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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者とキャンペーン 十一月目

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偽善者と怪獣の巣

途中で視点が変更となります



 怪獣の巣 第一層



 そのダンジョンは、四足歩行の魔物が出現するダンジョンであった。

 犬やウサギのような小さなものから、ライオンや牛などの大きいものまで肉食草食関係なく、徒党を組んで彼女たちに襲いかかる。


 ……だが、今はそんなことを気にしている場合ではない。



「「…………」」



 気まずい沈黙が、俺とクラーレの間を支配しているのだ。


 両者一向に口を開かず、ダンジョンに入っても何も話さない。

 クラーレの場合は魔法を使う時だけは口を開くのだが、俺はそれすら必要ないので、ただずっと黙っている。


 あ、シガンたちに迷惑を掛けるわけにはいかないので、魔法やスキルを使う場合は光を屈折させて作ったUIっぽいヤツを生みだして、そこに使うものを書いている。


 無駄な技術だと呆れられたし、それを見たクラーレがだいぶ落ち込んでいた気もするけど……それでも俺は、貫いてみせる。


 WOOOOOON!


 そんなことを考えていると、今度は犬型の魔物がどこからか現れる。

 視てみると『ハウルドック』という名前みたいだ。


 吠える犬(ハウルドック)、だろうか。

 仲間を呼ぶとかじゃなくて、声が衝撃波を生むとかそういうことか?


 AOOOOON!!


 予想は当たり、犬が吠えると衝撃波が彼女たちに飛んでいく。

 盾役であるディオンが防ごうとするが、不可視の攻撃は捌きにくいものだ。


 叫び声には状態異常を与える効果もあったのか、耐性の低いコパンやプーチなどが硬直状態に陥ってしまう。



「“解硬直(アンチリガー)”」



 即座にクラーレが硬直を回復させる魔法を行使し、彼女たちを再起させる。

 無詠唱での高速発動だったので、犬が前衛が崩壊する前に立て直した。



「…………」



 クラーレはずっと、前を見ている。

 彼女が隙を見せるということは、回復職に就いた時点で好ましくない選択となった。


 今までは、それでも俺が即座に補うことができたので、彼女は俺と話してくれていた。

 しかし……そうする必要がなくなった今、彼女は完璧な回復職としての仕事を果たすようになった。


 本当に、俺は必要無くなったかな?

 自分が寄生虫のように思え、何だか少し寂しくなってきた俺であった。



  ◆   □   ◆   □   ◆


 SIDE:クラーレ



 どうしましょう。

 先日メルちゃんの言葉に落ち込んでから、どうにもメルちゃんと話しづらいです。



「…………」



 今もメルちゃんは落ち込んでいますが、どうやって話したらいいか分かりません!

 こういったとき、きっとシガンなら直ぐに話す言葉も浮かぶのでしょう。


 しかし、コミュニケーション能力が皆無なわたしには……まったく分かりません。



「“持続回復(リジェネレート)”」



 わたしが口を開くのは、魔法を使う時だけです。

 ディオンが受けたダメージを癒すため、持続的な回復を掛けました。


 メルちゃんなら完全な無詠唱で癒すこともできるのですが、スキルを借りていない今のわたしではそれはできません。


 そういえば、プレイヤーの中にもそれができる人がいました。


 第一陣でも最強の一角に挙げられる一人、『無限砲台』であるアルカさんです。

 メルちゃんはたしか、【思考詠唱】というスキルで無詠唱にしているそうですが……アルカさんの場合は、どうなんでしょうか?




 戦闘が終わると、小休憩に入りました。

 メルちゃんは少し離れた場所で、わたしたちの料理を作って装備の手入れをして警備を行っています……仕事が多すぎます。



「クラーレ、まだ話せてないの?」


「うっ……。ど、どう話したらいいか、分からないじゃないですか」



 どうしたらいいか分からない問題、困ったときはシガンに相談してみましょう。


 わたしだけでは、どう答えたらいいか分からない難問です。

 ぜひ、ご教授願いたいと思います。



「無理よ。クラーレ自身で考えなさい」


「そんなっ! シガン!」


「ハァ……。貴女の言いたいことを言えば、あの娘も応えてくれるわよ。だから貴女も正直に……って、何よその顔」


「え……? 顔、ですか?」



 そう言われてペタペタと顔を触って確かめると、目から涙が零れていました。

 自分でもどうして涙が出ているか、全く分かりません。


 たしかに今はメルちゃんと話せていませんけど、自分が泣いてしまうとまでは考えていませんでした。


 ですが、シガンには原因が分かっているみたいです。



「慣れていないのは分かるわ。けど、立ち止まっても何も起きない。たぶん、あの娘は貴女から離れないわ。確証はないけどね」


「……でも、メルちゃんにはこの場所に留まる理由がありません。そもそも、わたしたちといっしょに居る理由なんて、あるんでしょうか?」



 ある言葉を期待して、シガンに訊きます。

 肯定してほしいのか否定してほしいのか、自分でもごちゃごちゃになった、この訊きたくはない質問を。



「無いわよ、分かっていたでしょ?」


「…………はい」



 もともと、ノゾムさんという不思議な方から頂いた水晶からメルちゃんは現れました。

 メルちゃんはそのとき──シガンを救ってくれたあと……帰ろうとしていました。


 あの頃ならば、わたしはそのままお礼を告げて別れることができたのでしょう。



『あ、ますたーたちが依存しない限りはいっしょにいるからね。だけど、そのときは……お別れになるかも』



 お別れ……今はそれが、怖いのです。




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