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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と再始動 九月目

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偽善者と迷いの森 その02

注意(?):主人公がキレてややウザい発言をします。



「くっ、殺せ!」


「うわー」

「いくらなんでもベタすぎるだろ……」



 鎖の先には、恥辱に顔を真っ赤にした森人の姿があった。


 俺たちの方を酷く恨めし気にキツく睨みつけ、強烈な殺気を放っている。


 そう、このシーンはまさにくっ殺エルフ的なヤツなのだろう。


 主人公に出会ったエルフが最初はそんなことを言っておいて、最終的には永遠の誓いをしたり、その剛直な一本の剣……いや、棒によってあっさりと屈服したりな。


 だが、そんな展開は今回に限って……というかこの先も、この森人とは起こらないだろうよ。



「メルス、ここでくっ殺エルフにここまで期待ができないことってあるんだな」


「ああ、俺もビックリだよ」


「──おい、貴様ら! 大人しくこの鎖の拘束を外すんだ!」


「いやー、萎えるねー。俺もさ、モブとはいえある程度この展開を求めていたはずなんだけどな。でも、ここが俺と主人公との圧倒的な違いなんだろうか。運が無いのか?」


「……いや、今までの所業からして、お前にそのセリフを言う資格は無いからな」



 カナタよ、俺は拒んでいるんだぞ。

 風呂場での遭遇イベントなら、何度か経験しているから資格はあると思う。



「貴様ら! こそこそと話す暇があるなら、早くこの俺に謝罪して鎖を外すんだ!」


「いやー、まさか()に言われるとはなー」



 うん、この一言に尽きるな。

 捕まえた森人は男、くっ殺を言ったのも当然その男の森人……萎えるねー。


 一度も使ったことのない息子(マイサン)もそうなのだが、いつものテンションゲージまでガクッと下がっている気がするよ。



「お前さん、いったいどうして何の確認もせずに旅人を殺そうとした? お前さんらの種族って、そんなに野蛮な種族だったのか?」


「――ッ! そんなはずがあるか! 我らは誇り高きルナの血を継ぐ一族であるぞ!」


「ルナ? ……ああ、(ルナ)か。例え昔のお前たちのご先祖様が優れていようと、それがどうして今のお前達の評価に関わるんだ? 俺がこれから知るのは今のお前たちであって、大昔の偉人様じゃないんだぞ」


「だ、黙れ! さっさと解け!」



 思考停止か。

 少なくともこいつを基準に考えたら、この種族はそのうち滅ぶって思えちゃうな。



「カナえもーん、こんな時はどうすれば良いのー?」


「……メル太君、こんなどうでも良い状況でだけ頼らないでくれよ」



 カナえもんは冷たいな。

 というか、ほぼ全ての◯◯えもんが力を貸してくれないじゃんか。


 そんな風に心でツッコミを入れて和もうとしてたのだが――。



「おい、そこの(けが)れ! さっさとこれを外させろ……って、な、なんだ貴様」


「──黙れ。お前は今なんて言った」


「き、貴様が俺の拘束を解くつもりが無いのだから、そ、そこにいる穢れを代わりに動かそうとしただ――ッ!!」



 突然体を硬直させる森人。

 おいおい、まだMPは全然解放してないんだぞ。


 それに……俺はもう少しやりたい気分なんだがな。

 わだかまる想いを口からぶちまける。



「いくらでも俺を貶すことを言うことは構わないぞ。眷属はそれを否定するが、俺が最底辺のカーストを徘徊するただのモブであることは自明のことだからな。だけどさ、カナタはそうじゃないだろ? お前が言っているその言葉が、たぶん種族的な視点から生まれた侮蔑の言葉だというのは分かっている。だけどさ、どうしてそれを俺が聞き逃さなければいけないんだろうな。それがお前だけが考えているのか、はたまた種族全部が思っているかは分からないが……次にそう言ったら俺は自分を抑えられない気がする。分かってくれるよ……な?」



 主人公って凄いよな。

 すべての人々に、平等に友愛を注ぐことができるんだから。


 俺には無理だし──する気も無いや。

 眷属(かぞく)を貶された、それだけで暴走寸前まで【憤怒】が発動してしまう。


 効果で俺のステータスの所々が上昇し、怒りと共に放たれる魔力が増幅していく。


 ……穢れ、穢れねー。

 ダークエルフが堕落した証、的な設定でもあるのかね?

 運営も今時、そんな面倒なもの引っ張って来るなよ。


 カナタのどこに穢れがあるって言うんだ。

 陰陽師でも連れてくれば祓えるのかよ?

 ……キマシの塔的には、ある意味通常倫理から離れた存在とも言えるが。



「もう、絶対に言うなよ……ってのはどうせ無理か。そんな強制はむしろお前が裏で呟くための免罪符になるしな。鎖は外すし、お前が俺たちに全面的に協力してくるなら、今回のことも許してやろう」


「条件……」


「お前らの住処に案内するだけだよ。お前らの親玉に直接訊けば、大抵の悩みは解決するだろうさ」


「ふざける――ッ!!」


「あのさ、お前に選択の権利があると思っているのかよ。これはそう銘打っただけの強制イベントだぞ? お前が正しい選択を選ばなければ、残る未来はバッドエンド――終わり()だけだからな」



 尋問にも、薬やスキルなどの選択肢が存在するし……。

 いちおうの偽善者としての優しさが、そうした【希望(せいぞん)】の選択肢を残してやっているんだぞ。


 ちゃんとそれを選んでほしいものだ。



「……わ、分かった」


「お、ありがたいな。さっそくこれは回収しておくぞ。――はい、これでオッケー。あ、俺はメルスって言うんだ。この森を満喫してから西に行こうとしている旅人さ。あ、こっちは相棒のカナタな」


「……その相棒のカナタだ」


「…………イアス」


「そっか、よろしくな。イアス」



 偽名かもしれないが、呼ぶだけならばそれでも構わない。

 鑑定眼を使えばその真偽もすぐに分かるけど……ま、これからどうなるか分からない場所に住む奴の名前は覚えなくても問題ない。


 そしてイアスの案内の元、俺たちは霧に包まれた森の中を進んでいった。




主人公にも色々あるんです。

この章になって(ようやく)出てくるようになったキーワード、それが行動理由のヒントで答えです。

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