表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と三つの旅路 十五月目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1029/2525

偽善者と帝国散策 その09

最初は三人称でございます



 その男──バイルは闘いが好きだ。

 孤児として育った彼は、帝国の闇の中で家族を守ろうと闘いに明け暮れた。

 どんな相手でも拳一つで倒し、大人だろうと自分たちから奪う者は拒絶する。


 そんな無敗伝説は、唐突に終わった。

 それは彼が、子供と大人の間ぐらいまで成長したある日のこと。

 一人の壮年の男性が、彼と彼の家族に手を差し伸ばしたからだ。


『テメェら丸ごと抱えてやる。どんな悪餓鬼かと思えば、立派な所帯持ちじゃねぇか』

『仁義を通す奴、俺はそれが大好きだ』

『どうだ、テメェの家族を全員纏めて、安全な場所に住ませたくねぇか?』


 初めは信じられず、拒絶した。

 だが、次第にその緊張も解れ、ある事件を境にそれは信頼へ転ずる。

 家族を守るための戦いしか知らなかった彼は、仁義のために戦うという意味を知った。




 成長を経て、新人としての務めを立派に果たしたバイルは──再び闘争に明け暮れる。

 大好きになっていた『オジキ』と慕われる例の男が、危篤状態になっていたからだ。


 自分たちを守っていた存在がいなくなり、帝国の闇が蠢き始める。

 組織の仲間たちも誰に付くかで分かれ、繋がりが少しずつ断たれていた。


 それでも家族を、オジキが用意してくれた家族の居場所を守ろうと戦い続ける。

 オジキの業績が気に入らない者、そこに住む子供たちを売ろうとする者、単純にバイルの行動が気に入らない者など……敵は数え切れないほど存在した。


 だがあるとき、一人の青年が現れる。

 かつての仲間の一人を引き連れ、バイルに向かってこう言った。


『貴様が……そうか、ご苦労なことだ』

『俺に従え、守りたい者があるのなら』

『貴様らの意志なんて関係ない、俺は貴様らの組織を奪うと決めた』

『覚悟があるなら、拳を構えろ』


 理不尽で横暴で嫌悪感を感じた。

 だがそれと同じくらい、彼に惹かれる。

 後ろでそれを見ていた仲間も、それを知っていたのか朗らかに笑っていた。


『仁義を通せとは言わない。心に決めた何かがあろうと、勝てない者はいる』

『だからせめて、足掻いてみせろ。何者からも守るべき者があると』

『ステゴロを交わせば、細かい理屈なんて関係なくなる。これだけで充分だ』


 そして、取っ組み合いが始まった。

 勝敗は決まり──男が勝つ。

 心配そうにしていた子供たちは、守られた地から離れてバイルを助けようとする。


 男はそれに気づくと、ゆっくりと手を子供たちに向けた。

 バイルは止めようと叫び、体を動かそうとするが……ピクリとも動かない。


 何をするのか、場合によってはいかなる手段であろうと殺すことを考える。

 だが、彼は子供たちと同じ高さに屈み、こう伝えただけだった。


『強かったよ、貴様らの兄は』

『自慢の兄だろう、だから殺すわけにも誰かに忠誠を誓わせるわけにもいかん』

『貴様らの手で、兄を癒せ。ポーションであれば、これをくれてやる』

『安心しろ、金なら要らん。その分の忠誠は兄がきっちり払うだろう』


 そうして、彼は再び頼ろうと思える男の下に付いた。

 その選択が正しかったかどうか……答えは彼のみが知っている。


  ◆   □   ◆   □   ◆



『間違いだったっすよー!』



 コロシアムの中で、そんな声が聞こえた。

 気で強化した聴覚で把握したが、気にせず観戦を続ける。



「……間違いだったようですよ」


「さて、なんのことだか」



 聞こえていたようだが、無視が一番だ。

 実際にアイツが間違いだと思っていても、すでに子供たちの信頼を得ているので、すぐには逃げないだろう。


 外堀を埋めるとは、そういう意味だ。

 まあ、口だけだとは分かっているけど。



『恨みは無いっすけど、ボスのためにも倒させてもらいますっす!』



 アイツ──バイルは拳を構え、対戦相手である幾数人の闘奴や魔物たちに放つ。

 前に放てば衝撃波で吹っ飛ばし、横に振るえばスパスパと斬られる。


 バイルの職業は『無刀拳士』。

 拳は鋭い刀と化し、打撃と斬撃を自在に操ることができる。

 ……ステゴロを申し込んだ俺に、容赦なく斬撃を放ってきたことを忘れてはいない。



『おらららららっす!』



 凄まじい速度での連撃が、前方に向けて放たれていく。

 人族には打撃が、魔物には斬撃が向かい、戦闘不能状態へ陥れる。



「近接も遠距離も問題なし、かなりズルいよな。圧倒的な防御力、それかより離れた場所から攻撃できないと負けるのだから」


「……そのどちらでもない、すべてを躱して捻じ伏せたボスはどうなんでしょう」


「弾いてはいただろう」



 剣の達人や拳のプロフェッショナルと闘った経験が、こういう場合に役立った。

 力を証明する必要があったので、圧倒的な感じをアピールしたうえで完封したのだ。



『うぉおおおぉ! 勝ったっす!』



 そんな話をしていると、コロシアムの中央で両手を上げるバイルの姿が見えた。

 ちなみに、一人もバイルは殺していない。

 必要となれば殺すようだが、できるだけそうならないように振舞っているそうだ。



「さて、これでチップも増えたな。換金してもっと活動をしようか」


「バイルはどうしますか?」


「ご苦労様、と言っておけ」



 チップを貰ったらもう少し増やそう。

 それが終わったら……準備を始めようか。




次回は眷属が一人登場するぞ

さーて、誰が出てくるのかな?


p.s.

修正話──更新しました

微妙に戦闘……しているのかな?


また、停導士のタイトルが変わっています……意見お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ