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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と飛ばされて終焉の島 中篇 七月目

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偽善者と<次元魔法> 後篇



《……を開けてください》



 何かへ呼びかけるような声に、俺は再び意識を戻す。



「(アン……か?)」


《ええ、メルス様の忠実な下僕、アンでございますよ》


「(そんなキャラ付けをして覚えは無い。大体なんで下僕なんだよ。もっとこう……あったでしょうに)」


《あとは……そうですね……。○奴隷や妊○奴隷などでしょうか》


「(駄目、あの作品はR18なんだから!)」


《メルス様も、それなら読まなければ良かったんですよ》



 ……だって、面白かったんだもん。

 So Complex な人達が集まり、一つのFamilyになっていくあの作品。

 最初の方は色々とアレだった主人公も、今ではすっかりライオンだ。



「(あ、あれには真面目な内容がいっぱいあったじゃないか!)」


《えぇ、ありましたとも。政治や経済、創作物や古書など……本当に勉強になる作品でしたよ……アッチな意味でもですが》


「(えぇい! ヤらんと言ったらヤらん!)」


《……ハァ、まぁ良いでしょう。それより解析の方は順調に進んでいますので、メルス様は早めにMPの方を満タンにしてください》



 なあ、知ってるか?

 満タンのタンはタンクのことらしいから、タンに漢字は無いんだぜ。



『……メルスがまた意味の無いことを言ってるわ』



 ええい、覗かんで宜しい!




 よし、MP充填率100%達成!

 これより、布団からの脱出を開始する。


 とてもふざけているように思えるが、これが割と大変な作業である。


 現在俺が使っているのは、【怠惰】の魔武具『魔の布団』だ。

 快適な温度や質感を限界まで再現しているため、外界の影響を殆ど受け無いような代物となっている。


 ……世の中にこれを売り出したら、俺は布団王と呼ばれること間違いなしの布団だと自負しているぞ。


 そんな人々を堕落させる布団を使用した者が、一体どういう末路を歩むかは想像する気にもならない。


 何故なら今、それを体験中なんだからな。



◆   □   ◆   □   ◆


 諸君! これよりお布団脱出作戦の概要を説明する……気合で何とかしろ!


 隊長! 世の中の人々がそれを実行できたら、誰も苦労しないと思います!


 えぇい知ったことか! 本来なら"完全なる操り人形"を使って、移動したかったわ!

 だが、今ここに"天魔創糸"が無いんだ……仕方が無かろう!

 諸君、直ぐに作戦を実行したま――



 た、隊長! う、腕が動きません!


 何ィ!? そんな筈が……バ、馬鹿な!?

 何故だ、一体どうして!?


 ……ッ!? 隊長、う、腕を見てください!!


 こ、これは! どうして奴らがこんな所に居るのだ……。


◆   □   ◆   □   ◆



《何をやっているんですか……》


「(いや~、それっぽく聞こえないか?)」



 茶番を考えていると、再びアンからの念話が飛んでくる。



《早く起きてください――そこの二人を引き剥がして》


「(なら訊くぞ。お前は気持ち良さそうに寝ているところを起こされたいか?)」


《……平時ならそれでも構いませんが、至福の時間を過ごしている時ならば……全力で、殺らせてもらいます》


「(そうか……なら、俺はこの状況をどうすれば良いと思う? ……というか、どうしてこの二人が俺の腕を枕にして寝てるんだ?)」



 俺の腕には、二人の少女が絡まっていた。


 一人は、白く見える透明な毛をショートボブにした、頭に熊の耳が生えた女の子。

 一人は、長く伸びた朱色の髪をポニーテールに括った、頭の片側に角の生えた女の子。


 ユルフワと退廃的という全然違うジャンルだが、どちらも美少女と世に出たらな言われるような子たちだ。


 ――そんな少女たちが俺の腕をギュッと抱きしめて眠っているんだ。

 どうして俺は、腕を動かすことができるのだろうか(いいや、動かせない)。



《反語ですね。スー様がそこにいるのは、メルス様がその布団を使っているからです。ミシェル様は……ジャンケンですね》


「(何? 俺との添い寝ってジャンケン制だったの? そもそも俺、一回もそういう制度にすると言ってないよね!?)」


《……おっと、解析の方がまもなく終了しそうですね》


「(あれ、無視!?)」


《……ふぅ。メルス様は飴と鞭と呼ばれる言葉をご存知ですよね?》


「(あれだろ、甘やかしたり厳しくしたりするやつだろう? それぐらいなら一応俺でも分かるぞ)」



 あと、SMにも通ずるものがあるな。

 もしシャインがこの場にいたら、直ぐにでも試してみようと思ったが……残念だ。



《まぁ、そういうことですね。では、メルス様はいつもわたしたちをコキ使っているワケですが……メルス様自身でご褒美を与えたことがありますか?》


「(……あったと言っても、わたしたちはそうは思っていないとか言うのか?)」


《そういった風に考えていただけているならば、それで充分ですよ。本当に駄目なのはそれすらも気付いていない者ですから》


「(……昔色々とやらされたが、それでも難しいことは難しいんだぞ。顔を見るだけで俺の赤面度は限界突破してるんだから……。演じてる状態でやってほしいワケじゃあないんだろう? このままじゃ停滞しているままなんだが、切っ掛けってのが無いんだよな~)」


《えぇ、だからこそ、停滞を止めてほしいのですがね。進みましょう、わたしたちを褒めてください。始めましょう、わたしたちに優しくなってください》


(「ここから始めましょうってか? ……もう少しだけ、距離を近付けてみるか」)


《はい、ありがとうございます》



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 結局俺は、二人が目を覚ますまではこのままでいることを選択した。

 報告はこのままでも聴けるし、何よりそっとしておくのが一番だしな。


 俺はこのまま、扉と<次元魔法>に関する情報を尋ねることになった。



《――要するに、あの扉には現在干渉不可能だよ。条件は分からないけど、触れようとすると次元の壁とやらに接触を拒まれる。一応言っておくと壁自体の解析は可能だね、可能だけどあまり必要は無いと思うよ。だってマスターの魔法がこの扉を創造したんだから、壁を造る魔法もあるんだろう? 壁自体もマスターの魔法の余波でできた物だから本当に同じ物ができそうだね》


「(えっと~……。扉開かない、壁有り。それは俺の魔法の影響――こんな感じか?)」


《その通り。マスター自身が触れていないから、もしかしたらマスターには開けられるかもしれないけど、今のマスターはこの島から出ることができないから結局は弾かれると思うよ》


「(……俺なら開けられるかも、だけど必須、殿堂入り)」


《あの先に、リゾート地や別の地方に繋がる道があるならば、そうだと思うよ》



 チャンピオンは……関係無いか。



「(扉の方は保留ってことにしよう。魔法自体はどうだ? 初だからしっかりと使えていたか分からなかった)」


《<次元魔法>はマスターの予想通り、どこかの次元へ干渉する魔法だね。これがあれば恐らく(召喚魔法)も(異世界召喚魔法)にでも強化できそうだけど……今はマスターはこの魔法を持っていないから、こっちも保留にしておくよ》


「((召喚魔法)って特別だよな~。個人識別型の魔法だから共有しても、何故か発動しないし……なんでだろうな)」


《(召喚魔法)は、<次元魔法>の空間を超越するという部分を常人でも扱えるようにする際に、個人識別型になったのだと思うよ……ほら、異世界召喚をする人も大体固有魔法として登録されていたり、数百年に一度の大儀式だったりするしね》


「(……そうか。それで(召喚魔法)のことは分かったな。空間に関する劣化版がそれなら、時間に関する魔法は……何なんだろうな?)」


《それが(時空魔法)だと思うよ……あの魔法は時間と空間の両方を扱える魔法だけど、空間を移動した際にラグが全く無いから多分時間の方に優れているよ》


「(……確かに、"収納空間"は時間が進んでいるが、"時空庫"は完全に止まっているよな。時魔法の方は完全に止めることができないのに、それができるってことは……そういうことなのか)」


《――<次元魔法>は、X軸とY軸を超えてZ軸に干渉できる魔法なんだよ。理解できたかい?》



 あれ? もし、それが正解だと言うのならば……。



「(……あぁ、覚えたぞ。今度ちょっと疑問に思ったことを資料に纏めておくから、あとで一回読んでくれ)」


《……いや、僕の部屋で教えてほしいな。手取り足取りね》


「(う~ん……………………分かった)」


《……おや、本当かい? マスターにしては珍しく、積極的な行動を許諾してくれたね》



 ――アンに言われたしな。

 もうちょっとだけ進んでみるか。



《ハハッ、なら楽しみにしているよ……この状況を乗り切れたらね》


「(え? 何を言って……あ)」



 さて、ここで問題だ。

 今まで全然構ってくれなかった主が、突然構ってくれるようになりました。

 ですが、主はその約束をまだ一人としかしていません。


 このとき、眷属たちはどのような行動を取るでしょうか?



(正解は……一気に約束を取り付けにやってくる……だ……あっ――)




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