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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と飛ばされて終焉の島 中篇 七月目

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偽善者と『勇魔王者』 その02



 魔方陣が破壊されても彼女が動くことは無く、ただ時間だけが過ぎていった。

 俺はその場から動かず、彼女の瞳を除くようにして話しかける。



「お嬢さん、生きていることは分かっていますので、せめて呼吸以外の行動をして頂けないとこちらもどうすれば良いのかわからないのですが……ええ、分からないのですよ。お嬢さん、貴女が私が邪魔なら邪魔でそう言ってくだされば、分かるのでs『……邪魔』おや、やっと口を開いてくれましたね」



 ボソッと口を開いた彼女は、濁った瞳をこちらに向けてくる。



「ま、邪魔だと言われて立ち去るのなら、お嬢さんにわざわざこんなにしつこく質問をしたりしませんよね。『邪魔』……いえ、ですから何度言われたとしても変わりませんよ。恐らく、お嬢さんを無理やりここから連れ出したとしても、お嬢さんの瞳は濁ったままだと思いましたので、私はこうして話しているのです。『必要無い』……いえいえ、私は偽善者ですのでやりたいようにやるのです」


『……ッ!!』



 偽善者という単語に反応してか、再び威圧が彼女から解放される。


 何度も言うが、俺は威圧が効かず、且つバフとして変換できるスキル持ちなのでその行動に意味は無い。

 あまりに発動確率の低いそのスキルも、何度も威圧を受けた影響で遂にバフとして威圧の変換に成功した。



「偽善者……この言葉に何か問題があるのでしょうか? 自分がやりたいことを相手に押し付けるその【傲慢】さですか? 救った相手に無理強いをして、何かを報酬として持っていくその【強欲】さですか? 私には、お嬢さんが一体何に反応しているのかは分かりませんがそれでも、何かを諦めていることだけは何となく分かりますよ『煩い』……いえいえ、せめて理由が聴きたいのですよ。どうしてお嬢さんのような方が、まるで絶望を見て来たかのような瞳をしているのかを」


『……なら、一つ訊く』



 そうして会話(?)をしていると、遂に彼女が話に答えてくれた。

 彼女は光を映さない闇混じりの瞳で、こちらを見ながら訊いてくる。



『貴方は……人族? それとも魔物?』


「どっちなのでしょうかね? ――[不明]という回答では駄目ですか?」


『そう……真面目に答えてくれないんだ』



 ……いや、割と本気で答えてるんだが。

 だが、その真実は彼女の耳に届かず、話はそのまま続いていった。



『私を見た人族は、私を魔物だと言って追放した。私を見た魔族は、私を人風情だと言って追放した。……なら、貴方は私をどう言って追放する(追い出す)の?』



 そう言った彼女は、トラウマを思い出したのか少し震えていた。

 さて、どう答えるべきか。



「……私は人族ではないから、お嬢さんを追放したりしません。私は魔族では無いから、お嬢さんを追放したりしません。

 私は種族が[不明]ですから、お嬢さんを救おうと思います。【傲慢】で【強欲】な偽善者なので、お嬢さんの何が彼らをそうしたのかは分かりません。ですが、私はどちらでも無いので追放はしなくても良いようです」


『わけが分からない。貴方は……私には獣人にしか見えない』


「おっと、スキルを使ったままでした」


 パチンッ


 俺は(因子注入)を解除して、いつもの平凡で嫌悪される姿へと戻る(ショタはそのままになっているが)。



『うっ……』


「酷いですね、傷付きますね。お嬢さんに何があったのかは分かりませんが、私の頭からケモ耳が無くなっただけで人への嫌悪感をむき出しにする程――お嬢さん、私の顔は醜いものだったのでしょうか?」


『ち、違っ……!』



 当然、<畏怖嫌厭>のお仕事の結果だよな。

 ショタの状態でも発動してたのかな?

 お嬢さんはまぁ何とも「うわっ、何なのその顔――キモッ!」と言わんばかりの表情をしている気がした(……あ、実体験だぞ)。



「私のこの顔は一応呪いなんでしょうね。私の顔を見た者が私を嫌悪するというスキルを神から授かったんですよ。お蔭様で醜かった顔が、より醜くなりましたよ」


『そ、そう……なんだ』



 引いていた彼女が退いている気もするが、今は置いておくとしよう。

 解決方法が未だに見つかっていないしな、やっぱり邪縛を掛けた本神を見つけ出すのが一番かな?



「……っと、話が逸れましたね。私の種族は人にも魔物にもなれる、化物なんですよ」


(――"因子注入・普人")


「……ある時は一般人として過ごし」


(――"因子注入・スライム")


「……ある時は粘性体として過ごす。たった一人の種族で生きる、見た目は醜く、頭脳は子供――その名は、[不明]メルス!」


『……!?』



 ふっ、決まった。

 どこかの名探偵みたいに宣言してみたが、俺の場合は迷探偵になったな。

 突然叫び出したことに驚いているみたいだが、こればかりはやりたかったんだ。



『……とりあえず、貴方が純粋な人族や魔族じゃ無いことは分かった。だけど、どうしてこんな所に来たの? 私はこんな生き物だから封印されちゃったけど、貴方は普通に過ごしていれば、ただ顔が残念なだけでしょ?』


「どうして顔についていう必要があったのでしょうか? ……そうですね、他の方にも説明してきましたし、お嬢さんにも説明しておいた方が良さそうですね?」


『他の……方?』


「ええ、ここ――"終焉の島"はお嬢さんのような強すぎた者達が封印された絶海の孤島です。説明しましょう、私がどうしてやってきて何をやって来たのかを」



 それからいつものように、今までのあらすじを説明していった。




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