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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
第〇二章 過去は可変と簒奪し嗤う

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02-17 過去の王都 その01

修正を行いました(2018/11/12)



「……なんだか、そわそわしている奴が多い気がするな。なんでだ?」


 その日やりたいことも済ませ、暇潰しとして『始まりの町』を巡っていた。

 周りを見ればどいつもこいつもメニュー画面でも開いているのか、ぶつぶつと何かを呟きながら貧乏揺すりをしている。


 ドキドキワクワクとする少年少女や、まるでこの日のために生きてきたと言わんばかりに闘志を燃やす大きい子供……本当、今日この町で何が起きるんだよ。


 ──そんな俺の疑問は、天から降り注ぐお声によって解決することになる。



 ピンポンパンポーン

≪皆様、お集まりいただき誠にありがとうございます。私は今イベントを担当させていただくGM──01こと、レイと申します≫



 つい先日耳にした、優しい声が町に居るすべての者たちに届く。

 姿こそないものの、自ら宣した名前が彼女の正体を明確にする。


「……レイさん、言うんだ」


 周りのプレイヤーは首を傾げている。

 そりゃあ『レイ』は俺が付けた名前だし、疑問でしかないだろう。

 01、だからレイという安直な名前なんだけど……本当にイイのか?


 などと俺が思っていることも知らず、レイさんはアナウンスを続ける。



≪ただ今より、アップデート前イベント『幻歌の王譜』を開催いたします。

 前以って公式サイトへ掲載したように、プレイヤーの皆様方には、皆様方の世界における一週間という時間、この世界のどこかにある国──その過去へ向かってもらいます。

 もちろん、いずれ世界を開放して行けば辿り着くことはできますが……貴方がたの選択によって、街の姿が大きく変わることをご了承してください≫



 名前に凝っている、一度限りの特別なクエストであることはよく理解できた。

 過去の世界、なんてファンタジー感が溢れるイベントなんだろうか。


 これが一度目、全プレイヤーを対象とした大規模イベントなんだからビックリだ。

 アップデート前って言うのだから、これからもアップデート前はやるのかな?



≪今回はそのイベントポイントによって、ソロ・パーティー順位が決まります。加算法は秘匿しますが、ヒントとして誰かの助けとなることが肝心と言うことを皆様にお伝えしておきましょう。悪いことをしても、誰も喜びはしませんよ≫



 レイさんがそう言い切るのと同時に、俺たちの足元に巨大な魔法陣が展開される。

 あまりに複雑で、【生産神】を以ってしても瞬時の解析ができないほどの代物だ。


 ……まあ、瞬時じゃ無ければ、つまり視界に収まっている部分は少しずつ脳に理解が染み入っているのがチートなところだな。



≪その魔法陣が、皆様を過去の時代にお送りします。アップデートが終わるそのときまでに……どうか、悲劇を終わらせてください≫



 明らかなフラグと共に、俺たちをイベントエリアに送りだすレイさん。

 だがその台詞、しかと受け止めた。

 ──この偽善者に、不可能はない!






 眩しい閃光と共に、俺たちはたしかに会場となるイベントエリアに転移した。

 ゆっくりと慣らした瞳を開き、新天地を瞼に焼き付けようとするのは当然だろう。


「……って、あれ?」


 だが、それを疑問に思ったのは、あるかどうかも分からない直感のせいだろう。

 既視の街並み、既視の光景──既視の王城が俺の視界に映っていた。


「おい……まさか、ここなのか?」


 知っているからこそ、それを不安に感じてしまうのだろう。

 先ほどの言葉を反芻させ、それでもなお推測を口に出す。


「ここは……ネイロ王国なのか?」


  ◆   □   ◆   □   ◆


 SIDE:とある奴隷の少女


 ……私たちの村は平和そのものだった。


 父は、畑で野菜を作り、

 母は、家で料理を作り。

 私と妹は、そんな母のお手伝い。


 遠くから見える王城、そしてその近くにある大きな街。

 そんな場所には及ばないけれど、みんなで生きていくことを楽しいと思えていた。



 ……そう、あの日までは。



「……ん、んぅ……あれ?」


 目が覚めた時、私はベッドの下に居た。

 状況が呑み込めない自分がいたが、それよりも優先しなきゃいけないことがあった。


「外が……騒がしい」


 ベッドの下に居ると気づけたのも、外が明るくてベッドが見えたから。

 真っ暗な夜に、そんなことできないのに。


 起きれたのも、外が騒がしいから。

 わーわーきゃーきゃー、まるで何かから逃れるように声を上げている。


「! フーリ……」


 状況整理を整理を行っていた私の隣には、妹であるフーリが眠っていた。

 外の音に気づかず、ぐっすりと熟睡している……ふふっ、ちょっと落ち着いた。


「お父さーん……、お母さーん……」


 小さな声で周りにいないかを確かめてみたけど……二人は返事をしてくれなかった。

 ここにはいないのだろう、たぶんだけど私たちがここにいるのにも理由がある。


 そう考えた私は、すぐにフーリを起こすことを選んだ。

 ただ待っているだけじゃ、外の騒動は終らない……隠れているだけじゃ、お父さんとお母さんに会えなくなると思ったから。


「フーリ。ねぇ、フーリ起きて……」


「……ん、んぅぅ……お姉ちゃん、どうしてここに?」


「話はあと、ちゃんと聞いて。お父さんとお母さんが、私たちをベッドの下に隠していなくなっちゃったの。外は……こんな風に明るいし騒がしい。きっと何かあったの」


「……うん、分かった」


 フーリは私と違って、なんでもすぐに理解できる偉い子。

 こんなときでも冷静で、何をすればいいのかを寝ぼけ眼でも確認してくれる。


「隠れていも、たぶん危ない。お姉ちゃんといっしょに、外に来てくれない?」


「……うん。手を、握ってくれたら」


 本当に、いい妹だと思う。

 震える私の手を見て、フーリはそっと手を握ってきてくれた。


 何が起こっているか分からないこんな状況で、頭の中がグルグルしていた。

 けど変わらないペースで、フーリは私の意識を冷静に保たせてくれる。




 私とフーリは、息を潜めるようにして家の扉の前までやってきた。

 握った手の温もりが、私の凍える心を温めてくれる。

 その温かさだけを頼りに、ゆっくりと戸を開くと──


「……お姉、ちゃん」


「な、なにこれ……」


 目の前に現れた景色は、私の想像を遥かに超えたものだった。

 フーリが何か呟いたようであったが、そのときの私には気づく暇もなかった。


「村が……燃えてる?」


 世界は真っ赤に染まっていた。

 上から下まで炎の色に染め上げられ、家も畑も牛舎もすべてが火の中だった。


「それに……みんなも……」


 聞こえていた声は、村のみんながあげる悲鳴や泣き声だった。

 少しずつ小さくなっていくのは、広場の中心で静かに座っているからだ。


「……お姉ちゃん、あそこを見て」


「あれは、まさか盗賊!?」


「……違う、と思う」


 フーリも確証を持てていないようだけど、見つめる先には汚れた格好をした男の人たちがたくさんいた。

 手には武器を持っていて……誰かに使ったのか、赤いものが付いている人もいた。


「あっ、ファル……」


 呆然とその様子を見ていた私たちだったけど、遠くから一人の男の子が暴れているのが見えた。



「放せよ! お前ら、こんなことをして王様が許すと思ってんのか!」



 大きな声で叫んでいるので、隠れて見ている私たちにもその声が聞こえてくる。

 けど、男の人の一人がファルに何かをすると……途端に声は聞こえなくなった。


「……首輪」


「え?」


「……ファルの首に、首輪が付いた。それに他の人にも」



「まさか……『隷属の首輪』なの?」


 お母さんが教えてくれたことがあった。

 首に『隷属の首輪』を着けられると、自分の言う通りに体が動かなくなるって。


 それは着けた人の命令を聞かなきゃいけないからだって……でも、なんでこの村にそんな物を持った人が?


「ふ、フーリ、どうしよう」


「……探している。なら、隠れていても見つかりそう」


「そ、そうよね。なら、逃げないと」


「……でも、そんなことしたらバレちゃう」


 そもそも、私たちは自分たちがちゃんと隠れていると過信していた。

 だからこんな風に、話し合うなんてことができていた。


 ──だから、気づけなかったんだろう。



「……ああ、まだいたのか」



 どこからか、声が聞こえた。

 聞いたことのない知らない、物凄く怖い感じのする声だった。


「……っ」


「フーリ!」


 次の瞬間、フーリが地面に倒れた。

 私はとっさにフーリを抱えようと、体を屈め……てしまった。


「あ、れ……?」


 すると私もフーリと同じように、いつの間にか体を倒していた。

 自分の言う通りに体が動かず、フーリの居る方向を見ることもできない。


「ったく、面倒な手間をかけるガキ共が……黙らせておこう」


 男の人が何かを言うと、フーリが居る場所からガチャリと言う鈍い音が聞えた。 

 きっと、首輪を嵌めた音なんだろう。


(逃げなきゃ、でもフーリが! 体が動かない、どうやれば動けるように──)


 グルグルと回る思考だったけど、私の首にも冷たい首輪が嵌められた。

 ガチャリと言う音が、まるで死を告げる死神のように思えた。



「『意識するな、黙って歩け』」



 私の記憶は、ここでブッツリと途切れる。



過去の王都の導入前から始まり、考察の途中までです

……文字制限が無い分、自由に押し込んでおりますので

自粛した結果、一部を次の話に送っております……そちらはもっと長いです

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