偽善者なしの赫炎の塔 その09
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話数が多い利点……ですね
リュシルが語った通り、メンバーは入れ替わり制のため一日目の者たちはすでに帰還をしている。
代わりのメンバーが来たのは、リュシルとリュナ、シュカが出発の準備を整えた頃だ。
「──と、いうわけでシュカさんです。とりあえず、いっしょに上を目指します」
「アイツはなんて言ってたんだ?」
「私のやりたいように、とのことです。さすがにそこまで口出ししてきませんよ」
「ふーん、過保護なクセになー」
その中の一人、小柄な黒森人の少女はそう言ってからシュカと向き合う。
「俺はカナタ、よろしくな」
「よ、よろしく頼む」
「面倒臭ぇし、敬語とかは要らねぇぞ。シュカだったな、こっちこそよろしく」
握手を交わす二人。
ズカズカと迫ってくる──男のような振る舞いを取るカナタを、不思議とシュカは嫌いにはなれなかった。
「次はぼくかな? ぼくはターリア、リアって気安く呼んでほしいよ」
銀色の髪を靡かせる、王子様風の恰好をした少女。
カナタが無邪気な少年のような振る舞いなのであれば、彼女は貴公子のような動きを魅せてシュカの手を優しく掴む。
「ひゃっ!」
「ふふっ、そんなに固くならないで。ゆっくりと深呼吸をしなよ」
意味もなく近づき、耳元で囁く。
箱入りだったために経験の少ない彼女は、そういったことには慣れていないのだ。
顔を赤くするシュカをからかうように、もう一息……吹きかけようとしたところで、ゴチンと痛々しい音が響き渡る。
「痛ッ!」
「……我が王の評判が下がるようなことをなさらぬように。シュカ嬢、私の名はドゥル。短い間となりますが、共に頑張りましょう」
青空のように澄んだ青色の鎧を纏う、騎士のような少女。
彼女の手はリアの脳天に叩き込まれ、小さなたんこぶを生みだしていた。
「ううっ、ひどいじゃないかドゥル」
「リア殿下、私は我が王より報告の命を受けております。あまりに目に余る行動を取るのであれば……」
キラリ、と濃藍色の瞳を向けるドゥル。
リアもその意味が分かっているのか、やれやれと言ったポーズを取ってから離れた。
「どうですか、シュカさん?」
「どう、と言われても……自己主張の強い者たちなのだな」
「いいんですよ、『変な人たち』と言っていただいても。みんな、自覚はありますので」
そうでなければ、そうあったからこそ。
彼女たちは、一つの要を中心として関係が築かれている。
──これまで歩んできたもの、歩もうとするものを否定することはないのだ。
◆ □ ◆ □ ◆
「では、行きましょう」
三階層へ続く螺旋階段、その途中に鍵穴のある結界が展開されていた。
リュシルは昨夜の内に修復した鍵を取りだすと、そこに鍵を突きだして捻る。
すると、結界は分解されて消失。
三階層へ向かうことができるようになる。
「リュナさん、ここより先についてはご存知ないんですよね?」
「……すみません」
「いえいえ、ただこれからどうするかを確認しておきたくて。シュカさんもですが、よければ外までお送りしますよ?」
リュナが依頼されていたのは、あくまで二階層まで。
それ以降は自己判断でいつでも降りることが可能で、その場合はリュシルが時空魔法で紅蓮都市に送還する予定だった。
「シュカさんはどこに住んでいるのか、その座標が分かりませんので……」
「ちょ、ちょっと待ってほしい──いっしょに上を目指すのではないのか!?」
先ほどの言葉と矛盾した発言だった。
しかし、リュシルは冷静に言葉を返す。
「これより先は危険であるうえ、リュナさんはいっしょに行かないかもしれません。それでも行く理由があるのですか?」
「そ、それは……そうだが……」
「何があるか分かりません。命を投げ打つこともないんですし、リュナさんと共に紅蓮都市に行ってみてはどうでしょうか?」
「…………」
チラリとリュナの方を見るシュカ。
この答えは、リュナの答えを聞いてからでもよかった。
しかし、それよりも先にリュシルに話すべきだと心が叫ぶ。
自分を『仲間』だと、そう言ってくれた彼女に思いを伝えるのだと。
「私は、私個人としてリュシルたちを手伝いたい。それでは……ダメだろうか?」
「死ぬ、かもしれませんよ?」
「それはリュシルたちも同じはずだ。覚悟はできている、それはリュナを探すと決めた時から定まっているのだから」
「そうですか……」
実際のところ、二人が背負うリスクはまったく異なる。
しかし、シュカの思いを否定することはできなかった。
「先に訊いておきましょう──リュナさん、あなたはどうしたいですか?」
「……行く」
「シュカさんにも言いましたが、死ぬかもしれませんよ?」
「それでも。足手まといになるなら、帰る」
リュナは彼女たちの真の力を知っている。
本来であれば、塔などたった一日のうちで踏破することができると。
だからこそ、喰らい付こうとはしない……あくまでこうありたいと告げるだけだ。
「なあ、リュシル。これっていちいち気にすることなのか? 普通に頼んであの……たしか指輪だかを借りればいいんじゃねぇか?」
「そ、それはそうなんですけど……やっぱりこう、私たちだけでやると言った手前、そういうことを頼むのはどうにも……」
「ふーん、まあいいけどよぉ。どうせ──先にドゥルが頼んでるし」
「ドゥルさん!?」
リュナとシュカは顔を見合わせ、どうやら大丈夫そうだと笑い合う。
なぜならドゥルの手には、二つの指輪が載せられていたから。
人物の紹介は前回と同じシステムでやっていきます
今回は全員登場していますので、隠す必要がありませんね
p.s.
激しい頭痛に苛まれる作者です
とあるなろう小説を読んで、NTRについて考えてました……そのせいでしょうか?
いずれはエッセイで書いてみたい題材ですが、当作品を読んでいる読者の皆さまは非処女ヒロインを肯定できるでしょうか?
偽善、という観点から見ると実に話が膨らむんですよね……というわけで、ぜひご意見をお願いします





