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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
第〇四章 試練の魔王と堕ちる者たち

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04-06 フェニ その04

加筆・修正しました(2020/01/14)

微糖? レベルかと

そうできていたのなら、ぜひともご連絡ください



 拝啓、眷族の皆さま。

 いかがお過ごしでしょうか?

 俺は今……地面を転がっています。

 敬具。


「あー、あぁーーー! アァーーーッ!?」


 複雑な思いに心を突き動かされ、ただただ延々と地面をゴロゴロと。

 こういうときにこそ発動してほしい{感情}も、俺の精神を安定させてはくれない。


 そりゃそうだ──先ほどまで仕事をしていたのだから、それは普通に判断された。


「俺は……俺はフェニに……」


 はっちゃけた、ありえないほどに。

 告白した、物凄く自信満々に……しかも、ストレートに女としてとかほざきやがった!


 自分の言ったことはバッチリ覚えている。

 要するに俺の一部分が表層に出て、普段奥深くに仕舞ってある想いを全部ぶちまけたということなんだろう。


 だが、だがしかし……バラすんじゃねぇ!

 言うにしても言いようがあるだろうに、まるで俺が寂しがっているみたいに言って保護欲を煽ろうとするな!


「そんなんでフェニが同情するわけ──」


「その通り、我はご主人に同情などしない」


 ピシッと、これまで勝手に動いていた体が硬直してしまう。

 そして、錆びついたブリキ人形のような挙動で動かした首の先には……フェニが映る。


「フェ、フェニ……あれはだな、その──」


「ご主人、ご主人の口から言ってほしい。我は……ご主人の求める何かになれるのか?」


「! あ、ああ。ちょ、ちょっと待ってくれないか? 少し、心を整理するから……」


「ダメ、と言ったら? なんでも、人は考えない時の方が正直になるという。今のご主人であれば、素直な自分を出せるのでは?」


 ……たしかに、{感情}は俺のクレームに今さら反応したからか少しずつ起動していた。

 残された時間もそう長くはない、フェニの言う通りにした方がいいかもしれない。


 なんとなくだが、そう考えるように先ほどまで俺を突き動かしていた衝動が思いを揺さぶっている気もするが……フェニへの想いは大切なので、そのまま乗ることに。


「お、俺は! ……フェニが好きだ。俺の、家族になってほしい」


「……うん」


「不死鳥だったときから、好ましい性格だと思っていた。人化した姿は、とっても美人だと思った。つまり今のフェニは、俺にとって最高の美女ってことだ。……だから、愛したい。そして、愛してもらいたい!」


「ご主人……ご主人!」


 俺としてはそこまで深いことを言った覚えはない……ただただ、自己満足な想いを吐露してしまっただけ。


 だが、フェニには何か異なる見解があったのだろうか。

 感極まった彼女に抱き着かれ、俺の体は完全に硬直する。


 そして、その瞬間{感情}が再起動を果たして俺の思考をクリーンなものにしていく。

 高まっていた恥じらいの思いは、いつも通りのモブ思考となった。


「……悪いな、フェニ。今の俺の心情は、たぶんフェニの望んだモノじゃない」


「具体的には?」


「嬉しい、けど呼吸の邪魔」


「嬉しいと思ってもらえるだけ、我は喜べるが……仕方ない、離れるとしよう」


 心底残念そうに、フェニは俺から離れる。

 嬉しそうなのは俺も喜ばしいし、先ほどまで感じた柔らかな二つの感覚もとっても気持ち良かったんだけどな。


 ただそれ以上に、自分の命を優先するモブとしての思考が回っていた。

 主人公とかだったら、そのまま顔を埋めて気絶とかしそうだけど。


「そうだ! ご主人、ご主人のそれを我に嵌めてはもらえないだろうか?」


「い、今か!? 冷静になっていると、自分がどんだけ難易度の高いことをやっていたかとビクビクするんだが……」


「むっ、何を言うか。ご主人に限り、我の攻略難易度はいーじーだ。いつでもうぇるかむで、枕はいえす……らしい」


「誰から聞いたんだよ……って、知識だったな。ああそうか、俺が悪いんだな」


 眷族には俺の世界の情報をちょくちょく漏らしているし、グーなんかは何やら特殊な方法で俺の忘れていることすら解析して知識を集めているらしいし。


 同じ眷族なんだから、そういう方面の情報なら教えてもらったのかもしれない。

 レンとグーなんかは繋がっているし、レンも一枚噛んでいるかもな。


 ……というかやっぱり、冷静だったな。

 現実でもしあったら、それはそれで違和感しかないが……普通、嬉しいとかそういう思いよりも先に驚愕するだろうに。


 思考は先ほどのことをすでに忘れ、自身が持つ指輪について考えている。

 フェニも喜んでくれるのだから、ぜひとも嵌めよう……とな。


「そう……だな。うん、分かった。こんな俺からのプレゼントでいいなら、受け取ってもらえるか、フェニ?」


「! も、もともと我が望んだモノ。願ってもない……ん」


 差し出された手にそっと触れる。

 不死鳥である彼女だからか、その肌は少し温かくずっと握っていた温もりを感じた、


 だがいつまでもそうしてはいられない……というか、俺もフェニも恥ずかしい。

 スッと指輪を取りだし、まずは人指し指に嵌め──ようとして、バチッと弾かれる。


「……ご主人?」


「この指輪はな。お節介が掛かっている」


「お節介?」


「ああ。端折って要点だけ纏めると、左手の薬指にしか嵌められない」


 初めは薬指? と不思議そうな顔をしていたが、その知識をすでに持っていたのか……何かに気づいたような顔をした後、フェニの顔がポッと赤くなった。


 そして、何やら覚悟を決めた表情で──左手を再び差し出してくる。


「…………」


「えっ、マジで?」


「は、早くしてほしい……我も、恥じらう感情ぐらい持ち合わせている」


「あ、ああ……」


 嵌める場所を例の場所にした途端、先ほどの障壁みたいなものは無くなり、指の先に指輪が触れた。


 一瞬ビクッとしたフェニに少し引き攣った笑みを浮かべ、震える指で指輪を通す。

 奥まで入ったそれは、その瞬間眩い光を放ち──これまで以上に蒼玉色の輝きを放つ。


「綺麗だな、フェニ」


「…………」


「フェ、フェニ?」


「ご主人……もう我慢できない。もっと、ご主人を……求めてもよいだろうか?」


 そう言うと、瞳を閉じて何かを祈るように手と手を絡ませる。

 その顔は紅潮しており、俺の顔にも自然と熱が灯ったように思えた。


 ──上げ膳据え膳、出たからには男として頂くべきなんだろう。


 モブに……いや、俺にできる最高の答えを返すべく、彼女の顔に近づき──そして、アレがすべてを台無しにした。



未遂? ですね

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