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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と再始動 九月目

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偽善者なしの闇泥狼王



「ますたー、ご用件は?」



 そう言って、少女はわたしに質問をしてきます。



「可愛い」

「可愛いね~」

「可愛い……な」

「可愛い……けど、なんにも視えない」



 みんな似たようなことを思っているようですが……ノエルだけは少し違っていました。



「ノエル、どういうことかしら? 一部だけ視えない箇所があるならともかく、名前も視えないの?」


「う、うん。全く視えない。もしかしたら、隠蔽系の【固有】スキルを持っているのかもしれないけど……」



 シガンがそう訊くと、そう答えています。

 【固有】スキル……この娘もそれを持っているの?


 ノゾムさん、貴方はわたしに何を渡したんですか?



「ますたー、ご用件はなんでしょーか?」


「あ、ごめんなさい。――そこにいる狼さんたちを倒してほしいの」


「うん、分かった!」



 少女は頷いて周囲を見渡しました……すると、闇泥狼たちが激しく怯えだします。



「数は……うん、大丈夫。ますたー、まずは周りを片付けるから、十秒だけ待ってねー」



 少女はそう言って、二本の剣を抜いて――一瞬で姿を消します。



「……速い」



 誰が言ったかを気にする暇もありません。

 何かを斬るような音がすると、闇泥狼が一匹、光になって消えていきます。

 少女はわたしたちが捉えることのできない速度で動くので――その場には、斬撃音と悲鳴しか聞こえません。



「凄いね~。クラ~レ、いったい~どうやって~、さっきの~結晶を~貰ったの~?」


「先ほど話したノゾムさんという人に頂きました。第一陣ですので、恐らくわたしたちの知らない何かを知っているのでしょう」


「確か……無職だと言ったな。本当にそうなのか?」


「……ノゾムさん。出会った当初はデミゴブリン相手に苛められてましたし……たぶん、そうなんでしょう」


「「「「……えっ!?」」」」



 わたしもビックリしました。

 最も新しいAFOの参加者である第五陣のプレイヤーでも、たぶんゴブリンに負ける人はいないと思います。


 チュートリアルでは、ダメージを受けることはありません。

 本来は、その間に魔物と戦う意思というものを持つらしいのですが……本当に謎です。

 武器も持っていましたし、いちおうは戦えるはずなんですけど……。



「ますたー、小さいのは倒したよー」


「も、もう終わったのですか!?」


「うん! 次は、あの大きいのだねー」



 二本の剣を周囲で素振りし、今度は闇泥狼王を見ています。


 わたしたちが手間取ったあの闇泥狼をほんの数十秒で……いったい、あの娘はどれだけの力を有しているのでしょう。


 それに、少女の服は全く汚れていません。

 辺りには血のエフェクトが飛び散っているのに……どうやっているのでしょうか?



「行っくよー、スピードモード!」



 少女がそう言うと、マントの下に着ていた服の色が緑色に変わります。

 そして、地面を強く踏みしめて――突撃しました。


 闇泥狼王は少女をジッと見て、体の周りから闇を放出します。



「せいやっ! ……って、あれ?」



 少女が闇を斬った時、闇泥狼王の姿はその場からいなくなっていました。

 少女はそれを見て、一度こちらに戻って来ます……冷静な判断ですね。



「あのっ! その魔物は闇や泥を介して移動することができますから!」


「なるほど。ますたー、情報ありがとー!」



 少女はわたしにそう言うと、再び高速で移動します。

 散布された闇が細切れにされていくのですが、それでも闇泥狼王が悲鳴を上げることはありません。


 恐らく、泥に隠れているのでしょう。

 そして、泥を攻撃されたならば闇へ、闇を攻撃されたならば泥へ……と、隠れる場所を変えて続け、少女の体力を削っていくつもりなのだと思われます。



「うーん。なら、これならどうかな?」



 少女は魔力を足に溜めて……強く足元を踏み締めます。

 すると、今まで泥塗れであった地面が綺麗に整備され、闇泥狼王が再び潜れないようになっていきました。


 しかし、まだ闇があります。

 それは少女も分かったいるのでしょう。



「次はー、光れー!」


 ピカーン


「目が、目がぁ~! ……なんてね」



 今度は天井付近に巨大な光球が出現し、このダンジョン内を眩く照らします。

 闇は存在する場所を全て失い、ダンジョンは光に支配された空間へと変貌します。


 ずっと薄暗い洞窟の中にいましたので、少し……目が痛くなります。



「あ、ますたーごめんなさい。でも……やっと見つけた」


 GURRRRRRRR


 少女が言うように、隠れる所を無くした闇泥狼王が再び現れました。

 傷は完全に治っていて、今は強固な泥の鎧が完成しています。

 強烈な光の影響で闇は纏えていないようですが、それでも鋭い目でこちらを見るその獣性は諦めを感じさせません。



『……うん、そ……んだ。……、後……』


 GWON


 少女はわたしたちに聞こえないように、まるで闇泥狼王と話すように呟きます。

 何を言っているか分かりませんでしたが、闇泥狼王の気配が高まったので、何かしたことは間違いないようです。


 わたしたちは、その様子を黙って見つめています。

 ……少女の闘いに魅入られ、何もできないというのが正しいのでしょうか。



「じゃあ、行くよ」


 WOOOOOOOOOOON!!


 少女と闇泥狼王は、同時に相手の元へ走り出します。

 速さは少女の方が上ですが、闇泥狼王の目は間違いなくそれを把握しているように見えました。


 闇泥狼王は、一瞬だけ光の中で闇を出現させて爪に纏います。

 少女もまた、二本の剣に眩しい光を纏わせて駆けていきました。


 キィィィィイン!!


 互いに一撃を与えた構えで止まった二人。

 しばらくすると片方がグラリと揺れて……倒れます。



「うーん、これでおーしまい!」



 少女がそうやって剣を仕舞って伸びをするのと同時に、闇泥狼王は光の粒になってこの世界から消滅していきました。




もう少し、謎の少女(笑)は彼女達と共にいます。

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