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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
第〇四章 試練の魔王と堕ちる者たち

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04-53 撲滅イベント その31

加筆・修正しました(12/08)



「固有スキルをそんなに……異常ね、本当」


 嘘を吐いていない、自身の呪いを過信している竜人の祈念者(イア)にステータスを伝えた。

 固有スキルの中でも、バレても困らないもの──【武芸百般】や【元素魔法】などだ。


 若干古い情報ではあるが、ある意味持っていたのだからここは嘘じゃないな。

 他の固有スキルも、他者からパクっていないものを挙げておいたぞ。


「おまけに全能力値が80を超えている? 上位ランカーなら当然の数値らしいけど、それが平均値ってのは初よね? もしかして、貴方もそうなの?」


「…………」


「知らない? もしくは自覚がないとか……[掲示板]で見たことがない?」


「……[掲示板]は使わない」


 知りたいことは、眷族から聞いた方が正確な情報が入るし。

 あまり他者と交流したいわけでもない、何より……絡みづらいからな、あれって。


 しかしランカーねぇ……。

 オンゲーの定番単語としての意味なら、何かしらの部門において上位に立つ者たち。

 AFOの場合は……なんだろうか。


「ランカーってのは、有名な人のこと。祈念者だけ、自由民込みって分かれてるけど……今回は前者ね。公式な選定基準は無いけど、大半は知名度かしら」


 曰く、何かしらやらかせば自由民たちはそれを把握するらしい。

 ギルドで「俺、何かしました?」をやれば当然注目されるだろうし。


「けど、上位ランカーだけは明確な判断基準が存在する──そう、イベントのランキングね。問題点は職業名しか分からないことだけど……こうして訊けば、逆に分かる」


 一部の祈念者は固有職に就いているので、ランキングの入賞者だとすぐにバレる。

 普通は隠すだろうけど、彼女に魅せられた状態で聞かれれば……正直に言ってしまう。


「けど、【迷宮主(ダンジョンマスター)】……三文字よね? もしかして、ランキングに入賞したことがあるのかしら?」


「……ない」


「そう、違うのね。まさかとは思ったけど、気のせいか」


 魅せられたふりだけして、嘘偽りが吐ける俺なら隠し通せるけどさ。

 しかし……三文字か、そういえば表示されるのは【初心者】か【経験者】だったしな。


「…………なら、もういいわ。もしかしたら貴方が、例のあの人かと思ったけど──受け入れなさい」


 俺が思考に耽っている間に、イアは剣を構えて俺に突きつける。

 訊きたいことを聞き終えて、もう用済みというわけか。


 本来、この命令を受けた奴は抗うこともできずに殺されるのだろう。

 速度も威力も要らない、ただ前に押し出せばそれだけで死ぬ。


「……けど、まだ死ぬわけにはいかないな」

《“魔力化・鉱”》


「──え゛?」


「っと、悪いな。剣、折れちまった」


 ガキンッと嫌な音が鳴って、根元からポッキリである。

 俺自身は皮膚が自分のイメージした最硬の鉱石と化していたので、ほぼ無敵だった。


「これが俺の最強魔法──『アスト□ン』」


「……ちょくちょく挟んでくるわね。あいにく、冷気も波動も出せないわよ。って、なんで話せるの!」


「最初からだ。最初から、その女王様みたいなプレイを堪能していた」


「い、淫獣……!」


 体をギュッと抱き締め、ナニカを警戒するようなポージング。

 ……ああ、うん、そういう意味だったんだな、それって。


  ◆   □   ◆   □   ◆


「──それでもう、本当に困ったのよ。何せ顔を出しただけで、みんな虜になるのよ? お陰で普通に施設も使えない。認識阻害付きのローブを得るまで、苦労したわ」


「そうか? こう、値引きとか結構得になると思うんだが?」


「……所帯とか交際関係とか、そういうドロドロとしたものに巻き込まれたいの?」


「なるほど、そりゃ無理だ」


 あれから、いろいろあった。

 どうやら彼女は自分の呪いが通用しない人物を探していたらしく、もっとも可能性のある奴かどうかを聞いていたそうだ。


 ──『模倣者』、謎のトップランカー。


 いつの間にやらそう評価され、[掲示板]でもうわさになっていたらしい祈念者。

 その実情はともかく、謎だからこそ見いだせる可能性があったのだろう。


 彼女のソレはON/OFFを自由に切り替えられない、常時ONの代物。

 ただ、発動条件である顔の認識さえ避けられれば、相手はその状態に陥らない。


 だが、人は視覚からの情報が九割。

 どれだけ隠してもそれを知るスキルがこの世界にはあるため、策を凝らして隠しても、暴かれてしまえば──虜となる。


「けど、あんなスキンシップを取られれば、なって当然だとは思うけどな。直前に自分で言ったこと、忘れてたよな?」


「あ、あれは……気が動転してたというか、改めて驚いたって言うか……と、ともかく、初めてだったのよ? それくらい、体で表現してもいいじゃない!」


「……あー、はいはい。よかったな」


 最初とずいぶんと雰囲気が違う。

 呪い云々で気を張り詰めていたのか、それとも他に理由があるのか……まあ、彼女自身の問題なので、接しやすいと考えておく。


 本人曰く、生物ならどんな相手でも通用するらしい──ただし魅了は男性に限る。

 ずいぶんとまあ用途がアレっぽいが、特化させることで性能が上がったのだろう。


「女だけでいれば、話せたんじゃないか?」


「女にも効くから困るのよ。ありえないくらいに怒ってくるから、普通に顔を晒すだけでも殺されかけたわ」


「……女性の【嫉妬】は怖いって言うけど、本当なんだな」


 男は魅了され、女は憎悪に呑まれる。

 それこそが彼女に課せられた呪い……どんなことが起これば、そんな絶世の美女みたいな罪深い呪いを受けるんだか。


「──さて、話を戻そうか。話を聞いていて分かったけど、なんとかなりそうだ」


「ッ……!? できるの、本当に……?」


「たぶんだけどな。でも、それにはいくつか条件があるぞ」


「条件?」


 彼女にとって俺の発言は、可能性の高いものとして勝手に変換されているのだろう。

 自分の呪いを諸共せず、相応にレベルも高い実力者……まあ、そんなところか。


 前例が無いからこそ、自分の問題を解決できると信じている。

 ──いや、正しくは信じようとしているのだろうな。


「条件は三つ。一つ、その問題のヤツがどうにかなるまで言うことを聞く。二つ、そのうち作る俺のクランに所属する……ここまでで何か質問は?」


「……二つ目は問題ない、無所属だから。けど、一つ目は……何をする気?」


「別にどうもしない。ただ、会わせたい奴らに会ってもらいたいだけだ。そして三つ目だが──俺の眷族になる」


「眷族って何? クランメンバーとか、パーティーメンバーとは違うの?」


 初めて聞く単語だし、アレな病を患う奴の痛い台詞(セリフ)のように思えたのかもしれない。

 実際、[眷軍強化]って俺の願望から生まれたわけだし……考えないでおこう。


「俺のスペシャルなスキルの効果で、枠とか関係ない配下が創れる能力だ。その効果で、お前のアレをなんとかする」


「……聞いたことないわね。固有スキル?」


「個有スキルだな。ちなみに、デメリットは無いぞ……必要習得ポイントが999ってところ以外は」


「物凄いデメリットね、それ」


 祈念者だけの特権、自在にスキルを習得するために必要なポイントSP(スキルポイント)

 それを脇目も振らずに溜め込み、どうにか上げたら得られる代物だしな。


 ……俺はいろいろとズル(チート)の限りを尽くしたから、そういう苦労は全然なかったけど。


「まあ、細かい話は追々。どうするんだ、受けるか……受けないかは?」


「何でも呑むわよ。ただし、そういうことはしないからね」


「そういうことって?」


「…………あとで一つ頼みたいことがあるから、それだけ叶えてちょうだい」


 教えてくれなかったが、顔が赤いのでそういうことなのだろう……ませているな。

 とはいえ、それは俺も同じこと、互いに何もなかったことにするのが一番だ。


「それじゃあ、眷族の印を刻むから好きな場所を選んでくれ。痛みは無し、望まないと浮かんでこないから安心しろ」


「なら……首筋にでも頼むわ」


「了解。じゃあ、少し眠くなるけど気にしないでくれ」


「えっ、なんでそれを早……く…………」


 暴れられても困るので、有言実行かつ迅速果敢に印を刻む。

 スッと肌に触れると、イアはそれに抵抗できずに気絶する。


 俺はそれをそっと支え、地面に寝かしつけておく。

 ……その間は暇なので、アイテムの整理やスキルの確認をすることに。


 何が彼女にとっての救いになるのか、考えながらゆっくりと。



前話の反射眼が分かり辛かったようで……台詞中の反射眼は「反射眼(仮)」です

言ってしまうとアレだなぁということで、意図してカットされていました

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