偽善者と自己紹介 その33
夢現空間 居間
どうやら結晶は届けられたようで、新たな眷属との回路が形成された。
せっかくなので使えるスキルを試してみると──俺が二人に渡したかったスキルが、彼女たちの[能力共有]のリストに表示されていたことに安心する。
「眷属、また増えたな……」
「主様はそれを喜んでおるのだろう?」
「まあ、そうなんだけどな」
「だが、相手は主様の同朋。嫌なのであれば渡さねばよかったであろう」
嫌ではないんだよな。
リオンが眷属に関する細工ができるようになったこともあり、十人ぐらいまでなら新たに眷属にしても問題なかった。
今回、すでに眷属が居る『ユニーク』の二人を眷属にしたのもそれが理由だ。
最初からユウとアルカの影響で情報が掴めないと判明している場所なので、運営神もさほど気にしないだろう。
「たださぁ、眷属になりたいって言うヤツを眷属にすることが正しいことか……少し分からなくてな。こっちの奴らは命の危機があるから、それをやるのも分かる。強くなれば死ななくてもいい」
「だが、奴らは死なぬのだからそれでも構わぬと……それはどうかと思うぞ、主様よ」
「そうなんだよな。俺だって、死ぬのは怖いし可能な限り死なないように抗うぞ? ただやっぱり、何度もやり直せるって点が心のどこかで羨ましいのかもしれない」
「主様は本来、死ねばそのまま終わってしまう身となってしまったからのう」
ログアウトは可能、だが死ねばそのまま二度と現実に帰れない……それが今の俺だ。
まあ、それからすでに一度死んでいるんだが、そのときは不死鳥の能力を行使することでどうにかなったんだよな。
「眷属が増えるってことは、俺が責任を持って守らなければならない奴が増えるってことだ。たとえプレイヤーでも、一つの命なんだから……けど、プレイヤーだからって尻込みする自分が嫌になる」
「本来であれば、死を恐れることは生物の本能。儂も主様にヤられる寸前は、その恐怖というものを見に刻んだものよ」
「……その言い方、どうと思うんだがな」
こいつなりに俺を宥めてくれているとは思うんだが……やっぱり、オチが付いているからか感謝っていう感じにもならない。
それを狙ってのことなんだろうが、だからこそ言いづらいモノだ。
「まあいいか、そろそろ始めよう──第三十三回質問ターイム! 今回のゲストはこちらのお方──世界最強のドラゴンであらせられる『白銀夜龍』ソウさんです!!」
「うむ、よろしくじゃ」
「ではさっそく始めていきましょう──!」
「……のう、雑ではないか?」
放置していると、お前は確実に放送コードに引っかかる単語を言うからだよ。
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「問01:あなたの名前は?」
「ソウである」
「問02:性別、出身地、生年月日は?」
「かつては無性、今は■。出身は空に漂うどこかにある浮島のような場所。生まれ年など覚えておらぬが、かれこれ数千は生きておるじゃろうな……むっ?」
「はいはい、女な」
「問03:自分の身体特徴を描写してください」
「白銀の髪、薄明色の瞳。あとは主様が喜ぶように豊満な胸を付けた妙齢な女子か? どうだ、嬉しいであろう」
「…………ふっ(嘲笑)」
「問04:あなたの職業は?」
「(竜闘士)という、竜系種族のみが持つとされるエネルギーを操るに就いておる」
「問05:自分の性格をできるだけ客観的に描写してください」
「かつては高慢であったが、主様との出会いで従順な■■へ成長したぞ! ……主様、先ほども入ったこの音はいったい」
「はい、次」
「問06:あなたの趣味、特技は?」
「基本は何もせず、主様の世界で言うところの『スローライフ』とやらをやっておる」
「問07:座右の銘は?」
「井の中の蛙大海を知らず、じゃろう。驕っていた儂の性根も、主様の激しい■■で叩き直されたわけじゃからな」
「──次!」
「問08:自分の長所・短所は?」
「長所は主様以外に単独であれば負けぬことで、短所は本来の姿では共闘ができぬということだな。どちらの姿であろうとも、主様であれば乗りこなすことができ──」
「次!」
「問09:好き・嫌いなもの/ことは?」
「好きなモノは主様の■■で、嫌いなモノは儂の時間を無為に邪魔する存在かのう」
「……はあ、もういいや」
「問10:ストレスの解消法は?」
「ストレスを感じるようなことはあまりないのだが……こう、息吹を一発放てばスッキリとするな」
「問11:尊敬している人は?」
「主様を除けば、アイリスであろうか。あの娘は、儂に新たな知恵を授けてくれた」
「…………アイツのせいか。最近手管が巧妙になってきたのは」
「善い師匠であろう?」
「問12:何かこだわりがあるもの/ことがあるならどうぞ」
「やはり、主様との交流の仕方であろうか。先ほどもそうだが、主様は儂がナニをしてほしいかを瞬時に読み取りおる。口調や仕草でそれを訴える……それが重要じゃ」
「問13:この世で一番大切なものは?」
「主様、そしてその眷属ぐらいは世界を相手にしてでも守り抜いてやろう」
「問14:あなたの信念は?」
「先に同じじゃ」
「問15:癖があったら教えてください」
「癖……こう、好きな■■■とか──」
「言わんでいい。癖は癖でも性癖だろ!」
「問16:ボケですか? ツッコミですか?」
「ツッコ──ミと言いたいところじゃが、主様の視線が気持ち好……ではなく鋭いのでボケと答えておこう」
「問17:一番嬉しかったことは?」
「主様と出会えたことじゃ」
「問18:一番困ったことは?」
「その喜びに気づく前、なかなか消えぬ主様に困ったものよ。あと、時々■■いに行っても応えてくれぬ主様じゃ」
「ヤらん! ……こっちじゃ」
「問19:お酒、飲めますか? また、もし好きなお酒の銘柄があればそれもどうぞ」
「主様が作ってくれた、銀龍酒とやらは気に入ったぞ。いったいどうやって作っておるんじゃったか?」
「お前の鱗とかをちょいちょいっと錬金で加工して酒樽にしているんだ。その魔力に晒された酒は、勝手に旨くなるって寸法だな」
「問20:自分を動物に例えると?」
「動物? やはり竜種は竜以外の何物にもならぬであろう」
「問21:あだ名、もしくは『陰で自分はこう呼ばれてるらしい』というのがあればどうぞ」
「主様がよくドM銀龍だと言うのは……ハァハァ、知っておるぞ」
「……[グレイプニル]、『縛れ』」
「問22:自分の中で反省しなければならない行動があればどうぞ」
「主様に出会ったとき、ただ考えもせずに排除しようとした愚行であろう。まさか、このように儂を満足させてくれるとは……! 素晴らしい束縛じゃ!」
「問23:あなたの野望、もしくは夢について一言」
「いずれ主様の従順なる■■となり、主様を悩ますすべてを終わらせることじゃな」
「……殺すなよ」
「安心するがよい、終わらせるだけじゃ」
「それが心配なんだよ」
「問24:自分の人生、どう思いますか?」
「まさに主様との愛しき時間のため、強くなり他の眷属よりもそれを多く得るためのものだったのじゃろう」
「問25:戻ってやり直したい過去があればどうぞ」
「今よりもっと強くなり、主様以外の誰にも負けぬ力を得ておきたいのう」
「……いや、それだと俺が勝てないからな」
「問26:あと一週間で世界が無くなるとしたらどうしますか?」
「世界ぐらい主様がなんとかするじゃろう」
「問27:何か悩み事はありますか?」
「主様の■■がとても心地よく、つい果ててしまうことじゃろうか?」
「おい、そういうの止めてくれよ! なんか俺も同類みたいだろ!」
「問28:死にたいと思ったことはありますか?」
「主様と出会う前までは、時折退屈すぎる時間の中で思っていたな」
「問29:生まれ変わるなら何に(どんな人に)なりたい?」
「主様と同じ世界で、より痛みを味わえる肉体を得て……願わくば──!」
「以降、すべてが引っ掛かるためカットだ」
「問30:理想の死に方があればどうぞ」
「主様との逢瀬の中であれば、いつ死んでも構わぬよ」
「いっしょに居てもらうぞ、ソウ。死んでもいいというなら、その命を俺に寄越していつまでも俺とあれ」
「……時折そのような不意打ちをするから、主様はズルいのじゃ」
「問31:何でもいいし誰にでもいいので、何か言いたいことがあればどうぞ」
「そうじゃなあ……主様、儂は主様を認めておるし、何も否定せぬよ。どのような選択であれ、ずっと傍に在り続けよう」
「問32:最後に何か一言」
「なればこそ──再び褥を共に……」
「はい、放送コード」
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「カット! ……いやまあ、オチとしてはよかったけどな。いささか急すぎだったろ」
「そう、じゃな。じゃが、主様への想いは儂だけのもの。あのような場ではなく、ここで伝えたいではないか」
「……そ、そうか」
「うむ、永久を共に生きよう──主様」
荒い息を上げるでも、恍惚とした表情を浮かべるでもない……そこにはただ恥ずかしそうに、想いを伝える一人の女性が居た。
次回からは予告通り、赤色の迷宮へ向かいます
これは、最後のカギを求める戦い
理に抗う者、手を伸ばす者、見守る(?)者……そして目覚める──選ばれし者
p.s.
これでテストは最終日! ……なのに、必修科目の補講が残っている作者です
友人たちが解放感に包まれている中、定まっている予定の面倒臭さに溜息を零しています
まあ、それでもテストが最後なので……とりあえず頑張ってきますよ





