪んだ我欲が生みだした、倫理に反した澱んだ想い。
それでも吐露すれば、理不尽に抗いたいという感情があったのかもしれない。
「せっかくの称号だ。それらしい行動ってものを、やってやろうじゃないか……って、そういえば称号を見てなかった」
なんという話の切り替わりなんだろう。
もし俺を観ている奴がいれば、間違いなくその変わりっぷりに鮮やかなツッコミを入れてくれるかもしれない。
そんな称号を展開してみれば──
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戦闘系
『隠しボス討伐者』:(大物喰いLv3)
『隠しボス討伐者・ソロ』:(大物喰いLv5)
『神殺し』:神族やその眷属と敵対時、干渉不可を強制解除
『邪神殺し』:邪神やその眷属と敵対時、能力値に絶大な補正
最初系
『最速Sランク冒険者』:冒険者に登録中、職業枠+1(解除した場合は最後に就いた職業を凍結する)
『最速スキル創造者』:SP取得制限解除
『初めての隠しボス討伐者』:隠しボス討伐時、レアドロップ率上昇
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レイヴンは隠しボスに該当し、それを殺した俺にはレアな称号が与えられたようだ。
一番最後のドロップ率上昇、実際にあの呑み込んだ指輪もドロップしているしな……鑑定結果が不明状態なので、解析中である。
「そして、『最速スキル創造者』。そう、それこそが俺のオリジナルスキルだ!」
999P支払った、俺だけの力。
今回使うことはなかったが、いずれ俺の目的を果たすために必ず使うであろう凄まじい能力を秘めたモノだ。
だが、今はまだ秘密にしておこう。
……こういうのって、すぐに出すよりあとで登場する感があるからな。
例のスキルについて引き延ばします
まあ、修正話以降を読んでいただければすぐに分かってしまうんですけど





