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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と決意交わる水着イベント 十月目

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偽善者と水着イベント後半戦 その08



 さて、『庵楽』に辿り着いたんだが……。



「す、凄い数の客だな」



 少し大きめに建てた海の家から人が溢れ出し、燦々と照りつける日差しの中、長蛇の列に並ぶ者が続出していた。


 どれだけ眷属たちが必死に捌こうとも、プレイヤーの数は膨大だし、恐らく普通の手段ではこれらすべてを退かすこともできない。



「ま、とりあえず休業にしますか。少し空けてもらえれば、話はすぐに済むし……」



 そういえば営業時間について適当にしか説明してなかったなーと思いつつも、念話を繋いで一旦客を店の外に出すように指示する。


 すると、暫くして客がぞろぞろと店の中から出てきて、長蛇の列の先頭の部分に合流していく。


 フーラとフーリがペコリと頭を下げて詫びているので、誰からも文句は出ないし、その意見も封殺される。

 なのでどんな客も大人しく、習性的に並ぶのである。


 うん、こうして真面目に並んじゃうところが、日本人の性なんだろうな。


 そう思いながらも、身を隠して『庵楽』の中へと入店する。



「メルス様!」

「……いらっしゃいませ」


「ああ。二人共、よく働いてくれているな。よしよし……」


「め、メルス様のためになれたなら、良かったです」

「……嬉しい」



 出迎えてくれたフーラとフーリに、感謝の意を籠めて頭を撫でる。


 ……ここで子供じゃないと言って、手を弾かれていたら泣いたな(もちろん俺が)。


 うん、夢現空間で着ていたメイド服を改造したんだが、やっぱり美少女は何を着ても最高に似合っている。


 スカートをセミショートにしたり、肩を露出させてみたりして、男心をくすぐれるようにしてみました。


 それをあどけない姉妹が着て、客引きを行う……うん、ちょっと危ないかな?



 レイドボスを守ることとは別件で、この海の家を使って調べたいことがあった。

 その調査を二人に頼んでいたのだが、制服着用も込みで受け入れられてしまったのだ。



「えっと、客の中で渡しておいた魔道具に反応があったのは、大体どれくらいだ?」


「はい。かなりの数の人が来ましたけど、赤色の人はいませんでした」

「……でも、他の色なら光った」


「へー、やっぱりか。完全な状態ならともかく、半端な状態ならまだ普通に並んだりできるだけの理性はあるか──こっちの人(じゆうみん)は来ていたか?」


「はい、プレイヤー以外にも来ていまし」

「……大人気、だから気になった?」


「そりゃあ、ありがたいことで」



 そう話しながら、先ほどの言葉を思う。


 俺が渡したのは、侵蝕度別に人造魔石が光る魔道具だ。

 もっとも侵蝕率が高い場合は赤、そこから七色の順で侵蝕率別で光る色が変わるのだ。


 ちなみにだが、今までに会った奴らで色を分けてみると──『ユニーク』のメンバーが紫か青、シャインが水色、シガンが黄色だ。


 赤色は本当にヤバく、【固有】スキルの性質が持ち主の行動全てを決めてしまうので、店に入って物を買うなんて高度なことはできない。


 だからこそ、試してみたんだが……ま、来ない方が安全か。


 ちなみに俺が使うと、マーブル模様ができるので判定できない。

 侵蝕、やっぱりされてるんだろうな。



「フーラ、フーリ。ちょいと店を大きくするけど、対応できそうか? 店員も増やすし、敵意に反応する結界も用意しておくが……」


「それだけしていただければ充分ですよ!」

「……変な人ばっかりで疲れてた」


「ふ、フーリ!」



 (フーラ)(フーリ)を叱ろうとしているので、そっと頭に手を乗せて沈静化させる。

 そして、向き合って謝っておく。



「おっと、ゴメンな。俺もまさかあそこまで人気になるとは思ってなかったんだよ」


「……お詫び?」


「ああ、イベントが終わったらもう一回、眷属みんなでどこかの海にでも行ってみるか。邪魔者は誰も来ないし、スキルを使って遊ぶのもOKだ」


「……楽しみ」



 フーラとフーリとの会話はここら辺で切り上げて、店の奥の方へと進んでいく。



「あら、魔王様。ちょうどヤンが発狂しかけてたところよ」


「メルス! メルスメルスメルスm──」



 リッカに言われて声が聞こえる先を見てみると、狂ったように俺の名前をコールして、料理を作り続けるヤンが確認できる。


 負担をかけすぎたのだろうか。


「こっちも従業員を増加した方が良いか?」


「まあ、やれないことは無いんだけど……見ての通りね」


「メルスニウムが足りないんだよ! どいつもこいつもこっちを観察するような目を向けて来てさ、本当止めてほしいよね!」


 ……お、俺としては、先に包丁を振り回すのを止めてほしいかな?


 メルスニウムに関しては置いとくとして、たしかにそう考えると俺も嫌だ。


 女なら別に良いが、男が俺の家族を舐めるように見ているだと?

 ……うん、ヌッコロ案件だな。


 おっといけない、対応策を考えねば。



「……ガラス張りは止めておくか? 前に説明したけど、客が料理を安全かどうか見れるようにしておいて、美少女が作ってるって付加価値も付けようとしてたんだけど」


「せめて、時間を限定してほしいわ。ゲリラでしか観れない方が盛り上がるでしょ?」


「まあ、そうだな」


「ヤンの発狂率も下がるし、何よりこっちで調整ができるようになる。悪くない話よ」



 無いとは思うが、煉獄の炎を客に振り回すのはさすがにな……。

 アイデアは、受け入れておいた。



「リッカの方でやる時間を決めるか? それとも、一定時刻ごとに開けるか?」


「前者でお願い。そっちの方が楽だわ」


「あいよ、すぐに仕掛けを作るから待っていてくれ」



 そうしてリッカとヤンとの会話をしつつ、ガラスに幾つかの仕掛けを施してから更に奥へと進んでいった。



「レン、アン。売り上げの程は?」


主様(マイマスター)の場合は元が低コストでしたので、当然黒字。おまけに家が建てられますよ」


「いや、家も低コストで造れるから」


「メルス様。それを言うと、物で例えることができなくなります。金銭は物を買うために使う物ですので、すべての物を創れるメルス様には本来不必要ではないですか」



 ……(生産神の加護)って怖いな。


 たしかに、なんだか金銭感覚がズレてきた気もする。


 適当にある金を出せば大抵の物は買えるだろうし、そもそも金を使って無いし。

 数字に(政治関係で)目を通すだけで、俺自身は全然金に触れていない。



「一度リーンとサウンド王国で市場の違いでも確かめてくるとしよう。……何か伝えなければならない、取り立てて言わなければいけないこととかはあるか?」


「でしたら、営業時間の方を定めておいてください」


「そこは現場の判断で頼む。その間に店の拡張はやっておくからさ」


「分かりました。ですが、あまり広くしすぎるのも問題ですからね」



 この後、店の広さを延ばして従業員を用意したら、また別の場所に移動した。


 えっと、次はどこに行こうか?




忘れた方へのキャラ&用語(?)紹介 折角なので持っている【固有】も

フーラ:英雄姉妹(姉) 奴隷から英雄へと、成り上がっていく運命だったが…… 【英雄】の持ち主

フーリ:英雄姉妹(妹) 姉の英雄道のため、礎として死に逝く運命だったが…… 【英雄】の持ち主

『ユニーク』:AFO開始直後に【固有】スキルを手に入れたプレイヤーの大半が入ってできたギルド 主人公も所属している

シャイン:扉を開いた勇者(TS) ハーレムギルドの主 【闇勇者】の持ち主

シガン:【固有】にかなり侵蝕されていた少女 女性限定ギルドの主 【未来先撃】の持ち主

リッカ:主人公を魔王様と呼ぶ幻魔族の少女 メイドである 【精神魔法】の持ち主

ヤン:明るいヤンデレ 足が生えてる蛇娘 【嫉妬】の持ち主

レン:ダンジョンコアの擬人化 第四世界の管理人 【ダンジョンマスター】の持ち主

アン:種族[不明]の意思が擬人化 機械っ娘 【知識】の持ち主


まあ、一部のスキルは成長しているんですが……敢えて過去のデータで。


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