05-05 第一層 前篇
加筆・修正しました(2025/05/06)
修正のおしらせ
某作品やらそもそものEHO側に合わせるということで、職業の枠の括りを固有職で無くとも【これ】にすることにしました
最近はスキルも(これ)を使わず これスキル という形にしていましたからね
スキル欄で出す際は(これ)のままでしょうが、基本的にそれ以外の場所では上記のやり方として、本編中で出てくる(これ)は思考云々で統一していこうと思います
天魔迷宮 一層
「さて、っと……“罠発見・劣”」
劣化スキル。
祈念者たちの中では、そう呼称されている(らしい)職業能力に内包されたスキルだ。
レベルは最大になる前でカンストし、性能も習得した正規のスキルには劣る。
そして何より、職業スキルをセットしていないと使うことができない。
俺は【初心者】、そして【経験者】の効果で下・中級職の職業スキルをメイン枠一つ分ですべて使うことができる。
なので初歩的なスキルであれば、すべて職業スキルで発動可能だ。
今回の罠発見スキルも、【盗賊】経由で得た劣等スキルである。
「これがあれば、問題ないは──ずぶっ!」
カチリと足元で音が鳴り響く。
何があったとか、そういうことを考える暇もなく俺は声を発して地に伏せていた。
「罠発見スキル……このレベルじゃ、足りないのかよ」
すでに盗賊はカンストしているが、それでもスキルのレベルは10で止まっている。
最大レベルは30、つまり全然育っていない状態と同じなのだ。
上位スキルも存在するので、それも含めるとさらに最終到達レベルには届かない。
改めて考えてみる……そして、当然の結論に至った。
「この程度じゃ無理か。天魔迷宮、俺が魔改造を続けているからなー」
素人が作った罠と違い、迷宮がシステム的に配置した罠が混ざっていた。
それは非常に隠匿性が高いため、初心者程度の目では見抜くことができない。
盗賊系の職業は、他に『義賊』しかカンストさせていなかった。
だが劣等スキルが二次職に内包されていることは無いため、罠発見スキルは伸びない。
「となると、方法は二つ。スキルを習得して一気に伸ばす。もしくは……俺自身がその技術を体得する」
PS、というものがある。
システムとして習得していないスキルを、自身の才能や技術だけで行うこと……俺の武術補正の再現もそれに該当するはずだ。
ならば、罠発見スキルをスキル無しで使えてもおかしくはないだろう。
必要なのは観察眼と経験則、幸い迷宮の罠は何度でも再配置される。
「それじゃあ、やりますか。何度でも、ここで挑戦すればいい」
さらに言えば、天魔迷宮は階層ごとの守護者以外に行く手を阻む生物は存在しない。
眷族を育てるという目的もあるため、その前に侵入者を屠られないためだ。
そんなわけで、愛すべき眷族と逢うために無数の罠を超えて進んでいく──さぁ、迷宮攻略を始めよう。
◆
「なんとなく分かったぞ。なら、ここをこう避けれ──」
(踏むと足元から槍が出てくる)
「こ、今度こそ、慎重に……」
(一定時間踏むと爆発する仕掛け)
「……なら、いっそ強引に突破すれb──」
(強制転移で振り出しへ)
◆
それからの俺が起こしたことは、その三パターンだけで纏められる。
気を抜いて作動、気を付け過ぎて作動、そして自棄になって起動……踏みまくったよ。
最終的には“罠解除・劣”で、どうにか掻い潜れるようになる。
発見と解除、共に失敗を重ねたからこそスキルレベル以上に技術を会得できたよ。
「【生産神】の力もあって、意外と解除自体は簡単だったんだよな。罠のパーツを得るって考え方だと、補正が入ったからだけど」
天才と違って、そこに至るまでたくさんの失敗と挑戦が必要になったけど。
それでもその発想へ辿り着いたことで、どうにか以降は作業的にこなせるようになる。
「さて……これでやっとだよ」
何度か入り口に戻っていたので、結構な時間が経過していた。
それでも気力は充分、なぜなら扉の先で待つ眷族が居るのだから。
「すー、はー。身だしなみは……うん、しっかりと準備はできているな」
巨大な門を少し押すと、残りは自動的に開けてくれる。
先で待つのは、迷宮の守護者──ただの一人として、先へ向かうことを拒む防御装置。
なので彼女たちは基本的に、こちらが部屋に入る瞬間を待つのだが──
「──ァ!」
「……ん?」
「──パァ!」
どこからともなく、何かが聞こえたような気がした。
だが、ゴゴゴッと揺れ動く門のせいで、その違和感を感じ取れない。
なので俺がソレに気づいたのは、聴覚でも視覚でも無かった。
初めて感じることができたのは、直接感じ取れたから──つまりは触覚だ。
◆ □ ◆ □ ◆
「パパァ~~~~ッ!」
「ぐふぉおおお!」
痛く強烈、略して痛烈。
音を置き去りにして受けた挨拶(物理)、それが彼女との再会だった。
……いや、彼女なんだろうか?
もちろん、ステータスは俺が設定したモノなのだから、生物学的に女に分類されることは承知していたんだけども。
妖精の祈念者であるオブリガーダよりも小さく、僅か三寸ほど。
淡い乳白色の長髪と、文字通り円らな瞳が光の加減でコロコロと色彩を変えている。
彼女とは初対面だ。
正しくは──その姿をした彼女とは。
「ミント……だよな?」
「うん、そうだよ!」
「そうか……なんというか、ずいぶんと可愛くなったな」
彼女を呼んだとき、その種族は『極小虫』という虫型の魔物だった。
だが現在、それも『小虫人』という種族に進化している……成長したんだな。
「ご主人、やっと来たか」
「お待ちしておりました、メルス様」
「フェニ、レミル……」
ミントと戯れていると、俺の下に二人の美女が近づいてくる。
長身の赤髪美女と翼の生えた白髪の女性、ミントと同じく俺の眷族だ。
「正攻法で逢いに行こうと思ったら、思いのほか苦戦してな。何度も転移罠を踏んだし、ひどいときは草原フィールドまで飛んで行ったからな」
「罠の機能を止めればよかったのでは?」
「あっ……い、いや、あくまで正攻法で行くべきだと思ったんだ。べ、別にさ、忘れていたわけじゃないんだ……信じてないだろ」
「ふふっ。では、そういうことにしておきましょう」
スキルのレベル上げのことを最初は考えていたが、途中からは……意地だったな。
そんな部分も含めて読まれているのか、二人とも温かい笑みを止めない。
……逢うならもっと、カッコよく登場したかったのにな。
ミントのステータス(更新版)
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ステータス
名前:ミント(♀)
種族:【極小虫Lv1】→【小虫人Lv1】
職業:なし→【迷宮階層主Lv1】
HP:30/30→50
MP:10/10→40
AP:10/10→40
STR: 5→10【+40】
VIT: 5→10【+40】
AGI:15→40【+40】
DEX:12→30【+40】
LUC:12→20【+40】
【迷宮の加護】
スキル
(変態)(噛み付き)(糸吐き)
NEW
(飛行)(隠密)(突進)(身体強化)(魔力操作)
(人化)(瞑想)(虫魔法)
迷宮スキル
(連携)(隠密)(体力譲渡)(回復魔法)
(消費軽減)(異常耐性)(精神耐性)(緊急転移)
(環境耐性)(言語理解)
祝福
(迷宮の加護)(眷軍強化)
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なお、迷宮スキル……ではないスキルは自力となっています
魔力の量と操作能力があれば、理論上魔物はどんな個体でも人化は可能です
……維持コストや違和感などの関係で大きさは小さめですが、位階の低い個体がそれを成し遂げるのは──ひとえに、当人の努力と言えましょう





