偽善者と迷宮視察 前篇
前日は春分の日を記念し、連続更新を行っております
まだ読んでいない方は、数話分遡ってください
とりあえずのあらすじ
眷属とイチャコラ
フェニと別れて最奥地まで向かう。
少々の改造を加えたものの、『天魔迷宮』はあくまで三層しかない小規模な迷宮だ。
ミントが絶対的な守護者として君臨し、その後ろを死んでも死なないフェニが守っている以上策を弄する必要が無いからである。
なので、最終層でもある三層目には巨大な宝珠が置かれていた。
「お待ちしておりました──主様」
「なんだ、待ってくれたのか」
そんな宝珠──迷宮核の傍に、この世界の管理人とも呼べる少女が立っている。
蒼銀の髪を伸ばした黄金の瞳を持つ者、ただしそこに輝きはなく昏い光を宿す。
彼女はレン。
迷宮核が生みだした人形であり、受肉した迷宮核そのものである。
「報告はすでに。リョクがリーン、リアがペロー王国であれば……迷宮都市であるラントスは私の出番ですね?」
「んー、まあそうなるの……かな?」
「──と言いたいところですが、それは他の眷属にお譲りしましょう」
すぐに<千思万考>でプランを練り上げていたのだが、レンが予想外の発言をしたため、それはいったん中断された。
「いいのか?」
「代わりに、共に行ってほしい所があるのですが……よろしいでしょうか?」
「それは構わないが……どこに行くんだ?」
目は笑えていないが、表情筋を緩ませて答えを教えてくれる。
「──迷宮巡りです」
◆ □ ◆ □ ◆
偽・世界樹の迷宮
かつて、迷宮イベントの際にプレイヤー側の眷属に提供した超大型迷宮。
北欧神話に語られるユグドラシルを模した巨大な世界樹に、世界創造系の技術のテストケースとしてあれこれと注いだ結果できた。
「久しぶりだな、『ロカ』」
「お久しぶりです、兄貴様!」
「いろいろと悪かったな。ここに来る機会もそうそうなかったし……」
「お気になさらず、兄貴様! ご活躍はいつも、聞いておりますので!」
迷宮で生まれる狼に、実験を行った結果生まれたのがロカだ。
俺の髪色同様、白と黒の体毛が入り混じったオンリーワンな魔物だ。
「そうかそうか……よしよし」
「クゥーン……」
「ははっ、いつもありがとうな」
ちなみに、イベント時には敵の迎撃などもすべて引き受けていた。
そのときの褒美もまた、今のようにモフりモフられを長時間やることだったな。
「と、ところで兄貴様は、どうしてこちらへ来たのです……ワフゥ」
「レンがな。二人で造った迷宮を巡りたいって言ってきたんだ」
「そ、そういうことでした……ワフッ!?」
「おっと、悪い悪い」
人化すると男になってしまうので、そのまま獣状態で撫で続けている。
俺としても、わざわざ男の頭や尻尾を撫でるような趣味は無いのだ。
「よし、これで終わり。ロカ、大丈夫か?」
「は、はい。大丈夫……です……」
「というか、こんなことでいいのか? さすがに撫でるだけってのがご褒美になっていると思うと、少し罪悪感がな……」
「兄貴様の手は、最高ですから」
なんだか恍惚としている気がするが……大丈夫、なんだよな?
いや、神手のテストとかもやってもらってたんだよな、コイツに。
「やっぱり……俺も女になれば、もっと撫でてもらえるんですか?」
「……まあ、否定はしないぞ」
「やってけ……ますかね?」
「少なくとも、お前に無理強いはしない。撫でるだけなら今のままでも、俺はやるつもりだし。まあ、さすがに性の切り替えができるヤツはどうかと思うがな」
自分を棚に上げている? いやいや、俺は男でありたいと思っているんで。
そもそも、そんな二分の一みたいなヤツがハーレムを作れるなんて奇跡に近い。
それこそ、主人公としての祝福を授かった運命的な……シャインって、凄いんだな。
「リョクとクエラム、あとネロとソウにでも話を訊いてみてくれ。半分は無性だったが、いちおう参考になるはずだ」
なお、カナタは別枠とする。
もともとキャラクリであのアバターを選んだのは、カナタ自身なのだ。
そういう才能があった、としか言えない。
「そういえば兄貴様、他の場所にはもう行ったのですか?」
「まあ、いくつかはな。ただ、お前らが居る場所はここが最初だ」
「……『ハナ』には、会うんですか?」
「まあ、その気だな」
カナタとのダンジョンバトルで、俺が使用した迷宮──『凶楽の花園』。
貴重な薬草や花が採取できる場所として、一般開放されている場所だが……そこの管理者がハナと呼ばれた妖精なのだ。
「何か問題でもあったのか?」
「あっ、いえ……兄貴様なら大丈夫でした」
「ん? まあ、それならいいんだが……」
俺にはそうでもないんだが、たまに周りに毒を吐くんだとか。
全然俺に自覚は無いし、完璧に隠せていたが……眷属には便利な情報共有手段があるため、その情報が回ってきていた。
「レンの願いでもあるし、全部巡るんだ……だよな?」
「はい。可能なのであれば」
「それが願いなら、俺は叶える。悪いな、ロカ。わざわざ注意を言わせて」
「い、いえ。兄貴様といっしょに居れば大丈夫でしょうから。そ、それより俺は相談に行きます!」
ロカは物凄い勢いでここから去る……何かハナに怖いことでもされたのかな?
まあ、とにかく次の場所へ行こう──念のため、確認はするけどさ。
新(?)キャラ紹介
ロカ:迷宮イベントの際に登場していた『偽・世界樹の迷宮』の守護者
さまざまな人体(?)実験によって【天魔】の因子を宿している
次回はまた別キャラの紹介となります
p.s.
アメトー(略)クの弱小部活芸人を観て、自分の入っていた部活(中学)も弱かったなぁ……と思う作者
当時最弱と呼ばれていた学校に敗北したうえ、そのあと揉めて廃部だか活動停止だかになったらしい……作者の代が悪かったのか、それともその弱者っぷりを見た後輩たちに影響が及んだのだか
真実はすべて、闇の中へ(行ってほしいなぁ)……





