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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と決意交わる水着イベント 十月目

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偽善者なしの水着イベント後半戦 その12



 少年が復讐を抱いた理由。

 それは、耐えることのできない怒りを身に感じたからである。


 少年は、日常的にイジめられていた。

 理力、知力、才力、資力を以って、彼の逃げ道は塞がれいていた。


 殴る蹴る、荷物を奪うは日常茶飯事。

 誰もそれを救うことはできず、救える者もいなかった。


 少年はただ、ひたすら耐え続けた。

 体の至る所から水を流そうとも、体中に痣ができようと、骨を折られようとも、実験と称した虐待に遭おうとも。


 もともと少年は、大人しい性格だった。

 争いごとを好まず、人からの頼みごとに文句を言わずに受け入れる。


 ……いや、正しくは、諦めの早い性格だったのかもしれない。

 そんな苛めに適した性格であったが故に、少年はある日を境に“イジメ”に遭う。


 幸か不幸か、少年は一人暮らしであった。

 肉親や近隣の者がイジメに気づくことも無く、ただただ日々が過ぎていった。



 少年がイジメに耐えられた理由の一つとして──AFOが挙げられる。


 第二陣からゲームを始め、さまざまな出来事に触れてきた。

 どれもこれもが現実では経験のできないような夢のようなことであり、いつしか自分がその出来事の一つを紡ぐことに憧れていた。


 中でも、少年は動画を観ることを、AFO内で楽しんでいた。


 その映像の中では、たった一人の存在が全てを支配していた。

 有名なギルドマスターだろうと、モテずに苦しむ初心者だろうと……等しく扱われ、等しく地を舐める。


 映像の名は『アンノウンシリーズ』。

 AFO内で撮影された、正体不明の存在だけを集めた映像集。


 中でも『模倣者』、『試練の魔王』、『偽りの厄災』をよく見ていた。


 強大な力の前に、善も悪も関係ない。

 ただただ純粋であるが故に、誰もがそれに抗うこともできず、苦戦を見せていた。


(力が、俺に力があれば……何かが変わっていたのかも……いや、無理な話か)


 ある出来事が起きる前の少年は、そうして復讐を抱くことも無かった。


 しかしある日、少年にとって二度目とも言えるような“イジメ”に遭う──



 その日を境に、少年の心は少しずつ摩耗していった。

 自身の心の拠り所を奪われ、今まで築いてきた物すべてを失った。


 少年には何も残っていなかった。

 しかし、ただ一つだけ残った……いや、こびり付いたものがあった。


(……アレが、アレさえあれば……。あんな奴らにイジメられるのは御免なんだ! ──力を、力を手に入れてやる!)


 その後少年は、AFO内で力を付けようと努力した。

 AFOには、いくつかの都市伝説がある。


 曰く、AFOには本物の神が居る。

 曰く、AFOは実在する世界である。

 曰く、AFOは異世界に繋がる扉である。

 曰く、AFOではどんな願いも叶う。


 少年は願った、復讐するための力を。

 何でも叶うなど、幻想でしか無い。


 しかし、それでも諦めずに四苦八苦していく少年。


 ……だが、ここで運命の糸は絡まった。

 とある存在が、少年と接触した。


 少年はその正体に気づくことなく、ただ自身の望む願いを語った。



 そして、結果的に願いは叶ったのだ。

 少年が手に入れたのは、自身をイジメた者たちへ復讐を果たすための力。


 嘘を暴き、逃避を防ぎ、苦痛を味わわせる黒い復讐心の塊。


 その力の名を──『ルヴァン』と言った。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「ハァ……ハァ……やった。やった……やったんだ。つ、ついに、復讐を果たした!」


 足元に散らばる物を見ながら、荒く息を吐く少年。


 少年の足元──そこには小さく口を動かすだけで、他には何もしない骸が四つ、存在していた。


 願った復讐は果たされ、少年は自身が経験した苦痛のすべて……それをグラムたちにぶつけていった。


 ナイフのような物で皮膚を剥ぎ、そこに海水を浴びせる。

 目の前に鋭い槍を置き、ゆっくりと頭を槍へと下ろす。

 体毛を全て引き抜き、火を付け、焦げたそれを口の中に押し込む。


 そうしたことを何度も何度も行い……気付けば、グラムたちはひたすら謝罪の言葉を小声で呟いていた。


 『ルヴァン』が嘘として判定しなかったことに気づき、それが本心だと知った。

 少年はその姿を見てニコリと笑い──全員の心臓に剣を突き立てた。


 少年は願った。

 この世界だけではなく、現実でも彼らに復讐を果たすことを。


「“契約”。俺をどちらの世界でもイジメない限り、お前たちに害をなすことは無い。ただし、イジメたと判断した時、『ルヴァン』によって体に激痛を走らせる──誓うか?」


…………(ちかいます)


 誓います、と全員が口に出す。

 すると、心臓を握られるような悪寒が体を包み込んでいく。

 まるで大切なナニカが失われるような虚無感、それを倒れ込んだ屍たちへ──魔剣は刻み込ませる。


 これがどういったものなのか、それをかれらはまだ知る由がない。


「……終わった。お前たちはもう、俺に何もすることはできない。こっちだろうと現実だろうと、俺の意志一つで命が失われる。そのことを絶対に忘れる「……みん、な。いったい、どうして……」な……ハ?」


 少年は最高の気分と共に、復讐を終えるはずだった。


 自分の前でひれ伏す、かつて憎悪を抱いた者たちを哂い続ける。

 そうした状況に酔い、至高の時間を過ごす予定だったのだ。


 しかし、この場に新たな存在が増える。


「ねぇ、ヒューリ君……教えて。どうしてグラム君たちは、こんな状態になってるの?」


「り、リッド……」


 彼女の名はリッド。

 少年とグラムたちのパーティーメンバー、その最後の一人であった。 



復讐の最中に現れた一人の少女。

少年の復讐劇は、新たな展開を迎える! ……的な。

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