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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と攻城戦イベント 二十三月目

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偽善者と攻城戦後篇 その08



≪しょうごとなりましたので──じゅういっかいめのこうじょうせんかいしです≫



 攻城戦の時間となって、俺たちは祈念者の眷属たちが占領した領域を攻め始めた。

 とっくにオブリが侵入しているので、向こう側は強化された能力値を慣らしている。


 ……そりゃあな、一人ひとりが異常な眷属の相手をしてもらうのだから、相応の力を一時的にではあるが身に着けてもらったのだ。



「──いいか、ソウ。俺とお前はいっしょに行動する。理由は分かるよな?」


「うむ、主様と儂は逢瀬を……」


「違う。お前がノリで世界を滅ぼさないように、監視するためだ。防衛側に回すこともできないから、いっそのことってことだな」


「なるほどのう。要は逢瀬を楽しめと……そういうことじゃな?」



 まあ、戦闘に意識を向けられるよりはマシなんだろう。

 シガンと生命最強決定戦で戦った時も、それなりに力を解放していたし。


 今はそれをだいぶ抑制しているが、もしもの可能性が否めない……それがソウだ。

 本人がその気で居てくれた方が、周りへの被害は少ないのかもしれない。



「お前がその方が我慢をできるなら、別に構わないぞ? ソウを一人で止められるなら、俺も覚悟の上だ」


「……さすがの儂も、そこまで犠牲染みた言われ方をすれば傷つくのじゃよ」


「分かってくれて何よりだ。確認するが、ソウは対人戦を進んでやりたいってわけじゃないんだよな?」


「うむ。もともと儂は、俗世での闘争が嫌で彼の地に居たのじゃから。今さらこの身が圧倒的差を失った、対等な闘いをできるというのであっても……刺激はされんのう」



 ソウは俺が頼んだ時を除いて、比較的本来の姿に戻ることは少ない。

 それこそが、彼女に与えた指輪の──束縛であり恩恵である。


 というか、神がたまに加護をくれるような指輪でも無ければダメだった。

 単純に能力値を抑えるだけだと、1あれば無双できる……それがコイツである。



「じゃあ、どうするか? 俺としては出会った相手にだけ対応すればいいと思うが」


「主様の望むままに。儂としては、想定しているのは逢瀬じゃからな」


「普通の経験が無いから、俺から何か言えることはないな。けど、それ以外ならとりあえず言えるぞ──魔物と人、どっちがいい?」


「ふむ……まずは魔物かのう?」



 ソウの回答した方がいる場所に向けて、俺たちはさっそく移動を始める。

 そこには無数の魔法陣が設置されており、大量の魔物たちが蔓延っていた。



「じゃあ、潰すぞ」


「うむ」



 面倒臭いので、戦い方はシンプル──ひたすら体を動かすだけ。

 俺の場合はスキルを駆使して、ソウの場合は……うん、ただの身体能力である。



「──“飛翔”、“剛筋”、“自重操作”、“軟体”、“衝撃吸収”、“身体強化”」



 同じような使い方をしたスキルの大量起動による、超強化。

 ただし、一つ目のスキルで分かるように、今回は空を飛んでの一撃を叩き付ける。



「魔物の質はうちと変わらないみたいだな。だいぶ頑張ったってことか」


「主様、切りがないのではないか? たしかに儂らが行うのであれば、いずれ駆逐できるのであろうが……」


「ああ、そろそろいいか。ついでだ、礼装を借りてもいいか?」


「うむ、構わぬよ」



 本人の了承も取れたし、魂魄の力を借り受けることに。

 礼装に意識を集中させると、魔力を巡らせて綴っていく──



「理より外れし古の龍。神をも超えし力を振るい、超越せし白銀の王者。明けない白夜の輝きを以って、並ぶ者なき暴虐の力を知らしめろ──“銀夜魂魄(ソウルドラゴナイト)”」



 礼装は白銀に輝く。

 薄明の光を纏うそれは、ただひたすらに周囲から闇を取り払う。


 ──世界に夜の出番はない、白銀の輝きこそが中心であると知らしめるように。



「派手すぎるな、これ」


「失礼な。儂の鱗同様、実に見栄えする輝きだったではないか」


「……そこは否定しないけど。しかしまあ、俺の方も能力値を調整しないと体が大変なことになるぞ、これは」



 すぐさま『神呪の指輪』の能力を用いて、自身の能力値を弱体化させる。

 ちなみにそのまま動いていたら、辺りの地面には深刻な罅割れが生まれていただろう。



「して、この後はどうするのかのう?」


「魔法陣をぶっ壊してしまえ」


「了解じゃ」



 追加で空間把握スキル、そして思考加速スキルを起動して走り出す。

 縮地、俊足、健脚、脱兎、天駆スキルも同時に使えば、移動速度はさらに上がる。



「速度はそのままエネルギーに。龍の力で一気にぶっ壊す」



 武技は使わない代わりとして、竜族である古龍のソウが使えるエネルギー『竜丹』を頼りに、魔法陣の破壊を試みた。


 生命力、魔力、精気力を同時に練り上げたうえで心臓へ流し込む……のだが、今回は礼装へ注ぐことで代用する。


 擬似的な心臓の役割も果たしてくれる礼装によって、纏う白銀の光が増大していく。

 あとはそれを拳に纏い、超絶駆動で魔物たちを突破している俺が振るえば……。



「ふむ、さすがは主様。その程度のことは容易くやってのける」


「褒めても何も出ないぞ。ほら、次は対人戦用の相手を探しに行こうか」


「本気で言っておるぞ。普通の人族が使えば間違いなく、身体に支障を及ぼしていたじゃろうから」


「……使った後のケアは、ちゃんとやっているからな」



 といった会話をしながら、俺たちはこの場から去っていく。

 そこに残されたのは──地の底までポッカリと開いた、巨大な穴だけだ。




※丹力:種族ごとに異なる性質を持つエネルギー

己の中に存在する力をすべて束ね、生成可能

丹力はあらゆる身力に対応しているため、武技や魔法などに籠めて使うと性能が爆上がりする

……ただし、命を削っているため、乱用はできない

[種族によっては、生命力・魔力・精気力の三つで作らない場合もある]


p.s.

一日遅れとなりますが──修正話、更新しています

『ユニーク』の紹介回……となるはずだったんですが

旧版で興味を持っていたキャラが居た方、申し訳ありません

彼に語らせた方が、偽善者への対応としてごく自然でした

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