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【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者なしの捜索劇 十六月目

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偽善者なしの赫炎の塔 その01

新章突入!

これは、生き別れた友を探す物語……だったりしなかったり



 赤色の世界。

 とある少年が広めたその世界の識別名(なまえ)は、海までもが炎を宿すことが所以であった。

 空は海の色を映し赤く照っており、地上に生える木々もまた葉に火を燈している。


「ここが……『赫炎の塔』……」


 そんな世界に、螺旋状に捻じれた巨大な塔が存在していた。

 大陸ではない、海の中から入ることができる特殊な結界の中にである。


 その者はこの日のために用意した魔道具を使い、彼の地にやって来た。

 ある悲願を叶えるため、すべてを投げ打ってでもこの塔に住まう者に会うために。


「凄い、海の中だなんて思えない……」


 塔を囲むその空間には、海の中なのに空気が確保されていた。

 それだけではない、地上の動植物が無数に生息しているうえ、燃えるような空が投影されているのだ。


「これが『賢者』の力……間違いない」


 塔の主は『賢者』と呼ばれる者。

 その知識はこの世界に住まう誰よりも豊富だとされており、『賢者』が知らないことは世界中の誰も知らないとされている。


 この空間もまた、『賢者』が知識とそれを基に手に入れた力を用いて創られた場所。

 小さな世界を創造し、生命を生みだす術を彼の者は見つけだしていた。


「きっと、ここにいるはず。待ってて、すぐに逢いに行くから」


 ゴクリと息を呑み、前に進む。

 扉の無い塔の入り口、その者は塔の中から漏れ出る空気を感じて足を止めた。


「──『リュナ』」


 僅かに足りなかった勇気を、友人の名で自らを鼓舞して手に入れる。

 再び会う光景を夢見て、その者は塔の中へと入っていく。






 塔の中は吹き抜けであった。

 外観通り階段もまた螺旋状、階層を示すように時折地面と水平な場所が存在する。


 同様に、扉がいくつも設置されていた。

 すべてが同じデザインのもので、どのような目的の場所かは開けなければ判らない。


「こ、このどこかにリュナが……」


 その者は扉の多さに意識が遠退きかけたものの、逢いたい者を思い返しすぐに捜索を開始する。

 叫び回ることは許されない、その者が集めた情報の中にはそれが厳重に書かれていた。



『──賢者を追いし者、彼の者を怒らせること無かれ。眠りを妨げし者には、永劫の苦しみがもたらされるだろう』



 また、『賢者』はとても気難しく声にも敏感だとその情報元には記されている。

 そのため、なるべく騒ぎ立てずに行動することが求められた。


「仕方ない、一つ一つ探っていくか」


 危険なのは百も承知、その者はまずもっとも近くに在った扉に手を伸ばす。

 ドアノブを握り、ゆっくりと後ろに引く。


「…………これは、草なのか?」


 開いた先──そこに広がるのは草原。。

 しかしその者は、それが草原なのかどうかが理解できずにいる。


燃えていない(・・・・・・)……どういうことだ?」


 赤色の世界にとって、自然に生えている植物は必ず火を燈しているもの。

 そこに住まう人々にとって、それが普通であり当然の事象なのだ。


 しかし、広がる草原に生えた植物は一つとして火を燈していない。

 まるで別世界のように、異なる理が働いているかのように緑の草々が生えていた。


「! 魔物がいるのか!」


 その者は目の前の光景に驚いていた意識をすぐに切り替え、自身の警戒網に引っかかった魔物が居る方向へ武器を構える。

 ガサガサと草をかき分け、ソレはその者の前に姿を現す。


「ッ……! また知っているものと違う」


 それはとある世界において、魔子鬼(デミゴブリン)と呼ばれる魔物だ。


 だが、そのことをその者は知らない。

 その者が知るゴブリンという魔物は、緑色ではなく赤色の皮膚だからだ。


『『『『GUGYAAA!』』』』


「魔物であることは変わらない。ならば、倒すしかない」


 その者は所持していた武具──大弓と矢を握り締め、ゴブリンとの戦闘を始める。

 耳を澄まし鼻を鳴らし、相手の気配をより深く読み取って弓を構えた。


「──シッ!」


 一呼吸おいて射られた矢は、ゴブリンの脳天に命中して命を奪う。

 放った直後に二の矢を構え、その後方を走るゴブリンの心臓を貫く。


 残った二匹は突然動かなくなった同胞を無視し、獲物であるその者を狙う。

 分かっていたのか、その者はヒラリと跳躍してゴブリンから距離を取る。


 獲物を見失ったゴブリンたちは、その場に立ち止まり辺りを見渡してしまう。

 その隙を突くように上空で番えた矢をそのまま放ち──ゴブリンたちは全滅する。


「強さは変わらない。連携しているわけでもないし、野生のゴブリン? でも、どうしてこんな場所で?」


 その者は解答を──『賢者』の研究なのだろう、ということで切り上げる。

 分からないことは知ろうとすることが大切だが、そればかり気にしていても仕方ない。


 自分の定めた目的を果たすため、ゴブリンに関する情報が必要だとは思わなかった。


「ここには……いない。別の扉を探そう」


 辺りを調べ、自分の探し人に関する情報が無いことを理解すると、その者は入ってきた扉から出ていく。


 出た場所は変わらず、視界には塔のある世界に入ってきた時に見つけていた動植物。

 そのことにまずホッと一息を吐いてから、その者は別の扉に近づく。


「……行こう」


 扉を開いて中へと入る。

 その者の頭部では、長いウサギの耳が揺れていた。



ご安心ください、新キャラです

ただ、呟いた名前は……どうなんでしょう?


p.s.

修正話──更新しました

ついに娘(仮)が召喚されましたね……ここから何がどうなれば、認識が一変するんでしょうか?

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