表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【更新不定期化】AllFreeOnline~才能は凡人な最強プレイヤーが、VRMMOで偽善者を自称します~  作者: 山田 武
偽善者と三つの旅路 十五月目

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1008/2525

偽善者と赤色の旅行 その13



「……どうやら満足していただけたようで、私も嬉しいですよ」


「たしか、砂糖って…………そ、それって物凄く高いんじゃ!」


「ああ、お気になさらず。私の居た国では、すでに安く売られていますよ。もちろん、そうでなくともお譲りはしていましたが」


「……本当かよ」



 おっと、少し余計な発言をしたせいかまた信頼を失った気がする。

 ガーの方はとっくに子供たちに馴染んでいるんだが、俺はお菓子を配らないと一時の人気も得られないんだよ。



「まあ、その件についてはおいおい話し合うとしてです。君たちの住む場所は、どこにあるのですか?」


「ここから東に行った街の孤児院だ。けど、どうしてそんなことを!」


「まあまあ、落ち着いてください。えっと、そこには銀髪のシスターが居ますか?」


「おい、なんで知ってる!」



 シヤンが詰め寄って、俺の服を掴もうとするが……瞳を一瞬輝かせると、俺の居る場所は少し離れた位置となる。

 突然俺がいなくなったので、勢いが止められなかったシヤンは、そのまま不思議そうな顔をして地に手を着く。



「なぜって、視たからですよ。そしてこれもまた、視た結果です」


「はぁ? 何を言って」


「──さぁ、孤児院に帰りましょう! 銀髪シスターがみんなを待っています! 帰りたい人は、手を挙げてください」



 俺を疑っているが、それでも帰りたい気持ちは先の出来事で高まっていたのだろう。

 シヤンを除く全員が手を挙げ、それを声に出して猛アピールしていた。



「ちょ、ちょっと待て!」


「はい……どうかしましたか?」


「助けてくれたことには……その、か、感謝している。だが、それとこれとは別だ! 信じられねぇ、どうやって帰るんだよ!」


「それはもちろん、転移ですが?」



 それが悪いんだよ、と言わんばかりに指で俺をビシリと指し示すシヤン。

 子供たちの方で一瞬、魔力が溢れた気がするが……振り返ってもそこには、綺麗なスマイルを浮かべたガーしかいなかった。



「転移なんて伝説級の力、使えるわけねぇだろ! 百歩譲って使えたとして、本当に俺たちを帰してくれるか分からねぇ!」


「なるほど……たしかに、君の意見はもっともなものです。しかし、それでも私は信じてもらいたいですね。今も銀髪のシスターは、皆さんの名前を呼んで泣いていますよ」



 仕方ないので閃光眼を応用し、その様子をできるだけ再現して投影してみた。

 すると効果は覿面、子供たちがシヤンに早く帰りたいと宣言し始める。


 まあ、帰るべき場所と被保護者を見たのだから当然の反応なんだが……。



「みんなー、家に帰りたいですかー?」


『うん!』


「そのためなら、少しだけ何が起こるか分からなくてもいいですかー?」


『うん!』



 なんだかクイズ大会みたいなノリになっているが、そこは気にせずにいてもらいたい。

 物凄く不満そうなシヤンが俺を睨み付けるが、そちらは無視して伝えておく。



「分かりました。それじゃあ、私……では怖いと思いますので、私と手を繋いだガーにシヤン君が手を繋いでください。それからみんなでシヤン君かガーと手を繋ぎ、繋いだ子とまた別の子が手を繋いでください。そうすることで、いっしょに転移できますから」


「では、シヤンさん……手を」


「あ、ああ……」



 ガーの天使の笑みを受けたシヤンは、抵抗力を失いそのまま言われるがままに手を繋ぐことを選んだ。

 子供たちは二人の元にいっせいに集まり、仲良く手を重ねていく。


 もちろん、俺の所には誰も来なかった……良いんだ、実は一人ぐらい来てくれるかなと期待なんかしてないんだもん。



「……飛びますよ。皆さん、帰りたい場所を強くイメージしてください。眼を開いた時、そこが皆さんの居場所となります」



 ギュッと瞳を閉じ、何かを念じるように唸り始める子供たち。

 その様子を俺とガー、シヤンで確認してから──俺も作業を始める。



「では、帰りましょう──お家へ!」



 座標は先ほど確認した。

 対象は全員俺と間接的に接触している……条件は満たした、転移を行おう。



  ◆   □   ◆   □   ◆



「みんな!」



 子供たちが期待した声だった。

 俺たちの目の前には、さっき投影した銀髪シスターが存在する。

 一瞬状況が掴めなかったようだが、すぐに理解して走りだす。



『シスター!』


「ええ、そうよ。本当に良かった……探しに行ったシヤンも帰ってこないし、一時はどうなることかと思っていたのよ!」



 感動の再開を邪魔するわけにはいかないので、俺たちはそっとここから離れ……ようとしたのだが、手を握られて動きが停止する。



「どうしましたか、シヤン君?」


「……あ、ありがとう。アイツらを連れて歩いていたら、どんだけ時間がかかったか分からねぇ。その……疑って、ごめんなさい」


「君は子供たちの代表者です。どれだけ人を疑おうと、自分の弟と妹たちを守ろうとする方が大切ですよ。君はみんなのことを、大切に思っているのでしょう?」


「あ、当たり前だ!」



 その当たり前が無い地球だからこそ、俺のモブ思考は偽善を求めたのかもしれないな。



「君がいつまでも、そうしてみんなを守れるような子であってほしいです」


「あっ……」


「よしよし、よく頑張りました。君は本当に勇敢だった。私が保証します、立派に子供たちを守れていたと」


「うぅ、うっ……うぅ…………」



 顔を埋めるシヤンを、俺は何も言わずに左手で背中を摩り続けた。

 このとき右手で頭を撫でていたのだが、これはリーンの子供たちへの対処法を思いだしてしまったのが原因だな。


 嫌がる子もいるだろうし、こういったとき以外はできるだけ控えておかなければ。




もうしばらく赤色の世界に滞在しますよ……見つけていますが、明確にしていませんし


p.s.

修正話──更新しました

王城に向かってからの話です……少し内部を散策します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ