偽善者と赤色の紀行 その11
……飽きた。
毎度毎度奴隷が会場に現れたら、決まった数字を入力して出力するだけ。
スマホで言えば、一々パスワードを入力しているぐらいの面倒さであろうか。
男だろうと女だろうと同額を払い、圧倒的な金額で落札していく。
オークションをやっている側としても、その大金を見逃すわけにもいかないのだろう。
俺は何も注意されることなく、奴隷をすべて落札している。
「……おお、やっとあと五人か」
既に男の奴隷のオークションは終わり、見た目だけorスキルだけの女性が出品されている。
稀に食い下がって張り合う者もいたが、それでも虹貨の枚数を重ねると大人しくなっていた。
そのときだけは目の色を変えて対応していたのだが、少しずつ飽きを感じていてな。
だが、そんな時間ともおさらばだ。
ここから売られるのは見た目もスキルも優れた美人の皆様方でございます。
最初に現れた女性を見て、俺の眉もデレッと下がっている気がする。
その全員を望遠眼と鑑定眼で調べてあるのだが、面白そうなのと面倒臭そうなのがいるので……どうにかしないとなー。
≪──それでは、まず300万アーカから始めさせていただきます!≫
気が付けば、既に目の前に出ていた少女の入札額を競い始めていた。
いつものように500万を選択して入札をするのだが、ここからが本番のようだ。
≪500万! 550万! 600万! まだまだ増えていっています!!≫
たしか今売られている娘は、幻獣と呼ばれるレアな獣人である。
例えるなら、クエラム系の聖獣などの獣人版だろうか。
種族のレア度と高い戦闘力からか、コレクションとしての価値と護衛としての価値を見出されている。
実際、王家のお偉い様も投資してますし。
……でも、やらせるわけにはいかない。
≪い、1000万! 1000万アーカが出ました! これ以上は、これ以上は……いません! 幻獣人の少女リュナは666さんが1000万で落札です!≫
虹貨を1枚、それだけで少女を買えた。
これから売られる少女たちを考えると、彼女がこの額で落札できたことにも納得できている。
……しかし今さらだけれど、人が人を売買するって違和感があるなー。
日本人だから、それが一番の理由なんだろうが、それでも俺のどこかで思うところがあるのかもしれない。
今では眷属になっているフーラやフーリ、彼女たちもまた、本来は奴隷として悲惨な未来を歩くことになっていた。
未来眼を使ったわけではないので確証は無いんだが、オークションに出品された数人の奴隷は同じことになっていただろう。
──そのことが気に食わないのか?
うーん……ま、いっか。
本当に必要なことならあとで何か判るだろうし、今はやるべきことに集中しようか。
◆ □ ◆ □ ◆
さて、オークションもすでに最後、会場のステージには一人の少女が立っている。
眩く光る紅い髪は、三つ編みにして後頭部の辺りで纏めてある。
相貌は少し強めの印象を受けるが、それでもそこに気品さが相まい、少女であるのにまるで地球にも居た、女王のようなオーラを感じた。
……ロケット型の山脈と桃は、ちょうど手に収まるぐらいのジャストサイズのようだ。
≪──彼女のことを知らない者は恐らく居ないでしょう。
亡国セッスランスの姫にして、一騎当千の将軍でもあった──『姫将軍』とはこのお方のこと。長年行方を晦ませていましたが、遂に発見されました。……なお、捕縛はイダイナル神聖国の皆様によって行われました≫
ふむふむ。
亡国とのことだが、先程の宝剣があった国と同じ国だな。
『姫将軍』とはまあなんと安直なんだとも言いたいが、実際に職業が『大将軍』となっているのだからかなり優れているのだろう。
……ちなみにだが、最後の文はだいぶ棒読みだった。言わされてるみたいだ。
≪幾柱の神から加護を授かり、個としても優れ軍を率いても問題ありません。当然体の方も良好ですので、どのように使われても平気です。……ご自身の欲望、一国の姫にぶつけてみたくありませんか?≫
はい、してみたいで……って危なかった。
つい注視し過ぎて呑まれていた。
言われている本人は……無表情のまま、鋭い眼光を放っていますね。
スキルには威圧系の物もあるのだが、首に巻かれた無骨な首輪によってスキルの発動が禁止されているので、このような抵抗しかできないのだろう。
……もちろん、男たちにとってはそれすらもエッセンスとなるのだが。
この世界でもしっかりと神の存在は居るようで、加護の存在も確認されている。
おそらくAFO世界と大半が同じ名前の神なのではないか? いずれ調べてみようか。
≪──それでは、入札を始めましょう。泣いても笑ってもこれが最後。皆様、ここで全てのアーカを使ってしまいましょう。
『姫将軍』が手に入る機会は一度きり、後悔の無い選択をしてくださいね。
開始額は……1億アーカから!≫
虹貨十枚分から始まったようだな。
俺もだいぶ消費しているから、中々に高額だと思える値段である。
「さて、狙っている人は多いだろうし、彼女のためにここに来た人もいるみたいだ。大量の金も持ってるみたいだし……落札できるかが謎だな」
全員の硬貨を集めれば、俺は負ける。
どれだけの人が協力して、俺が『姫将軍』の主にならないように動くか……ここが分水嶺だな。
2億と入力しながら、俺はそう思った。





