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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者なしの捜索劇 十六月目

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偽善者なしの赫炎の塔 その14

昭和の日記念 連続更新二話目です


今話の主要人物

アリィ :最強殺し、擬似二重人格者、少し抜けている

アリス :もう一人のアリィ、冷静沈着、理想のアリィ

アイリス:転生者、異世界人、創作物オタク




 玄武の間


「なんだか不思議な場所だね」


 草木の生えない真っ新な山々に、水だけが流れる世界。

 アリィはそんな場所でただ一人、この世界の主を探していた。


「そう思わない、アリス?」


 いや、一人ではあるが独りではない。

 彼女が訊ねると、意識もせずに勝手に口が動きだす。


「アリィの言う通りね。情報通りなら、玄武は水の神。あとは後世の誤った情報が伝わって、土の担当でもあるはず。だから木は担当できなくて、こうなったのだと思うわ」


「さすがアリス。アリィの分からないことまで分かっているんだ」


「アリィの知らないことはアリスも知らないわよ。ただ、アリスの方が思慮深いだけよ」


「むぅ……アリィの方がバカって言われている気がするんだけど」


 一人二役、異なる精神が一つの体に宿り交互に口を動かす。

 だが、まったく異なる魂というわけではない──二人は一人なのだ。


「アリィがバカならアリスもバカよ。それより、そろそろ出てきたらどう?」


『──気づいておったか』

『あらあら、元気な子ね』


 現れたのは真っ黒な亀だった。

 しかし、臀部から伸びるのははただの尻尾ではなく──知性的な瞳を持つ蛇である。


「初めまして。アリィの名前はアリィで」

「アリスの名はアリスよ」


『そうかそうか。儂は玄武』

『そして私は玄冥よ』


 アリィたちは同じ口を、玄武たちは異なる口を動かし同じ肉体から声を発した。

 どうやら、似た者同士の二組なようだ。


「さっそくだけど、たぶん持っていると思う鍵が欲しいんだけど」

「何か条件があるなら満たすわよ。こっちもそれなりに強いからね」


『あらあら、本当に元気な子。いいわ、さっそく試練を用意してあげるわ』

『儂らの試練は選べるぞ。儂と妻、どちらかの課題を満たすだけで合格じゃ』


 彼らは一対の存在。

 故にどちらかが求める条件を満たせば、自動的に合格ということになっていた。


『儂の試練は武神の試練──つまり、儂らと闘い満足させることじゃ』

『私の試練は……そうねぇ、闘い以外のことで私たちを満足させることね』


「いろいろと気になるんだけど、つまり勝てばいいってことだよね?」

「そうみたいね。おまけに言えば、アリスたちには好都合な試練みたいね」


 二人はそう言って、玄武たちに向き合う。

 いつの間にか手には札が握られ、玄武たちはそこに秘められた魔力に警戒する。


『ふむ、ではどちらを選ぶのじゃ? 儂の試練──武神の試練か』

『私の試練──楽しませてくれるのか』

『のぅ、何か名前を付けんかのぅ?』

『と、言われましても……なかなかピッタリなものが見つからないんですよ』


 玄武たちの穏やかな会話は続いた。

 しかし、アリィたちは選択する──その辺かに彼らの会話は中断される。


「アリィたちは闘う」

「アリスたちは楽しませる」


「「ねぇ、いっしょに遊ばない?」」


 辺りに散らばった無数の伏せ札。

 それが、彼女たちの答えだった。


  ◆   □   ◆   □   ◆


 朱雀の間


 真っ赤に染まった朱色の世界。

 至る所に炎が燈っており、空気までもが高音を帯びているため、吸い込んだ空気が侵入者を内部から痛めつける。


「はい──クーラードリンク~(濁声)」


 取りだした飲料水を口に含むと、爽やかな味が体を駆け巡り──肉体が感じていた熱への辛さはすべて解消された。


「いやー、やっぱり熱い場所にはこれに限るよ。ねぇねぇ、そう思わない朱雀ん?」


『朱雀ん、とはいったい何のこと?』


 甘く詩人のように滑らかな声が、アイリスにそう尋ねる。

 炎が渦のように螺旋を描くと、中から朱色と五色で彩られてたライチョウのような鳥が出現した。


「愛称だよ、愛称。そんなことより朱雀ん、ここを出るにはどうすればいい?」


『鍵が欲しいのであれば試練を乗り越えるか私を倒す。そうでないなら、そこの扉か出ていくといい』


「鍵は欲しいからなー。よし、じゃあ試練を受ける方にしておくよ」


 アイリスがそう言うと、朱雀はコクリと頷き周囲に炎の檻を生みだす。


『そうか。では、試練を始めよう』


「なんだかわくわくするよ。それで朱雀ん、どんな試練なの?」


『…………さて、どうするか』


「決めてなかったの?」


 朱雀は試練を定めていなかった。

 それは一体の四獣を除いてすべてに当て嵌まることだったのだが、朱雀に関してはどういったことをしたいのか、それすらも定めないでいたのだ。


「なら、ワタシが提案するからそれでよかったらそれを試練にしてみない?」


『むぅ、今のままでは試練をせずに鍵を渡そうとも考えていたのだが……そうしたいのであれば、そうしようではないか』


「えー、それならそれでよかったんだけど。まあ、いいや。なら、こんなのはどう?」


 そう言って、アイリスはいくつか試練の内容候補を提示していく。

 初めは首を横に振ることが多かった朱雀であったが、少しずつ納得しかけることが多くなっていき……最終的に首を縦に振った。


『それで了承しよう。だが、本当にそれでいいのか?』


「ふふん、できるからこそやるんだよ。たとえ少しぐらい難しくても、だからこその試練と思えることが大切なんだ」


『そういうものなのか……いや、そうだな。その覚悟、試させてもらおう』


「さぁ、かかってこいやー!」


 そして、朱雀の間でも試練が始まる。



次回更新は12:00となります

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