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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と決意交わる水着イベント 十月目

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偽善者と水着イベント後半戦 その16



「……教える気は、ないようだな」


「あ゛あ゛? だから、俺はただの商人さ。他に何があるってんだ」


「もういい。お前がいつまでも隠すってんなら、お前に貰ったこの剣で……すべて暴いてやるよ!」


 少年は、自身の復讐にリッドを巻き込んだ商人へ若干の怒りを感じている。


 今まで抑圧されていた復讐心を解放し、感情に制御が緩んでいるため、商人に感じた不快感が増大し、即座の攻撃を決意したのだ。


「すべてって言われてもなぁ。お前さん、男のプロフィールなんて知ろうとして……まさかそっちの気があるのか?」


「──死ね」


 聖魔剣を引き抜き、少年は商人へとそれを振り下ろす。


 靄に肉体を変換し、商人の死角へと異動しての一撃だったのだが……。


「死ね、と言われて死ぬ阿呆にはなりたくないんでねぇ。俺はしぶとく図太く永遠に生き続けるんでな。お前の私情に付き合う義理はねぇからな」


 死角から放たれた斬撃を、商人はあっさりと避ける。


 ステップを踏むように軽快に躱し、少年から距離を取ってそう言う。


「だいたい、魔剣を聖魔剣にするってことはな、その気になれば誰でもできるんだ。本人が魔剣の魅力に抗い、ひたすら正の心を注げりゃあな。お前はそれを、最後の最後にやれたからこそ、その剣は聖魔剣となった。実に面白いなお前は。祈念者は何もかもが速いって聞くが、まさか魔剣の覚醒速度まで早めちまうとはな」


「……プレイヤーかなんて関係ない。俺はコイツだからこそ、ここまで来れた」


「へっ、好いじゃねぇか。熱い話だねぇ。俺も力があるなら、そうして自分自身でやってみたかったさ」


 へらへらと笑みを浮かべてそう語る商人。

 だが、瞳は真剣なものであった。


「さっきの攻撃を、力のない奴は避けられないと思うぞ」


「スキルが有れば、どうにかなることだってあるさ。それにしがない商人にはな、力がないと世の中を渡っていけないのさ。道中の魔物や盗賊、町中でも強盗を追い払うだけの力が無いと、売り物がパーなんだ」


 商人は手をヒラヒラと振りながらそう言って──どこからか剣を取り出す。


「コイツもまた、お前のそれと同じ聖魔剣だな。……紛い物ではあるが、性能はほぼ一緒だから問題ない。名は『クラウ・ソラス』ってんだ。どうだ、カッコイイだろ」


「それが、お前の武器なのか」


「ま、そうだな。結構便利なヤツでさ、こういう時に使うんだよ」


 剣を構え、商人は少年に説明する。


 商人が紛い物と言ったのには、これがかつて読み取った設計図を元として、今この瞬間生成された物であることが関係するが……それを少年が察することはない。


 ただ分かるのは──目の前で商人が握り占める剣が、自身の持つ聖魔剣と同等の力を周囲に放っていることであった。


「さぁ、お前は俺を倒して情報を吐かせたいし、俺は面倒事は御免だからさっさとお前から逃げたい。互いにやることは決まってんだから……早く始めようじゃねぇか」


「ああ、分かってるさ!」


 聖魔剣の力によって、再び体を霞に変えて商人に向かう。

 一方の商人も、剣に魔力を流し込んで剣身に輝きを放たせる。


 そして、剣と剣がぶつかり、周囲に衝撃波が飛んでいく。




「お前、絶対ただの商人じゃないだろ!」


「いやいや、大豪商なら優れた武人で雇ってるだろ。俺にはそれができないからこそ、こうして武器を磨いていたんだろうが。商人が相手に勝つ必要は無い。相手に負けた、もうコイツとは戦いたくないと思わせればそれで充分だしな」


 商人の剣は光線を放ち分身を作り、大地を割って砂を生みだした。


 白と黒の靄を生成し、そこから力を操る少年の聖魔剣の相性は悪く、光線で穿たれた靄は消滅してしまい、少年は防戦一方で戦い続ける。


「“撒き散らせ”!」


「おっと、なら──“煌け”!」


 持ち主以外の体内魔素を乱す煙霧を放つ少年だが、商人は剣から発火する光線を放出してそれを一掃していく。


 靄に含まれる魔素が光に触れると、それは連鎖するように燃えていき……辺りは眩しい業火に包まれていった。


「いつまでも足掻きやがって、もう俺に勝てないのは分かってんだろ? 祈念者で言うところの……あれだ、『負けイベント』ってヤツだ。さっさと死んで、何処かで俺以外の奴と遊んでこいよ」


「……そう、簡単に諦められるかよ。ここでお前を逃したら、俺は絶対に後悔する。だから、死んでも逃さねぇ!」


 商人は少年相手に、余裕を持った戦いを行い続ける。


 誰も居ない場所に剣を振るい、上や下に向けて剣を薙ぐなど、傍から観れば奇知外と思われる行動を何度も行っていた。


 それだけ余裕を持たれてしまう相手だろうと、少年は諦めずにそう告げる。

 ──今の少年は、それだけに燃えていたからである。


「熱いねぇ、暑いし篤いと感じるよ。ただの商人相手に、どうしてこうも熱くなってるんだか、俺には皆目見当が付かねぇや」


「……なら、黙って情報を吐け」


「…………はいはい、分かった分かった。俺はもう戦えねぇ。ここまで頑張ったお前に免じて、一つぐらいなら答えてやるよ。質問する時間はゆっくりとやるけどよぉ、早く考えてくれ」


 商人はドカッと地面に腰を下ろし、武器を光の粒子にして消し去る。


 無防備になった商人の姿を見た少年は、戦意を少しだけ弱め、本当に質問したいことを考えていく。


「なら、これを訊く。──お前は、自分の御眼鏡……いや、色眼鏡に適う奴に商品を渡していくのか? 相手が誰であろうと」


「お? そんな質問で良いのかよ」


「ああ、それで構わな──ッ!?」


「そうか、なら答えてやろう」


 少年は、突然体を斬られるような痛みを感じ、そのまま地に伏せることになる。


 視界は少しずつ黒色に染まっていき、HPもだんだんと減少していく。


 商人はそんな少年の前に歩み寄り、二カッと笑って──


「当然だろう。俺は俺のやりたいように他者に力を譲渡する。俺が持っていてもどうせ宝の持ち腐れさ。ならせめて、役に立たせる奴に渡すのが一番だろう。相手が善人だろうと悪人だろうと、それを一番使いこなしてくれるのが、武器の本懐ってヤツなんじゃないのか? 大体、お前みたいな復讐者にだって武器を渡してるんだから、俺ってばある意味で凄い商人だよな。可能性を見抜く才能! いや、ほぼ無いと思うけど楽しみが増えるってもんだよな!」


「……お前は、それで自分の身が破滅しようとも、構わないと言うのか」


 どうにかぼんやりとだが見える商人へ、少年はそう問う。


 商人はあっさりと、そして楽しそうに笑顔で答えた。


「ああ、もちろんだ。いつか来るであろうその日を、ぜひ待たせてもらうぜ! ……だけどよぉ、今のお前じゃあちと役不足だ。そろそろ死んでもらうぜ」


「俺は、お前を──」


「あばよ、その言葉の続きは次に会った時にでも聞かせてくれや」


 商人がそう言って指を鳴らすと、少年の身体に何十もの斬撃痕が生まれ──少年の身体は、光となって消えて逝った。


「…………さて、次は残りの奴らを一気にやるかな? もう面倒になってきたや」


 商人は一度も傷を負わなかった体を摩りつつ、そう呟いていく。


 その後淡い光を纏った商人の姿は、先ほどまでとはまったく異なる風貌であった。



忘れた方への武器紹介

『クラウ・ソラス』:とある英雄が手に入れた魔剣、だがある出来事の影響で聖魔剣に変質した剣。

 今回使われたのは、それを解析して生み出した模造品。解析した際の性能以上の力は使えないが、それ以下なら何でもできる。


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