偽善者と『極塔之主』 その09
その映像内では巨大な魔物一体とその配下たちが、二人の眷属を相手に奮闘していた。
「アレは……グラとセイだな。意外と早く上に着いたんだな。カナタ、このボスっていったいなんて名前なんだ?」
その魔物は、巨大なマッチョに犬の頭を取り付けたような容貌である。
まあ、どこかで見たことがある気がするんだが……。
『ん? 観て分からないか? アレはコボルトエンペラーとその配下、コボルトキングたちだ。その内(配下召喚)ってスキルでチャンピオンやナイト、アサシンやソーサラーとかが出てくるぞ』
「いやいや、俺も(元)ダンジョンマスターだからいちおう分かる。だけど、アレはもうコボルトって言って良いのか?」
『あぁ……確かに、進化するごとに筋肉質になるからなぁ。でも、それならどの魔物だって大体同じだろ? 成長した力を余らせて、筋肉になるじゃないか』
確かに、力こそが全て! 的な感じで育てていればそうなると思うが……。
「んなわけ無いだろう。ちゃんと特訓させれば……ほら、映像のこれ見て」
『ん? コイツ……鬼人じゃねぇか!』
カナタが観ているのは、白い大剣を持った角の生えた美女である。
一振りごとに大量の魔物を屠り続けているからか、楽しそうな顔であった。
「ゴブリンキングの時、見つけた従魔のリョクだ。今の種族は鬼人女王だな」
『育ててこうなるもんなんだな……って、おい待て』
「ん? 何か問題でもあったか?」
『いや、コイツ……女だよな。どうしてそれなのにキングなんだ?』
「……さて、十階層のバトルに戻ろうぜ」
《露骨に話を逸らしていますね》
『あぁ、これは絶対に裏があるな』
ええ、ありますともありますとも!
だがしかし、お前たちに言うわけにはまだいかないんだよ!
映像の方を見ると、グラとセイが協力し合いながら、コボルトたちを圧倒しているのが見て取れる。
グラは手袋を嵌め、セイは銃剣を握り、お互いの力を十全に扱えるような状態で戦闘を行っている。
「グラはなんでも喰べられて、セイはそれを効率良く放出できる。だから、二人はそれを有効的に使っている。
グラが嵌めている手袋、アレは指先から銃系統のスキルが使える魔具だ。接近戦に持ち込んで直接喰らっていけるから、彼女本来のスキルも扱いやすいんだよ。
セイが持っているのは……カナタでも分かるか。グラが喰らったものを全部弾丸にするなら、やっぱり銃が無いとな。セイ自身の剣の扱いも上手いから剣も付けてるし、近接も遠距離もどっちもできる娘だ」
コボルトの上位種がどれだけ(配下召喚)を使おうと、それは一瞬で消え去ってしまう。
セイがグラを補助するために放つ時弾が、彼女たちの動きを加速させ――文字通り、刹那の如き速さで魔物を消し去っていくのだ。
『おいおい、アイツらもアイツらで結構強いはずなんだが……あの二人ってどんぐらいのステータスなんだ?』
「今の能力値は、LUC以外一万だぞ。スキルはさっき言った感じのスキルと、彼女たちの種族に関するスキルだな」
『一万って……な、なら、あの無双もまだ納得だな。で、種族はなんだ? 見た感じは犬獣人と天使に見えるが……さっきの言い方からして違うんだろうが』
「ご明察。ケルベロスと熾天使だな」
ケルベロスと言っても、残り二つの頭は手で形を作らないと出てこないし、熾天使にしても常時体が燃えているわけじゃないがな。
《どちらもいわゆる、希少種のようですね》
『AFOってのは、そんなにレア種族がいっぱいいる世界だったのか』
「ああ……いや、違う違う。俺も眷属以外でレアな種族に会った経験はあんまりないし、多分遭遇率は同じぐらいだぞ。カナタ、天使ならダンジョンでも簡単に召喚できるんじゃないのか?」
『まぁ、うちのダンジョンの方針は中立に一応はなってるしな。召喚の前提条件は満たしてるが……それでも善に性格が認証されてないから、天使は召喚できないぞ』
「方針? 性格?」
何、その英霊みたいな属性設定!
ダンジョンって、そんな機能あったの!
「……まあ、それについては後でじっくり聞かせてもらうとして、お前らのコボルト……もうラスト一匹しかいないぞ」
『うげっ』
《ハァ……》
映像を観ると、コボルトエンペラーがズタボロな状態で這い蹲っていた。
グラとセイは周りの魔物をアプリで回収してから……ソイツの命を喰らった。
「カナタ、このダンジョンは必ずボスを倒さないと上に行けないのか?」
『あ、あぁ。同じ奴が入るならスルーして次に行けるが、未討伐の奴がいるパーティーなら必ず倒さないとならない。ドロップアイテム狙いの周回なら、リポップタイムが必要になるがな』
《周回するごとにドロップ確率が下がっていくという、鬼畜仕様ですがね。週に一度は必ず落とし、出るという可能性だけはチラつかせています》
「怖ッ! その仕組みを考えた奴の顔を見てみたい……って、そこにいたわ」
『……俺もあとで考え直して、悪魔の発想だと思った』
検証班でも気付けないんじゃないか?
理由の全てを、『物欲センサー』の一言で済ませられてしまうんだからな。
「さて、十一階層に向かった二人でありますが……地形が違うんだな」
『十階層までは普通の塔だが、それ以降は十階層ごとに地形が変わるんだ』
《十一階層から二十階層は、洞窟風になっています。それ以降はダンジョンらしからぬ、マスターの残念なセンスが光っていますよ》
『おいっ! 俺の考えたパーフェクトな地形設定にケチを付けるなよ!』
「まあ、今回は悪いがカナタに賛成だな。地形は把握しているが、俺も同じような地形を設定したことがあるからな」
『おぉ! 分かってくれるかメルス! そうだよなー、やっぱり自由にできるなら、それなりの地形にしたいよなぁ』
「そうそう、普段居られない感じの場所にするのがたまらないよな~」
この後話が少々脱線し、フィールドに関する話で盛り上がった。
《……ハァ。全く、これだから男性のロマンというものは》





