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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
第〇四章 試練の魔王と堕ちる者たち

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04-44 撲滅イベント その22

加筆・修正しました(2020/10/06)

……あの頃は、若かったのさ(黄昏れ)



 ──『哀れな操り人形(ピティドール)』。


 それは、俺が暇潰しで考案した合成武技。

 予め『天魔創糸』を仕込んだ相手に、魔力と精気力を流し込む。


 本来なら抵抗されるのがオチだが、俺には頼もしい仲間(チート)()る。

 そもそも糸である『天魔創糸』、とある神から加護を授かっていた。


 ……蜘蛛神と粘体神。

 いやまあ、前者はともかくどうして後者までとお思いのあなた、ご想像通りですが、今回は両方とも役に立っているんですよ。


 どちらにも共通の効果として付いていた、糸・粘液の生成能力。

 ある程度性質を自分で決められるということで、身力を通しやすくしたのだ。


 粘液が体中に浸透し、内部では魔力と精気力で編んだ糸が蝕んでいく。

 抗うための力すら奪われ、対象はただ哀れな人形と化すのだ。


 ……こらそこ、R18みたいとか言うのは止めなさい。


  □   ◆   □   ◆   □


「か、体が……おい、何をしやがった!」


 全身を鎧で覆い、隙間など存在しない状態で動きを縛られた少年。

 さすがに俺が何かしたと分かったようで、こちらに咆えてくる。


 ……意外と思考能力があるな。

 どうやら自身の怒りの感情を燃やしている間は、それを代償として持っていかせることで意識は保てるみたいだ。


「まずは話をしよう……むっ、鎧越しというのもアレだな。まずは互いに、兜を外すことにしよう」


「そんなことするわけ──なっ!?」


 体を掌握しているので、発動しているすべての闇迅術を解除させることだってできる。

 方法は──意思を縛る魔力の糸を動かし、能力解除の命令を送っただけ。


 ……この際に分かったのだが、どうやら通常の“闇迅鎧”と違って【堕勇者】越しに使うと寄生型っぽくなるらしい。


 精神が不安定かつ俺が解除を促したからなのか、不完全な解除となり、体の部分部分に鎧のパーツが残ってしまっている。


「なんでだ、なんでだよ……答えろ!」


 まあそれでも、鎧の量が減ったからか精神への影響も低下したようだ。

 まあ俺としても、狂った状態ではないコイツ自身に試練を受けてほしいからな。


「落ち着け……深呼吸でもするのだな」


「スー、ハー。スー、ハー。スーーー……っておい、何やらせてんだよ!」


「ふっ、だが冷静になったはずだ……もう演技もいいな。とりあえず、お前の新しい職業は思考を鈍らす。今だけでも、冷静な思考になってもらうぞ」


「……本当だ。俺、今までどうしてあんな過激なことを……」


 深呼吸の際、魔法の効能を直接糸から流し込んでおいた。

 恢復魔法“精神恢復(マインドリカバー)”、名前でどういう効能かは理解できるだろう。


 それでもなお、鎧は外せない。

 一度死に戻りするか、使いこなせるまでは無理だろうな……うん、それはそれで使えるので、そのままにして本題に移ろう。


「さて少年、これから君には罰を受けてもらうことになる」


「罰? なんでだよ」


「精神状態がアレだったとはいえ、数々の言動は問題だった。どれだけ否定しようと、アレは君の本心……剥き出しになった欲望だ」


「まあ……そうだな。たしかにあのとき、俺は欲望のままに本心を語った。だが、それとお前の罰とやらがどう関係するんだ?」


 至極当然、さも不思議そうに訊いてくる。

 俺にはそれを行うだけの理由があるが、そういえばまだ言っていなかったっけ?


「フェ……クースは俺の家族、いや女だな。お前には、この言い方の方が通りやすい。だから、俺のモノに手を出そうとしたお前を許すわけには──」


「許し? そんなもの要らない、クースは俺のモノになる……いや、俺のモノにするんだからな。だいたい、家族って……笑わせないでくれよ。あまりに似てないから兄妹ってこともないし、赤の他人だろ?」


「…………はっ?」


「なのに家族とか……寒い、寒すぎる。わざわざ女とか言い直すのもアレだぞ。お前、人のことをなんだと思ってるんだ?」


 普段の俺なら、そっくりそのまま返すぞ、とかそういうことを言っていただろう。

 しかし、今の俺はそれどころではない……抑えられない想いが、爆発しかけている。


「そもそも、このゲームのタイトルは?」


「……AFO──All Free Online」


「そうだろ、全部が自由(AllFree)な世界(Online)だろ! だから俺がクースをどうこうするのだって、この世界じゃ自由なんだよ。お前はお前で、また新しい女でも見つけろよ。それだって、お前の自由な選択なんだからよ」


 どうしてやろうか……どうにか堪えていた想いが、一気に爆発した。

 少年もだいぶ調子に乗っているのか、ずいぶんと口調が雑になっている。


 ……聞いてもいないのに自慢話を始めた。

 口撃、が効いていると思ったようだ。

 間違ってはいない……俺は今、お前を確実に潰したいと思っているよ。


《スー、周りにこれからやることが分からないように、結界の外側だけを黒くしてくれるか? あっ、ついでに防音も》


《……大丈夫?》


《ああ、俺は大丈夫。心配してくれてありがとうな、スー》


 万が一、運営側がこの状況を把握していても気にされないように、対策をしておく。

 すべてが自由と言っても、それは絶対順守の決まりの中の話。


 奴は俺から奪おうとした、ならば俺も奪おうと構うまい。

 ……お前の尊厳、そしてプライドやら何からナニまで奪い取ってやろう。


「──とりあえず、黙れ」


「っ……!」


「俺がお前の体を支配している、それを忘れていないか? それは物理的に、そして精神的に──存在的にだ」


 指を鳴らし、魔法を発動。

 ポフンッと可愛らしい音と煙が少年を包み込み、仕込んだ魔法の餌食とする。


「きゃっ! ……きゃあ?」


「[アイテムボックス]っと……ほい、鏡」


「ん? 誰だ、この女。結構可愛いじゃ……ちょっと待て、おい、何の冗談だ? まさかこれ──俺、なのか?」


「ずいぶんと可愛くなったもんで。自他ともに認める美少女の誕生ってな」


 少年が少女に、変身魔法の応用である。

 今回は糸伝いにそれを行うことで、その効果をより発揮しやすくしただけ。


 あくまでも、少年の性別が女だったらという話……俺の理想とかは入っていない。

 金髪碧眼、ボブカットの俺っ娘とは、持っているというか盛っているというか。


「いったい、俺に何をしたんだ!」


「さてな。まあ、この世界は(AllFree)何でもあり(Online)なんだろう? せっかくの機会なんだ、楽しんでおけよ」


「ふざけるな、さっさと戻しやがれ!」


 精神まで女性に変質するのではなく、今回は体だけが女性になっている。

 ……その気になればそれもできたのだが、あえて留めておいた。


 ──最初からそうしておいたら、つまらなくなるからな。


「落ち着けよ。俺はただ、少しばかり好いことを教えてやるだけだ」


「……良いこと、だと?」


「そう、好いことだな。ただし──」


 糸を動かし、少年……改め少女の体を十字に広げて固定(はりつけに)する。

 動かない体に、自身の状況を再認識してもらう──哀れな人形なんだよ、お前は。


「男として快楽を貪るんじゃない、お前は弄ばれて悦ぶんだよ。お前が女たちに要求していたことだ、別に構わないだろう?」


「ふざけるな! 俺は、俺は男──ッ!」


「[ステータス]で確認すればどうだ? 嘘偽りない表示が、お前に現実を教えてくれるだろうよ」


「っ……す、[ステータス]!」


 ただの夢でも幻でもない、紛れもない現実なんだと説明する。

 都合よく[ステータス]は、どんな時でも使用者の状態を表す。


「お、女……」


「だから言っただろうに。お前は今、まぎれもない女だ。よかったじゃないか、お前は大好きな女そのものになれたんだからな」


「ち、違……」


「知らねぇよ。いいから、しばらくそのままでいろよ──雑魚が」


 少女はこれまで自分がお世話になってきた[ステータス]で、ようやく認識した。

 ……ちなみにそちらは男のままだが、そこの改変もできるのが変身魔法です。


 要するに絶賛騙され中な少女、だがそこを正さないからこその試練であり……偽善と私怨が混ざった刑の執行だ。


「くそがぁ……んぐっ!」


「おいおい、女の子がそんな口調で叫ぼうとするんじゃない。そろそろ始めるんだ、少し大人しくしてろよ」


「むぐぐぐぐっ!」


「じゃあ、始めるぞ──イ・イ・コ・ト♪」


 抵抗は好きなだけするといい、これもすべては少女たちへの偽善を行うため。

 さてさて、何をしますか……とりあえず、時間は引き延ばしておこう。



『哀れな操り人形』が『完全なる操り人形』だった辺りが、特に

本当、パワーワードに惹かれていますね

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「そもそも、このゲームのタイトルは?」 「……AFO──All Free Online」 「そうだろ、|全部が自由な世界《AllFreeOnline》だろ! だから俺がクースをどうこうするのだって…
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