偽善者と攻城戦中篇 その01
前半は第三者視点となります
※累計PVが一千万を達成!
評価の平均値も0.1上がりましたし、最近はいいことばかりですね
「かれらは、どうしてうばいあうのでしょうか? ちからをあわせてまものとたたかおうとすれば、とっぱできたたたかいもあったはずです」
人工物がほとんど存在しない、そんな在ることが疑われるような真っ新な空間。
黒髪の少女は、唯一存在した宙に浮くモニターを見ながら舌足らずに呟く。
映像の中では、大量の人々が魔物たちと争い──人同士もまた争いを行っていた。
三つ巴……否、それ以上に複雑な戦況を観て、不思議そうに首を傾げる。
「それが祈念者、そして人なんだよ。そう、だから06は彼らにあまり関わってはいけないんだ」
少女──GM06の純粋な問いに答えるのは、チョコ色の髪を持つ貴公子然とした女。
彼女──GM02は蔑むような視線を向けつつ、より詳しく解答を行う。
「──01お姉様や03、04や05はそうじゃないと言うけどね」
「レイおねえさまたちが?」
「……そう、あの祈念者が付けたという名前なんて名乗っている。06、ぼくたちには自由が与えられているけど、それは祈念者たちに尽くすことと同義ではない。ぼくたちは、彼らに与えて『あげる』立場なんだよ」
「……よくわかりません。レイおねえさまたちと、ゼロツーおねえさまはいっていることにむじゅんがしょうじています。いずれ、ゼロシックスもあってみたいものです──あのおかたに」
06の脳裏に浮かぶのは、自分たちの長女である01──レイが見せた、とある男性に関する資料。
「うんえいしんのかたがた、いまはうごきをみせないスペリオルシリーズ、そしておおかみ……グランドクエストもすこしずつうごくいま、せかいにはなにかがひつようです」
「……その何かに、あの男が必要だと?」
「かくしょうはありません。ですが、すくなくともレイおねえさまたちは、あのおかたではないとおもっているようです。だからこそきになります、なぜあのおかたをレイおねえさまたちがしたうのか」
「それは……ぼくも気になるけど」
GMの中でもっとも聡明な少女06は、この先の世界を案じる。
祈念者が干渉を行い、少しずつ変わりゆくある世界。
世界の調整役を務める彼女たち、中でもとあることを業務としてる06だからこそ、そのことを憂う。
「ことわり、そしてすくいはいまだにめざめません。きよめもせんしゅつされない、しかしわざわいだけはうごきつつある。そんななか、ことなるやくさいこうほとして、あのかたはえらばれました」
「それは、すでに01お姉様があの男に伝えているだろう?」
「そうですね。それでもなお、やくさいとしてうごこうとはしません。もっともはやいかいけつではなく、あのおかたなりになにかをするみたいです……ぜひ、いちどおあいしてきいてみたいものです」
「…………」
自分には見せない、興味を抱く人物へ向けた期待の眼差し。
06の浮かべた表情を見た02は、ギリッと顔を歪めて歯を食いしばるのだった。
◆ □ ◆ □ ◆
「あれからいろいろとあったものだ……みたいな感じで纏めたら、一気に時間が飛んだりしないかな?」
「……急にどうしたのかしら、魔王様?」
「いやなに、ずいぶんと激しい戦いを繰り返してきたなーって」
現在、攻城戦は三日目となっている。
全五日間で執り行われるこのイベント、その半分を終えて……非常に疲れた。
偶発的レイドを終えるごとに魔物の位階は上がっていくし、定時レイドの魔物もその分難易度を増していく。
二日目は眷属二人に手伝ってもらい、三日目である今日は眷属三人の助力だ。
どうにか対処できているものの、都市一つの防衛には数の力が有効なのも事実。
「リッカ、いっそのことクリスタルを放置して他を攻め滅ぼすって手もあるけど……どう思う?」
「本当に、心の底から望んでいるなら手伝うわよ? まあ、魔王っていったら、なんだかやりそうなイメージだけど……うちの魔王様は、普通の魔王じゃないからね」
「ご理解いただけているようで……みんなの職業で設営できるユニット、それに条件達成による設営制限解除でだいぶ楽になった。しばらくは放置してもいいと思うんだ」
現在、魔物の位階は最大で12級──実力のある冒険者が束になって挑んでも、戦況によっては全滅するレベル──なのだが、出てくる魔物すべてがそれというわけじゃない。
それでもSランク評価を叩きだし続けた結果、クリスタルの方に報酬が出ていた。
一定数の防衛成功、被害率0パーセント、機構の使用頻度など……種類はさまざまだ。
それによって、解除されたクリスタルのシステムの制限。
設置数と消費した素材のレア度が条件を見たし、好きなだけ設置できるようになった。
……いちおうの制限として、レイドの難易度が対応している。
だがその難易度が最大状態なので、無制限で設置できてしまうのだ。
「──それで、私たちは放置?」
「三人いっしょに連れても構わないけど、間違いなく注目の的だしな……美人って得をするけど、その分の代償はきっちり支払っているってことだよな。まあ、そんな美人と居るだけで恨まれるモブも可哀想だけど」
「いいわね、魔王様。不意打ちで美人と言われて照れない女性は居ないわよ」
「……いや、照れてないだろう」
無表情とまでは言わないが、リッカは特に顔に変化を見せない。
対して、俺は自分の発言を見直し……頬が紅潮するのを感じる。
「いえ、かなり嬉しいわよ。ただ、メイドたるもの不用意に感情を見せることなかれ、そう習ったのよ」
「感情の発露を防ぐって……暗殺者の練習もしているのか?」
「当然よ」
「……当然、なのか?」
今度、メルとしてメイドにもチャレンジしてみた方がいいのかな?
そんなことを思うほど、メイドって凄いなと思う俺であった。
前半におけるキーポイント、後の話でかなり関わってきます(予定)
GMごとに役割が存在し、彼女はそういった根幹に関わる部分を司っていました
p.s.
大学が始まろうとする前、わざわざ配布物を受け取りに登校……いや、ネットで配って
作者は三年目なのですが、これまでで一番面倒臭い気が……ほら、ある程度消化してしまったため、好ましい時間に講義が無いんですよ
できるだけ早い時間で済ませたかったのに……全然ダメそうです





