04-11 撲滅イベント前哨戦 その03
加筆・修正しました(2020/02/18)
ユウに連れてこられた先、そこに魔法チームのリーダー──つまり、『ユニーク』に所属する三人の少女たちが集まっていた。
物凄く嫌な予感しかしない……が、俺に選択する権利など存在しないため、黙ってついていくことを選んだ。
「お待たせー。いろいろと手間取っちゃってて……あっ、でも、収穫はあるんだよ!」
「いいえ、構いませんよ。予定の時刻まで、まだ時間はありますし」
「ええ、まったく問題は……あら?」
「ちょっと、ユウ。なんで一人連れてきているのよ……というか、こいつは誰なのよ」
一回自己紹介をしたはずなんだがな。
まあ、アルカが気づいていないようで一安心である……ユウ、小刻みに揺れるな笑っているのがバレるぞ。
だがまあ、忘れられているなら名前を言う必要があるか。
偽名を強く印象付けて、ユウにも告げないことを暗喩させることにしよう。
「えっと、私は──」
「ノゾムさん、でしたね。強化魔法を使うということで、ユウの班に行きましたが……」
自己紹介のときに言っていたが、まさかモブ一人を覚えているとは……。
これがいわゆる、委員長タイプというヤツなんだろうか?
それは純粋に凄いと思うが、今回ばかりは厄介な相手となる。
彼女──ノロジーは、どうやらまだ何かを疑っているようで……。
「ユウ。何か、特別なスキルを隠していたのですか? それとも……他に理由が?」
「うん、それ言いたくてここに来たんだ。とりあえず、この[スクリーンショット]を見て。彼が強化魔法を使ったとき、そのバフが乗った能力値を映しているから」
ユウへ施したバフを、どうやら予め記録してあったらしい。
俺のバフは前線に出されるよう、短時間だがそれなりの補正が入るような設定だ。
──ちなみに、魔法も発動直前にバフが掛かっていればいいんだけど。
ただ、魔法を強化する魔法ってあんまりないようだ……だからこそ希少なんだが。
というわけで、普通に前線向きの魔法を選び使ったわけだが……おやおや、彼女たちの表情がなんだか驚愕めいたものに。
「この増加量……ただ普通に強化魔法を使うだけじゃ起こせない量ですね」
「そうなのですか? では、この方にナックルさんなどの前線の方へ魔法を施していただけたら、一騎当千……ということになるのでしょうか?」
「セイラ……さすがにそれは無いわ。使える回数も再使用時間もあるし、何度もやれば相手から誰が使っているかバレる。……けど、本当に異常な強化量ね。もしかして──アンタも固有のスキルか能力を持っているの?」
どストレートに訊かれた問題。
ユウはやはりニヤニヤと……だから、やるならちゃんと隠してくれよ。
しかしながら、何も言っていないのでもう少し隠しておいてもいいみたいだ。
ただ、なんとなく全部を嘘で塗り固めていてはバレる気がするので──
「……はい、お恥ずかしながら実は。詳しくは言えませんが、(自分の能力とは別に)魔法の効果を強化させる(という聖武具の)能力です(……別に使っていないけど)」
所々、思考加速スキルで意識して口にしない発言を用い、完全な嘘とも言いがたい言い方に成功する。
スキルや魔法の中には嘘を暴くモノもあるし、意味が無さそうでもやっておきたい。
「ふーん、まあまあやるのね。なら、このイベントが終わったらギルドに入りなさいよ」
「すみませんが、知り合いといっしょに結成することを約束していますので……」
これも嘘ではない、本当のことだ。
メンバーが足りていないこと、約束ではなくほぼ命令(する側)だったこと以外は。
「せっかくアンタの強化魔法の倍率の高さ、その秘密の一端でも分かれば成長に繋がったかもしれないのに……まだ届かないわね」
「うふふっ。本当にアルカさんは『模倣者』さんが好きなのですね」
「んなっ……!? ば、バカなことを言わないでちょうだい! だ、誰があんなヤツのことを……わ、私はただ、アイツにギャフンと言わせるぐらい強くなりたい……ただそれだけなんだからね!」
「……だってさ、ノ・ゾ・ムさん?」
ユウ、俺に振るんじゃありませんよ。
闘技大会のことを思い返せば……たしかに俺が悪かった部分もあったかもしれない。
あのときは便利なスキルへの渇望に負けていたし、スキル剥奪という脅しもあったからこそ参加した……しかし、無双をする必要はどこにも無かったわけで。
むしろ人にむやみやたらに触れたり、魔物であるリョクを嗾けて殺したり……現実だったら、間違いなく犯罪者確定だよ、うん。
「──それで、ユウはノゾムさんを連れてきて何をさせたいのかしら?」
「フレンド登録をしてほしいんだ。実は……彼、全然フレンドがいないみたいで」
俺を見る視線が、ひどく不憫な者を見るような視線になっていた。
……いないって、それでもお前を含めて四人は登録されているんだぞ。
そもそもフレンド……というより、友達を俺は量ではなく質で決めているんだ。
こっちでだって、そういうところは帰る気は無かったが……多くても困りはしないか。
申請が三人から届いて来たので、それぞれの申請を了承しておく。
ただまあ、俺は知らなかったんだよな……それで発覚してしまう、とある事実を。
「「「…………」」」
「あーあ、やっちゃったー」
「……何を、ですかね?」
「これまでできた[フレンド]には、きっと教えていたんだよね。だ・け・ど、これで仕返しができたかな? 教えておくけど、登録した相手の本名が出るんだよ……つまり、名前を隠しても意味が無いってこと」
停止、一瞬思考を忘れてしまう。
だが何もしないままではダメだと、すぐに頭を巡らせて……自分の中で認識を少しずつ咀嚼していく。
「仕返しって……」
「さすがにね、僕も性別を間違えられていたなんてショックだったよ。けど、僕独りじゃさすがにいいアイデアも浮かばなかったし、いっそのことアルカに助けてもらおっかなって……ダメだった?」
「──いいえ。けど、どうせだったら私たちにも教えておいてほしかったわね。……ノゾムさん、じゃなくてメルスさんね。どうして名前を隠していたのかしら?」
何やらプルプルと震えているアルカに代わり、答えたのはノロジーだった。
どうやら本当に名前はバレたようだな……他に何が漏れるのか、あとで調べないと。
その前に、この状況から逃れなければ。
高速思考や並列思考、それに並列行動を起動させて考えを練り上げておく。
「ふっ、そこは私が悪かったようです……と演じるのも止めておく。偽名を使って悪かった、たしかに俺は名前を隠していた。けど、それの何が悪いんだ? 犯罪はユウの態度で分かる通り、何もしていないんだが?」
「それは……たしかにそうね」
別に問題など最初から無いのだ。
ただの一般祈念者、それが彼女たちから見ることのできる俺の真実なのだから。
「ハァ……約束は約束、そこはちゃんと守るつもりだ。イベントには参加したいからな、反故にはしない。それでユウ、次に俺は何をすればいいんだ?」
「みんな、彼ってそこまで悪い人じゃないからね……それを証明するためにも、みんなとPvPをやってほしいんだ」
「……それが理由か?」
「ううん、面白そうだから」
……面倒ではあるが、仕方ない。
模倣をさせてもらうお代とでも考えて、やらせてもらうことにしようか。
「し、仕方ないなー。けど、本気でいくし、本気で来てもらうぞー」
「……はぁ」
ユウに冷たい目で見られてしまいました。
あっ、そういえば勘付かれていたっけ?





