05-01 人形
※以降の話は、途中で大規模な修正が行われていないものになります
ナンバリングが付いていない時点で、だいたいお察しください
加筆・修正しました(2025/05/01)
撲滅イベントが終了し、数日が経過した。
俺は修練場に引き籠もり、自堕落な時間をひたすら過ごし続けている。
イベント中、魔王ロールなんかをした際の羞恥心が今さら爆発したからだ。
誰とも会いたくない、見せる顔が無いと全力で隠居をしていた。
現実世界へ[ログアウト]し、少し休んでからのことである。
急に、記憶が爆発するように自分の行いに対する、捉え方が変わった。
これまでの状態では、まさにテレビ越しに見ていたような感覚だ。
それが現実に戻ってきた途端、夢から覚めたようにそれを自分がやっていたと自覚。
結果、しばらく立ち直れなかった。
フェニとのアレコレも、似たような感じだが……アレよりも長いうえ、弁護できる点が一つも無かったので──折れてしまう。
「……けどまあ、そろそろ行かないとな。近いうちとは言ったものの、待たせすぎるのも可哀想だし」
イベント後の[ログアウト]直前、再会を約束していたがまだ果たしていない。
彼女は今も、俺を待ってくれている……自意識過剰で無ければ。
「って、こういう思考もまだネガティブ状態だな。ブレが小さすぎて、正常化もしてくれないってことか」
この世界はVRMMO──AFOの中。
そして俺は、強力な能力を複数有する自他ともに認めるチート野郎。
その中には、精神状態が大きく変動した際にリセットしてくれるモノも存在する。
だからこそ、羞恥心で悶え苦しんだのは現実世界だけの話……だいぶひどかったぞ。
「ふぅ……そうだ、気分転換に[称号]でも見てみるか」
ストレス発散に魔法をぶっ放したり、その他いろんなことをやってはいたが……肝心の業績である[称号]チェックを忘れていた。
少しでも気が晴れればいいんだが……とりあえず開示っと──
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戦闘系
『殺戮の王者』:???
最初系
『初めての新魔物創造者』:???
特殊系
『竜の王』:???
『使徒を従えし者』:効果なし
『大根役者』:(演技Lv1)
『闇導士』:導くは闇への道
『悦導士』:導くは悦への道
L称号スキル:(SMLv1)
『勇者を従えし者』:効果なし
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「導士……って、何ぞや」
ずいぶんと仰々しいテキストなので、何かしらの効果があるのだろう。
闇と悦、どちらも思い当たるのはTS野郎だけだが……獲得条件があるのかもな。
他の称号はなんとなく、どういった効果なのか分かるからいいんだけど。
今回は創造した存在で、演技をしながら蹂躙した……その結果が出ただけだ。
「『大根役者』だけは、不服を申し立てたくなるけど。人のことを演技下手だと言っているようなものじゃないか……演技スキルはとてもありがたいけど」
お馴染みのチートスキルの効果で、俺はありとあらゆるスキルの内、上級までならば絶対に習得することができる。
だというのに、演技に関するスキルだけは下級──つまり一番最初の段階から習得できなかったのだ。
だが今回の称号に付属していたスキルは、確認後[ステータス]に反映されていた。
つまりは演技スキルを習得できたということ……レベルを上げれば、性能も上がる。
「すぐに経験値を注いで……って、上げようにも演技に類似するスキルすら習得できないでいたから、まったく無いじゃん」
武具っ娘の中でも、俺が創りだした呪いと呪いを司る神器──『神呪の指輪』。
有する能力の一つによって、経験値を蓄えて自在に分配できるというものがある。
それがあれば、別のスキルで得た経験値を他のスキルのレベル上げに使えるのだが……ある程度類似したスキルで無いと、分配できないという些細な問題点があった。
普段なら結構多めにスキルを持っているので、何かしらのスキルが上げたいスキルと結びついていて、溜め込んでいた経験値を注ぐことができたのだが……。
演技(とコミュ力)に関するスキルは、これまで一つとして習得していなかった。
なので今は分配可能な経験値は存在しておらず、即座のカンストは無理そうだ。
「まあ、すぐに経験値を稼ぐこと自体はできるだろう。ふむ……この程度でもう、レベルも上がっているようだしな」
重複する経験値チートが、小さな行動からでも膨大な経験値を提供してくれる。
色んな意味で、演技スキルは使えると……前から思っていたからなー。
「演技ってことはつまり、理想とする動きを真似るためのもの。現実で観た創作物のアクションを、こっちの世界のハイスペックな肉体で……うん、レベルも上がるし実際に使えるし、便利なスキルだよな」
試しに中国のアクションスターをイメージしながら格闘術を試していると、その精確さから格闘術と演技スキルの経験値が貰える。
以前から補正の動きを再現していたが、それが行いやすくなった気がした。
演技スキル……ネタスキルっぽいのに、かなりのチートスキルだな。
◆ □ ◆ □ ◆
確認が終わると、やるべきことをまた思い出して実行する。
加工し、喜ばれることを信じて、一生懸命それに想いを籠めていく。
「──完成だ。うん、我ながらいいデザインと仕様になったな」
丹精に創りあげたそれは、指輪の形をした俺特注のアイテム──神器だ。
神鉄鉱をふんだんに使い、彼女のためだけに生みだした。
「幸い、鉱魔法と具現魔法があれば好きなだけ生成できるみたいだしな。その分、神気も消費しているみたいだけど……それ以外に使い道も無いし、レベリングになってちょうどよかったよ」
普通のスキルより成長速度が遅い神気スキルなので、定期的に使わなければ。
回復量もそこまで多くないし……それを増やす方法も、あまり好ましくないからな。
そうして自分に使えるモノすべてを使い、完成したのがこれだ──
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武神の指輪 製作者:〔メルス〕
魔道具〔神器〕:指輪
ランク:S〔X〕 耐久値:500/500〔∞〕
装備補正:ATK+50〔VIT+50(DEF+50)〕
説明:武の恩恵を使用者にもたらす指輪
才能の無い者でも限定的に武術補正や武技を行使可能となる
擬似的に祈念者の権能が組み込まれており、仮初の祈念者を装うことができる
〔説明:愛しき者を想い、武・戦の神より祝福を授かりし指輪であり神器
武術への適性を得たうえで、その性能を高めることができる
擬似的に祈念者の権能が組み込まれており、仮初の祈念者を装うことができる〕
〔※この装備は、特定の部位にしか装備することができない〕
装備スキル
(武芸百般:限定)(武技再現:限定)
(鑑定無効)(快適調整)(使用者識別)
(高速自動修復)(気力自然回復・高)
(武装変化)(システム:限定)
〔(専用装備)(神威偽装)(武芸達者:限定)
(武術適性:限定)(天魔の寵愛:メルス)
(武神の祝福)(戦神の祝福)
(神々のお節介:左手薬指限定装備)〕
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──前に出て戦うことが多いだろう、彼女に贈るための指輪。
武術の統合スキル、そして俺……というか『模宝玉』で再現できる武技をすべて使える仕様にしてある。
「そして、ノリで創ったこっちの人形。最初はテンションに任せてやってみたのの、意外と俺好みのアイテムになったな」
指輪を創っている際、アイデアに詰まったら作業していた人形作り。
思いのほかイイ代物となり、実用性も高い逸品となった。
「その名も『機巧乙女』。というわけで、すぐに使おうか──スー、グー」
《うん、お休み》
《しばらくは力になれなくなるけど……大丈夫かい?》
「外に出ないようにしておくさ。それか、しばらくは偽善を休むか。いずれにせよ。不安がらせないようにしておくよ」
《ならいいけど……気を付けてね》
《……Zzz》
こちらも神器級のアイテムなのだが、効果は自我を持つ武具と共に使うことで意味を成す代物──つまり、武具っ娘たちやレンを対象とした物。
彼女たちが核とする魔武具を取りだすと、人形の心臓部分に当てる。
すると内部から淡い光が飛び出し、その内部へ吸い込まれていく。
……しばらくは、連絡することはできないはずだ。
それでも、これが彼女たちとより深く繋がるために必要なこと。
「さて、会いに行くか」
目的地には、レンも居る。
事前に連絡して、しばらくは作業をしなくてもいいようにしてもらおう。
アイテムのデータです
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機巧乙女 製作者:メルス
道具〔神器〕:人形
ランク:S〔X〕 耐久値:1/1〔∞〕
説明:とても可愛らしい人形
〔説明:■■の概念が与えられた人形
■を宿すアイテムを取り込み、■として機能する受肉体となる
外部からの干渉によって、受肉体に最適な種族と職業が与えられる〕
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