04-25 撲滅イベント その03
加筆・修正しました(2020/05/26)
「──よし、これでいいかな?」
新たなフレンドに[メッセージ]を送り終え、ようやく一息吐けた。
イベントが本格的に始まり、リア充と非リア充たちの闘争が始まる。
俺はフェニという最高の女性(不死鳥)のお陰で、リア充グループの仲間入りをした。
しかし、俺という存在はリア充とは似ても似つかなき非リアそのもの。
装備などで助力はしたものの、やっぱり同朋たちを裏切るわけにはいかない。
そんな篤き意志を胸に、微力ながらお手伝いをしてみることに。
……まあ、それもこれも、フェニが少々やり過ぎていたしまったので、その補填とも言えるけれど。
「“忍法影分身”。(中忍)で得た職業能力がそれでよかった」
忍者系の職業は、就職時にランダムで忍術の習得ができる。
そして、俺が得た忍術の内、一つが便利な分身スキルだった。
分身を二体作成し──片方をリア充グループの補助魔法班へ、もう片方を現在の居場所である上空で待機状態にしておく。
リア充グループでの仕事を終えたら、一度戻して集めてきた経験を還元。
もう片方の分身を動かして、今度は非リア充グループの下へ向かわせた。
まあ、話の流れで俺本体が行かなければならなくなり、もう一つの術──“忍法空蝉”で上手く変わり身を行ったけど。
「あとは俺自身が固有スキルと魔法を重ねて行使。微力ながら、我が同朋たちが有利になるように頑張ってみました」
彼女──キョウカに説明した通り、俺の固有能力で精神を操作した。
そのうえで、“幻惑乃霧”という魔法を使いリア充が絡んでいる幻覚を……。
「我ながら、恐ろしいことをしてしまった。だがすまん、同朋よ。今の俺にはフェニが居るから、むしろやりたいことを見せた」
俺は別に、『ABCD』をしたいわけじゃない……要らないわけではないけど。
俺が求めるのは共に居てくれること、それ以上に求めるのは分不相応というモノ。
とはいえ、理想を語るのは自由だろう。
俺がやりたいと思っていることを見せた結果、彼らはその映像に拒否反応を起こし──あのような無残な結果に。
多少スキルの影響もあるのだが、それでも原因の大半は彼ら自身にある。
狂化した非リア充の憎悪は、その想いに呼応してリア充たちに振るわれるのだ。
「さて、俺も少しぐらい張り切ろうかな? 何もしないと文句言われそうだし……フェニのアレ、やる気出てくるな」
大火力による一撃、それは観戦者に強い刺激を与えたことだろう。
いずれ到達できるだろうという期待、敵を薙ぎ倒していく爽快感……等々。
力という魅力的なモノに惹きつけられ、自身もまたより強い力を求める。
その結果、何かが起こる……かもしれないが、それは個人の自由なのでどうでもいい。
「要するに、俺もやりたくなりました」
バトル系のゲームをやったことがある者ならば、一度は考えたことがあるだろう。
複数いる敵を一気に倒す、無双でも作業でもそれは楽であり快感だ。
俺もまた、そういった人種の人間である。
そして、それを行うだけの力がある……偽善とは己のためにやること、先ほど非リアグループに協力したので、帳尻を合わせよう。
「まずは──水魔法“水球”を浮かべ、そこに光魔法“照準”をセット。これで、第一段階はクリア」
大規模な技には準備が必要なように、俺の創作物知識頼りな魔法にも手順がある。
用意した水の球体は本来の飛ぶような動作はせず、ただ俺が指定した場所で漂う。
そこに、一筋の光が差す。
その効果は必中──次に使う光属性の技は必ず指定したポイントへ届く。
あとは制御を気にしない、威力だけに特化した魔法を放つだけ。
それを補うための“照準”であり、すべてに届かせるための“水球”だ。
「第二段階──“強撃溜込”」
強化魔法“強撃溜込”は、この魔法を発動する際に消費した魔力を次に使う魔法へ重ねて載せられる。
その際、籠めた魔力量に応じて威力が引き上げられるのだ。
俺はありったけの魔力を注ぎ、回復したら最後の魔法を行使する。
「ぶっ飛べ──“陽光線”」
太陽の光が如き、巨大な柱が飛んでいく。
それは水玉の中を通過し、更なる変化をこの場にもたらす。
「オリジナル魔法──『陽光一閃』ッ!!」
水玉は光を屈折させ、真っすぐに飛ぶはずだった軌道は歪む。
そしてそれは、そのまま地面に到達……光は地を這いすべての祈念者を薙いでいく。
真っすぐにしか飛ばない代わりに、強烈な一撃を叩き込む“陽光線”。
そこに科学的アプローチを行い、光を曲げられれば……広範囲に大ダメージが入る。
「アルカもフェニも、凄かったけど……俺が一番だな。いやー、全然ここまでやる気は無かったんだけどなー! まっ、どっちの勢力にも被害が出たから一休みだよな」
減らし過ぎると戦況が大きく揺れ動いてしまうので、殺さないように加減したうえで前線に出ていた全祈念者に攻撃をした。
そうなれば、回復をする必要がある。
祈念者の質で言えば、リア充グループの方が多いだろう……しかし、数は明らかに非リア充グループの方が多い。
そこに補正まで加わっているので、回復する速度も非リア充グループの方が復帰する速度が速くなるはず。
──これで、先制攻撃を行った分の帳尻を合わせられたな。
◆ □ ◆ □ ◆
「……怒られた」
さすがにあの後、叩き掛けるようにエリア全域に魔法を使ったのが不味かった。
それは『魔力色雨』と呼ぶことに決めた魔法で、かなり扱いが難しい代物である。
必要な魔力は1だが、それで生まれるのは雨粒一粒程度の小さな魔力の礫。
だが一度に大量の礫を生み出せるため、魔力がある者ならば膨大な数を発動可能だ。
本来はこの魔法、ただの見た目重視の演出魔法……だって、雨粒一つずつに籠もっているのは、たった1の魔力だし。
しかし、それを食らうのが死にかけの奴らなら話は別である。
回復しようとすると、的確に雨粒が命中して生命力が2以上になることを防ぐ。
逃げようとしても、狙撃術スキルを持っているのである程度補正が加わっている。
対象が多すぎるため、ほぼ確実に雨粒が命中することに。
まあ、その結果全然再開できないと苦情が入ってしまった。
【いいか、ちゃんとやってくれよ!? さすがにお前のポイントも充分溜まったはずだろうからさ!】
「えー、ああはいはい。」
便利な祈念者のシステム[ウィスパー]によって伝えられる、リア充グループの代表者からのクレーム。
しかしまあ、俺も先ほどまでの無双プレイでスッキリしている。
何より飽きてきたので、やっていたことはすべて終了だ。
──そして、飽きたのは俺だけじゃなかったようで。
《ご主人、少しいいだろうか》
「ん、どうしたんだ?」
《なに、少々この現状に飽きてな。周囲も自主性を持って動き始めている……ならば、我もまた動きを見せるべきではないかと》
「……そうだなぁ。フェニが望むなら、俺はそれをやらせてあげたい。フォローはする、好きなだけ暴れてこい!」
実際、フェニを止められる者がこのエリアに居るとは思えない。
俺に殺され続け、骸を燃やし、何度も負けてきた彼女は──すべてを糧に強くなった。
《感謝する、ご主人!》
「ああ、任せておけ。眷属の……好きなヤツの頼みを叶えるのは当然だ」
《ご主人……ああ、ならば我も、ご主人に並びたてる存在だと証明しよう!》
念話は切れ、再び膨大な魔力が山の頂の方から感じられる。
ならば、俺もやるしかない……関係各所への事後報告を。
“○○”はシステムに登録された魔法です
『○○』はその者がノリで創ったオリジナル魔法です
……ただし、それがオリジナル魔法であり続けるとは言っていない





