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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と貯蓄期間 二十四月目

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偽善者と戦力集め その14



「ディー!」


『♪』



 俺がその名を呼ぶと、ディーはこちらに向かって勢いよく駆け抜けてくる。

 武技やスキル、そして精霊術を駆使して構えを取り──受け止めた。


 ゴフッと息を漏らしたものの、体が吹き飛ぶなどのトラブルは生じない。

 俺はディーを──狼の姿をした召喚獣を、どうにか胸の中で抱き締められたのだ。



「その姿、狼の因子を使ったんだね」


『!』


「うんうん、いいんだよ。意思疎通はできるから、必要な姿を集めていこうね!」


『──ウォフッ!』



 ディーこと[ディバース]は、魔粘体状の魔物であって、魔粘体そのものではない。

 あくまでそれは仮の姿……というより、すべてに到達する原初の形と言えよう。


 Z商会の支店長曰く、千変万化な進化を遂げる魔粘体の性質を持って、退化を繰り返した特異種という点が、『進退流転』を冠した所以(りゆう)の可能性が高いんだとか。


 俺はその能力を飛躍的に向上させるべく、自身の種族スキル“生命之樹”を与えた。

 ありとあらゆる因子を束ね、その経験が蓄積しているこのスキル。


 それを発動させれば、どんな種族にだろうとなることができるのだ。

 しかしまあ、さすがに経験まで与えることはできなかった。


 ──なので条件として、それぞれの因子に一定量の経験値を注がねばならない。


 系統樹のように無限に枝分かれした一つずつに、経験値を注ぐことで因子が開花する。

 そのまま使っていけば進化できるようになるし、分岐進化を選んで行うことも可能だ。


 また、一定量の因子を取り込むことでもその条件は満たされる。

 開きたい生命の系統樹、その最下層に位置する存在を食らい続ければ因子が花開く。



「要するに、ディーは何にでもなれる! 特定の個体は……条件をさらに満たさないと難しいかもしれないけど、種族だけならそれこそ無限の可能性がある!」


『ウォン!』


「ふっふっふ……退化もできるから、後戻りもできる。ただし、系統樹が繋がっていないと別の種族に戻せなくなるからね。考えて、なる種族を決めるんだよ」



 要するにディーは、初期状態と狼の姿にしか現状ではなれなくなった。

 別の種族になりたいのならば、経験値で別種族との繋がりを生まなければならない。



「それじゃあ、とりあえず行こう。ディー、臭いで追いかけることはできる?」


『ウォフ!』


「なら……この臭いが強い方に行ってみて。それと、攻撃されても防御するだけでいい。悪い人たちじゃないからね」


『ウォン!』



 言い含めておけば、ディーがやらかすことはないだろう。

 せいぜい貴重な素材を使った矢を食べて、困らせてしまうぐらいかな?



  ◆   □   ◆   □   ◆



「──まさか、貴様だったとは……いつもいつも、貴様というヤツは」


「ふっ、見た目だけに騙されないことだね。僕ほどのレベルに達すると、文字通りありとあらゆる姿を持っているんだよ! そして、それに相応しい相棒もね!」


『ウォンッ♪』


「『進退流転[ディヴァース]』。まさか、ユニークモンスターを使役しているとは……何から何まで、規格外な男だ。まあいい、そういうものだと理解しておこう」



 なんやかんや、いろいろとあったものだ。

 俺とディー(狼)が森の奥地──森人たちの隠れ里に向かうと、無数の矢がディーを襲いかかった。


 それは予期した通りすべて捕食され、彼らに衝撃を与える。

 狼が口ではない部分から、しかも沈むように捕食していれば恐怖するだろう。


 時間が経ち、手に負えないと分かった若い衆が呼びだしたのが──『月読森人ルナエルフ』であるイアンという青年。


 今のディーでは苦戦する相手なので、俺も協力して激闘を繰り広げたのち……俺の正体に気づいたイアンによって、今の状態に至ったわけだ。



「せっかくだし、確認をしにね。そっちに出している使いから報告は受けているよ? でも、やっぱり現場に行かないと生の感覚は伝わってこないからね……」


「貴様が来たと伝えたら、長老たちがどれだけ恐怖したと思っている。無茶な要求ばかりして、押し通した結果だ」


「うーん……あっちもあっちで、結構無理難題を突き付けてきたんだよ? さっさと進化させろとか、自分たちの縁者を優先的にとかそういうこと。だから、それを叶えてあげようとしただけなんだけど……」



 かつての森は閉鎖的で、祈念者の侵入を拒み迎撃を行っていた。

 なので俺は偽善として、道を通れるようにあの手この手で交渉をしてみたのだ。


 その結果、月の力を与えたら認めると言ってきて、それを達成したので祈念者たちが通れるようになったわけだ。


 あとはしばらく、交渉の結果送れるようになった使者を通じて情報を集め、時々逆に送られてくる森人たちを『月読森人』に進化できるように協力していた。



「すぐになりたい人は月の迷宮に入らせてあげて、進化できるようにしたんだけどな……何か不満だったのかな?」


「たしかに進化したのだろう。だが、誰も彼もが貴様に恐怖を抱いているのだぞ! 長老共も、いつ自分たちが同じことをさせられるのかと震えて当然だろうが!」


「ふーん、そういうものか……森人って、難しい生き方をしているんだね」


「誰のせいだと思っている……」



 少なくとも、俺ではなかろう。

 そんな発言を飲み下し、彼の案内で隠れ里の長老たちの下へ向かうのだった。




進化・退化は自由ですが、別系統の種族になるためにはパスを繋げなければなりません

経験値を注いだ場合は、最底辺の種族のみ解放されて切り替えられますが……条件達成の進化・退化の場合は、以下のような過程を経て繋げられます──

『ウルフ』→『ウォーターウルフ』→『リキッドウルフ』→『リキッドスライム』→『ウォータースライム』→『スライム』といった感じですね


現在、ディーは初期状態である『スライム』と経験値で解放した『ウルフ』の系統樹を使えます

(ちなみに進化・退化の先はだいぶ緩く、先ほどのように『ウルフ』の果てから『スライム』になったりしています。鯉が竜になるなんて話もありますが、そんなイメージをしていただけると良いでしょう)


p.s.

というわけで、ディーのこんな進化が見たいというアイデアを募集します

暇な方は考えてみて、スライムかウルフの派生からどんな感じになるのか書いてみてください

できるだけ詳細に書いてほしいですが……上記の感じでも構いません

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