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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と再始動 九月目

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偽善者とエキシビションマッチ 中篇



 開始直後、巨大な柱が会場に出現する。


 それは膨大なエネルギーが可視化されたものであり、準備運動の一興であった。


 放たれたエネルギーの始点は二つ、闘技場の両端からのものである。


「(“幻覚結界”)ふーん、やるじゃん。それってスキル? それとも魔法?」


「…………」


「いやいや、過去の俺でももう少し愛想良くやってたから。【思考詠唱】ばっかりだったから無言っぽかったけど、気づいてないだけでさ」


「…………」


「……グスンッ」


 観客には、再び幻覚でそれなりにエキサイトした映像が送られている。


 実際の闘いは盛り上がることもなく、静かに隙を伺うものだ。


 エネルギーは双方が解析を行っていき、この先に行う行動の先読み、対策の用意、そしてさらにそれを上回る行動の支度を一瞬で済ませる。


「それじゃあ、まずは剣からだ」


「ソードスタイル」


「……あ、それは言うんだ」


『偽善者』と『模倣者』は、その場で同時に剣を振るい、その斬撃で自身のエネルギーを切り裂いていく。


 斬撃同士がぶつかり合い、周囲に内包された力が飛び散る。


 その瞬間二人は舞台の中央に進み出て、互いの剣を噛み合わせた。


「……解析」


「剣聖の剣術は、そう簡単に読み取れやしないから、なっ(──“双斬撃ツインスラッシュ”)」


「迎撃(──“幻影線(ミラージュライン)”)」


『偽善者』の振るう双剣の軌跡は、『模倣者』の一本の剣が描いた二本の軌跡によって防がれる。


「それなら、もういっちょう(──“開牙(カイガ)”“隼鹿(シュンカ)”)」


「迎撃(──“剣々波(ケンケンパ)”)」


「わぁお! 凄ッ(──“十字斬(クロススラッシュ)”)」


『偽善者』は一度に四度の斬撃を放つが、新たに放たれた八つの斬撃に自身の攻撃を消される。


 驚きながらも冷静に武技を発動し、自身の方へ進んでくる斬撃を打ち消した。


「……飽きた、次は槍で行くぞ(──“五月雨突キ(サミダレヅキ)”)」


「ランスモード(──“多連突き(マルチトラスト)”)」


 互いに武器を槍に持ち替え、再びぶつけ合う。見えないはずの透明な槍を的確に捌き、喉元へ喰らい付こうとする『模倣者』。


 だが、『偽善者』はそれへあっさりと対応し──再び武器を変えて攻撃を行う。




 斧、槌、鎌、弓、銃……存在するありとあらゆる武具を使い続け、人々が知りうる限りの物が出尽くした。

 すると、二人は互いに手を翳し、遠距離からの攻撃を行っていく。


「武具も飽き飽きだ、今度は魔法で勝負するとしよう(──“火槍(ファイアランス)”×20)」


「マジシャンモード(──“水槍ウォーターランス”×20)」


 炎と水の槍が出現し、ぶつかり合って舞台に蒸気を産出していった。


 その中で何度も魔法が相殺される。


 風、土、木、氷、雷、光、闇……生み出されたものは全て、舞台の中央で消えていく。


「ほらほら、どんどん盛っていくぞ(──“器想纏概(キソウテンガイ)”)」


「……撃滅」


 武具での闘いが面倒に感じていたのか、魔法での闘いを一気に蹴りをつけようとする『偽善者』。


 周囲に絢爛な宝珠を展開し、同時に何重にも重ねられた魔法を撃ちだしていく。


 自然災害を模した魔法や、人間が生み出した技術を形とした魔法。

 一つ一つが強力なそれらが、いっせいに襲いかかる。


 だが、『模倣者』も同様に強力な技を放とうとしていた。


「魔導解放──“鏡写しの銀境世界”」


「……うわっ、何それ!」


『模倣者』のスキル:魔導之才:、それによって『模倣者』が発動した一つの魔導。


 その力により、辺り一面が鏡のような物で覆われ、隔離されていく。

 会場から観ることもできない、磨き上げられた銀色の鏡の世界。


 ──魔導、それは『偽善者』の知り得ない未知の力。

 今、それは『偽善者』に牙を剥けられた。



 魔導によって生みだされた世界に、『偽善者』が放った魔法すべてがに映り込み──本物へと相殺されていく。


 全く同じ速度、全く同じ質量、……全く同じ威力を以って、それはなされた。


『偽善者』はそれでも一瞬で驚きを消し、闘いへと戻る。


「俺が持って無いオリジナルなんて、お前もズルいな~。羨ましいよ(──“劉の血潮ドラゴンブラッド・ロード”)」


「魔導解放──“黄金輝く日輪の生誕”」


「熱っ、焼ける!(──“魔纏化・影(カゲマトイ)”」


 鏡の世界に、小さな火の玉が生まれる。


 黄金色の火球は、急速に巨大化していき太陽のように世界を照りつけた。

 光が場から影を追い出し、燦々と光だけが存在する空間を生みだす。


 そして鏡にその熱線が反射し、『偽善者』の身を焼き焦がす──ことは無かった。

『偽善者』は無くなったはずの影を生みだして、体に纏ってそれを防いだのだった。


 しかしそれでも、『模倣者』の魔導が尽きるわけでもない。


「魔導解放──“乞い焦がす太陽神の鉄槌”」


「くっ、面倒だな(──“海嘯(タイダルボア)”)。あとおまけにもう一つ(──(海魔法)+(氷魔法)=“死氷海柱(ブリニクル)”)」


 太陽の光がより一層高まり、『偽善者』の包む影ごと燃やし切ろうとするその瞬間──大量の海水が空間内に溢れだす。


 鏡の効果もあってか、一度に大海と言っていい程の量がこの場に現れ、耐えきることのできなかった鏡は割れてしまう。


 結界の中に海水は流れていき、二人の周りは水で満たされていた。


 水中で輝く太陽は、それを即座に消し去ろうとするのだが、魔力で生み出された海水は蒸発されることに抗い、『偽善者』の中から延々と生まれ続ける。


 そして、太陽と海が拮抗している間に、海から雷のような物が生み出された。

 それは海中を渦巻き、周囲を強力な冷気で凍らせていく。


 当然海に接触してしまった太陽もまた、その死の氷柱とも呼べるものに触れてしまう。


 太陽。

 近付くもの全てを消し炭に変えるその権化は、膨大な量の水と氷柱に負け──この場から消滅していった。




 どちらも環境の変化に耐性のある者たちなので、水中だろうとそのまま会話が行える。


「……ハァ、ハァ。面倒、面倒、面倒だ! 一々厄介ごとばっかり試しやがって!」


「──複数の魔導への対処、記録。残存魔力量……九割。真の『模倣者』、早く本気を出すことを要求する。武器を入れ替えた時点で本気の証明は終わっていた」


「……この状態の俺の本気だよ、これが。それ以上は枷を外さないと無理だ」


「ならば、それを要求する。本気の闘いがワタシに求められた使命なのだから」


「そういうことはせめて、俺に膝でも突かせてから言ってくれよ」


「……理解。無理矢理にでも使わせる」


「失敗すると思うけどなー。俺のコピーじゃあ、誰にも勝てないんだからさ」


 そう言った『偽善者』は、少し嬉しそうに口角を上げていた。





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― 新着の感想 ―
「剣聖の剣術は、そう簡単に読み取れやしないから、なっ(──“双斬撃”《ツインスラッシュ》)」 ルビが振れてないです。 ついに魔導来た!黄金輝く日輪の生誕だけ語呂がいいから覚えてたな…
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