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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
第〇二章 過去は可変と簒奪し嗤う

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02-29 過去の王都 その13



 数十日前、とある闇の中で彼らは集った。

 妖しく燃える闇色の焔が篝火となる中、数人の男女が(かしず)く。


「これより邪神様のお言葉を伝える──ネイロ王国を浄化せよ、この言葉の意味は理解できているな。彼の地を儀式の場とし、邪神様に献上するのだ!」


『はっ、偉大なる邪神様のために!』


 灯火が消え、残ったのは三人の邪神教徒。

 彼らはそれぞれが一つの目的のため、互いに別々の働きを見せ貢献していく。


「やってやる……俺だってできるんだ」


 その中にレイヴンもまた、存在した。

 彼の使命は、高い地位を持つ者を絶望に叩き落とすこと。

 また、教団の秘術で用意した核の設置と迷宮主の運搬。


 後者の仕事を終えた彼は、都合よく一堂に標的たちが集まる日を知る。

 それに加え、その日こそが自分たちが計画していた侵攻日と一致していた。


(邪神様のご意志なんだろうな、なんとしても果たさなければ……)


 偶然とは思えない、運命的な出来事。

 彼はタイミングを狙い、より確実な時期を狙って王城へ侵入する。

 そして、標的を抹殺する……はずだった。


「クソックソックソがっ! 何なんだよ、この結界! ビクともしねぇじゃねぇか!」


「お集まりの皆さま方、こちらが私の秘術である結界魔法でございます。通常のものと異なる点はその強度。ご覧の通り皆さまを恐慌状態へ追いやったこのお方も、私の結界を破れずにいるのがその証拠」


 式典の出席者にして、新たなSランク冒険者──メルスが構築した結界。

 幾重にも繋ぎ巡らされたその強固な壁は、内部の現象が外部へ漏れることを許さない。


 そしてそれは──彼の力を他の出席者へ知らしめるための、パフォーマンスとして使われていた。


 どれだけもがこうと結界は壊れず、逆にその不壊さを宣伝するために弄ばれる。

 実際、その必死な顔で結界に抗うレイヴンの姿を見て、仕組んだ演技ではないことを理解した貴族たちはメルスを認め始めていた。


「諦めませんね。私が張ったこの結界は、たとえ魔中鬼王デミホブゴブリンキングが暴れても壊れませんよ」


「俺が……俺が、ゴブリン程度とでも言いたいのか!」


「いいえ、違いますよ」


 キッパリと、そして笑みを浮かべて返答を述べた。


「──ゴブリンではなく、デミゴブリンですよ。教養が無い方は知りませんが、この二種族にはれっきとした違いがありますのでご理解を……とは言っても、もうその知識を使うこともありませんか」


「テメェエエエエエエエェッ!!」


「叫べばいいというものでは……なるほど、感情の起伏に合わせて瘴気が増える仕組みであれば、それも仕方ありませんね」


 メルスは黒い靄を瘴気と定義付けた。

 その名に相応しい毒のような効果が結界を侵蝕しようとするが、今なおそれは成されずただ表面を這うことしかできていない。


「禍々しい力、人ならざる者の干渉……いやはや、めでたいこの日になんともトラブルが起きるのやら。レイヴンさんとやら、なぜこの国を狙うのですか?」


「チッ、言うわけねぇだろ」


「こちらの予想としては、貴方がたの神へ捧げる儀式といったところですが……おや、どうやら図星でしたか?」


 物語の定番を告げられ、小さく反応してしまった。

 メルスはそれを見逃さず、魔力を補うことで結界の維持を続けながら話す。


「国王様、すぐに警戒の連絡を」


「うむ……すぐに警鐘を鳴らすのじゃ! この場に居る必要はもうあるまい! メルスに任せ、この国の危機を救え!」


『ハッ、仰せのままに!』


 すでに何もできないレイヴンに見切りをつけ、颯爽と謁見の間から去る貴族たち。

 王の命に逆らう者はなく、いっせいに指示通りに動くために自身の配下と連絡を取る。


 その場に残ったのは王自身と腹心の部下である宰相、それに彼らを守護する騎士たち。

 加えてメルスとレイヴンという、十にも満たない者たちだけだった。


「ご苦労だったな、メルス。もう口調を戻してもいいぞ」


「……あーあ、物凄く疲れたんだが。ジークさんもそっちの人たちも、そろそろ緊張感を解いてもイイと思うぞ」


「いえ、メルス様が居るとはいえ、敵はまだ目の前に居ます」


 騎士の一人はそう言うと、他の貴族が居たため抜けなかった剣を構える。

 他の騎士たちも同様に剣を抜き、いつレイヴンが出てきてもいいように構えだす。


「んーあー……ジークさん、そろそろ倒した方がいいか? あとは縛って牢獄にでも入れて、尋問してもらう予定だったが……」


「邪神教徒は命を用いた爆発を行う魔法を使えるらしくてのぅ。特別なナニカがあるのか分からぬが、それはいついかなる状況でも使えるらしいのじゃ」


「つまり、そういうのは危険なのか。それはそれで解析したいが、ジークさんたちを巻き込むわけにはいかないな……とりあえず、結界はまだ大丈夫だ。何か訊きたいことがあるなら、今の内に訊いておくことを勧めるぞ」


 いつの間にか取りだしていた魔本を開きながら、王にそう告げるメルス。

 何かを呟くと黒い靄が薄れていき、王とレイヴンは顔を合わせることになる。



「──そちはいったい、何のために邪神教団に入ったのかのぅ?」



  ◆   □   ◆   □   ◆


 SIDE:ジーク・ヴルム・サウンド


 この質問は気にしていたものじゃった。

 メルスが無力化したその男は、巷を揺るがす邪神を崇める異教集団。

 その全貌は未だに明かされておらず、上層メンバーの正体すら分かっておらん。


 レイヴンという男が、どのくらいの地位に居るのかは分からない。

 じゃが邪神教団の目的が不鮮明な今、どのような情報であれ価値のあるものとなる。


「へっ、そんなこと訊いて何になるんだよ」


 これまでの会話から口が軽いことを察していたが、予想通り男は儂の問いに反応する。


「邪神を悪く言う気はない。じゃが、そちらが選んだ方法が危うい。なぜに他者を犠牲にしてまで、邪神を崇めるのか……」


 儂は邪神を否定しない。

 古より伝わりし唄には──善神が悪神へ、また逆となるものが存在した。

 邪なる神もまたしかり、そのすべてが()のそこから悪しき者ではないのだ。


「理由、理由ね……いちいち愚者どもに言う必要はないんだがな」


「言いたくないのであれば構わぬ。じゃが、そちは何も残さぬまま死ぬのかのぅ?」


「…………いい度胸だぜ、愚者の癖に」


 レイヴンとやらも、このままではメルスの結界の中から出れないことを分かっているのじゃろう。

 少し思案に耽ると、ニヤリと笑みを浮かべてメルスの方を向く。


「取引だ。俺を解放し」


「──いいぞ」


「ろ……って、ハァ?」


 メルスは結界を儂たちの方へ展開し、代わりにレイヴンの結界を解除した。

 どうやら隠し出口はそのまま開けているようじゃし、何かあっても出ることができる。


「お前の結界は解除した。安全のため、代わりにあっちを結界で囲んだ……殺してから逃げたいなら、先に俺をどうにかしろよ」


「本当にお前、何者だよ。邪神様の神気も通さない結界? 普通の魔法じゃ、そんなものできないだろうがよ!」


「ふーん、もう一回体で確かめるか? いいから質問に答えろよ」


「チッ、愚者の思い通りになんかなってたまるかよ!」


 黒い靄──メルスは瘴気と言っていたか。

 そらが一つの場所に色濃く集まると、剣を象りレイヴンの手に収まりおった。


 そして目にも止まらぬ速さで消えたと思えば、メルスの元で甲高い音が鳴り響く。



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