偽善者と自己紹介 その36
夢現空間 居間
ログを確認したら、いつの間にか知らないアイテムが無数に入っていた。
それらは暫定的に、試練の報酬ということで結論に至る。
なぜか称号も加わっていたし……たぶん、俺にも知らせられないアナウンスが流れたのだろう。
「そこには迷宮核も入っていたから、レンに回したんだが……天体に関するフィールドが構築できるようになったらしい」
「まあ、ということは?」
「惑星型迷宮を、ラントスでも再現できるようになったってことだな。上に星でも並べておいて、飛べる奴は自力で。それじゃないヤツも転移陣で上にある迷宮を目指す……なんてのもいいかもしれないな」
「さすがはメルス様です!」
キラキラした瞳を向けられ、なんとも居た堪れない感覚に包まれる。
咳払いでいったんリセットして、別の話題に切り替えて誤魔化す。
「問題は頼んだ本とは別に入っていた、神代語で書かれている本だ。リュシルに頼んで解読を進めてもらってはいるが、なんだか小難しいらしくて時間が掛かっているみたいだ」
「あの、リュシルさんでもですか?」
「あの、リュシルでもだ。スキルの補正があるにしても、相手は『超越種』がくれた物だからな。貴重な情報が載っている分、読みづらくなっているんだろう」
ちなみに、『星海マニュアル』という名前だったもう一冊の本。
こちらはとても読みやすかった……もしかしたら、何か違いがあるのかもしれない。
「まっ、それはリュシルにお任せしておくとして──そろそろ始めましょうか! 第三十六回クエッションターイムのお時間がやってまいりました! 本日のゲストはこの方──【慈愛】に満ち溢れたガーさんです!」
「ふふっ、よろしくお願いします」
「はい、お願いしますね」
「メルス様からの質問ですので、私も頑張って答えちゃいますよ」
ニッコリと笑みを浮かべるガー。
やはりその純真な笑顔には……どうにも弱い俺であった。
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「問01:あなたの名前は?」
「ガーと申します」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「女性型、出身……身が出たのは終焉の島、二つが異なるため生年月日は分かりません」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「熾天使としての三対の羽、背中まで伸びた濃い黄色の髪と少々光を放っている太陽みたいな瞳、でしょうか?」
「問04:あなたの職業は?」
「『演奏者』です。音楽に関するスキルや行動に補正が入りますよ」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「メルス様とメルス様に関わる皆さまには優しく、それ以外のモノにも多少優しく……といったところでしょうか?」
「それ、あくまでガー自身がそう思っているだけだからな。うちの眷属、人によっては情けとかまったくないし」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「優しくする方々に優しくすること、あとは演奏することが特技でしょうか」
「問07:座右の銘は?」
「一日一善。メルス様の善い働きには遠く及びませんが、私もメルス様の愛すべき民たちに善行を振るいましょう」
「……ぐはぁっ!」
「問08:自分の長所・短所は?」
「慈愛を振る舞うべき相手を選ぶ、それが長所と短所両方なのかもしれません」
「それ、あくまでガー自身(ry」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなことは誰かから感謝されること、嫌いなことは過程のない感謝でしょうか? 理由もなくされても、あまり好ましくは……」
「そ、そうか」
「問10:ストレスの解消法は?」
「演奏をすることです」
「問11:尊敬している人は?」
「メルス様です。それ以上の方を考えることができません──で・き・ま・せ・ん!」
「そ、そうか? なら、それでいいか」
「はい♪」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「あまりこだわりなどはありませんね。メルス様のお手伝いとなるよう、日々善行を行うだけですので」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「大切なもの……メルス様、そしてメルス様の関わるモノすべてが大切でございます」
「問14:あなたの信念は?」
「私自身の信念はそう難しくはありません。生まれた意味──【慈愛】を全うすること、ただそれだけです」
「問15:癖があったら教えてください」
「感情の変化で、少々眼の色に変化が生じてしまいます……メルス様とお揃いですね」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「では……ボケで」
「その心は?」
「メルス様には、ご指摘するようなことはございませんので」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「メルス様が、私たちをお創りなってくれたこと。それが一番です」
「問18:一番困ったことは?」
「その当時は意志を伝えられなかったことです。メルス様への感謝の気持ち、それをお伝えできなかったのですから」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「お酒はあまり……甘酒程度であれば」
「問20:自分を動物に例えると?」
「仲間を思いやることができる、という意味でリカオンで」
「……よく知ってたな」
「メルス様の記憶から、動物に関するものを纏めた本を読みましたので」
「……よく知ってたな、俺」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「そういったものは、あまり……」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「メルス様のお手伝いをできなかった、そういったときによく反省しております」
「うん、今度からはしなくていいからな」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「世界中にメルス様の【慈愛】を届ける、それがわたしの夢です」
「止めて、やらなくていいから」
「そうですか? ではそうしましょう」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「すべてはメルス様のため、そして振る舞うべき慈愛を届けるためのものでしょう」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「ございません」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「今と変わらず、善行をするだけです」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「メルス様の善行とは遠く及ばす、その違いに悩んでしまいます」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「それはございません」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「メルス様のような立派な方に──」
「いい、これ以上言わないで……頼むから」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「メルス様の役に立って死ねる、そうであれば本望です」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「メルス様の恩恵を受けし皆さまへ──その【慈愛】に感謝しましょう」
「宗教!?」
「問32:最後に何か一言」
「いいえ、これは宗教ではありません。愛の伝導でございます」
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「はい、カットー! それ、宗教だろ」
「いえいえ、そうではございませんよ」
宗教と認めてしまえば、何かが起きてしまう気がする……とにかく粘って粘りまくって止めさせることに成功した。
しかし、いつまた同じことをしだすか……ううっ、気を付けておかなければ。
次回は、宣言通り小話を
ただ、ある意味最後の話以外は一貫して迷宮の話となります
p.s.
質問を歓迎している作者です
どんな疑問であれ、問われて答えることで知識は知恵となります
……答えられない質問は、一部を伏字にして出す予定ですし、作者を助けると思ってぜひとも質問してください





