第3話 ロセア帝国の情勢
頑張って書いているのでよろしくお願いします。
会場を後にした俺は任命したばかりの側近貴族を連れて大公国行政府庁舎へと向かった。
庁舎と会場は道のり50メートルと直ぐ近くで有った為、図書館で地図を見ただけで殆ど外に出た事の無い俺でも迷わずにたどり着いた。
大公国行政府本庁舎第二会議室
二十人程が入れる部屋には現在、俺と側近貴族だけが揃っている。
俺は一度着いた椅子から立ち上がり、それぞれ椅子に座っている側近貴族達に向かい話し始める。
「諸君、任命早々ではあるが、諸君等に俺のこれからの計画を話したいと思う。自己紹介は要らないだろう。そちらも、こちらもお互いの事は良く調べているだろうからね。」
どちらもこの日の為に、絶対に選ばれないであろう貴族たちまで俺の事を調べるのだ。自己紹介は今更と言う物だ。
「自己紹介は確かにそうですが、計画ですか?失礼ながらヴァミリア様、まだ早すぎるのでは?貴方はまだお生まれに為ってより十年しか経っておりません。」
オルドがそう指摘してきた。確かに、地球も含め世間一般的には早いのだろうが、俺には関係ない。
それに早く計画を進めなければいけない様な世界情勢に為っている。
この世界は中世ヨーロッパと非常に似ている。つまりは、国家及び国家間外交と言う物が非常に不安定であり、たとえ国際関係が安定していたとしても一瞬で崩壊してしまう可能性が非常に高いのだ。隣国の友好国は親友ではない、中立国は仮想敵国、そんな世界情勢だ。その状況ではこんな国などあっという間に消滅してしまうだろう。歴史では国は守れない。
「確かに、オルドの言う通りまだ早いのかもしれない。」
「では、」
「常識的に言えばだ、しかし、俺は俺の考える計画を早く実行しなければこの国家全体が消滅する恐れがあると思っている。いや、十中八九そうなるだろう。」
少し安心した表情を浮かべるオルドを遮って言う。
「なっ、それはどういうことですか!」
オルドは驚きに声を上げ、他の側近達も驚愕する。
当然の反応だな。まぁ、インパクトは有ったことだし、話の掴みとしては上々だな。
「ハルト、我が国の主権を持つロセア帝国が現在どのような情勢に有るか、説明してくれ。」
俺はここで諜報能力の高いハルトに話を振る。
彼は俺が大公家の管理する図書館で歴史書を探していた時に偶然出会い、話してみた結果、俺は彼の諜報能力に、彼は俺の情勢把握能力に目を付け、相互に利点があると考え、現在は相互協力関係と為っている。
まぁ、つまりを言うに、俺の片腕第一号だ。
彼の諜報能力は使える。国内貴族が国内にしか目を向けていない中で世界の情報を集めるため、ハイリヒ伯爵家は各国に協力者,或は子飼いの配下を放っているそうだ。俺にとって、その情報収取網は非常に魅力的であったのだ。
「はい。現在ロセア帝国は帝国南方の国境と接しているオルマル帝国と交戦中であります。」
オルマル帝国とは中央諸国南方のアナリア半島を中心に領土としており、オルマル家当主を君主とする国家だ。
かつては広大な版図を誇っていたが、徐々に衰退しており、ここに来て版図の再拡大に出たのだろう。正に起死回生の一発勝負と言う奴だ。
「そうだな。それで、戦況は?」
「わが国にはあまり情報が入って来ませんが、独自のルートによる情報と帝国から来た商人達の話によるとロセア帝国がかなり押されており、帝国南方主要拠点であるヴォルゴ侯爵領都市ヴォルグラードが陥落。更に要塞都市ロストクも陥落間近と為り、ロストクが落ちれば鉱山を多く抱えるハリコク公国が丸裸になり帝国は鉄不足に陥る危険性が高くなるでしょう。」
「ロセア帝国がオルマル帝国と……しかもロセアが劣勢なのかっ!」
「南ではそのような事が……」
「しかし我が国とオルマル帝国はかなり離れているし・・・・・」
ハルトの説明に他の側近貴族達はまたも驚きを隠せないでいる。
やはり、国内の貴族にはロセア帝国の状況が伝わって居なかったのか。
いや、伝わって居なかった、と言うよりも聞こうとしなかった、と言う方が正確かもしれない。
なにせ、彼らを含む大多数のローゼンベルク大公国貴族は他国の情勢にに興味が無い。これは正直言って大問題だ。単に閉鎖的、というのであればそれほど問題では無い。しかし、他国の状況を知ろうともしないのはかなり危険だ。
「さて、現在帝国はこのような状況だが、この状態が続くと我が国はどうなる?」
俺は彼らに意見を言う様に無言で促す。
「……申し訳ございません。自分には想像できません。ヴァミリア様、どうなるのでしょうか?」
オルドが皆を代表して聞いてくる。
宰相家の次期当主ですらもこれだ。自分の側近貴族位は何とかしないとな。
「まぁ、状況を聞いたばかりでは考え付かんか。まぁ、可能性としては二つだ。一つは帝国が衛星国家の旧王国領のヴィルヴァリア地方にある諸公国を切り捨て、独立を保障する可能性。もう一つは西のプロイツェライヒ王国にヴィルヴァリア地方諸公国の宗主権を譲渡する代わりに参戦して貰う可能性だ。個人的には前者の可能性が高いと考えている。」
一つ目の可能性が低い理由にはロセア帝国と西のプロイツェライヒ王国は昔から仲が悪いと言うのが挙げられる。仲が悪い以上、ロセアはこの機に乗じたプロイツェライヒ王国よる背後からの一撃を警戒するに違いない。つまり、俺たちはそれを防ぐ盾と言う事だ。
「帝国が貴重な衛星国家を切り捨てるなどあり得るのでしょうか?」
「確かに普通ならあり得ないだろう。しかしだ、我々ヴィルヴァリアの諸公国は帝国にとっての旨みが少ないのだ。理由の一つに我々が帝国に非協力的な事があげられるだろう。向こうも精々西側諸国との防波堤程度にしか考えていないのだろう。それにオルマル帝国にロストクを抜かれると、その北には旧ヴィルヴァリア領の生産能力の高いキレフ公国が有る。オルマル帝国はここの生産能力を目当てに進軍して来る事が予想される。ここには殆どヴィルヴァリア人しか住んでいない。すると自民族の団結力が非常に高いヴィルヴァリア諸公国が黙っているはずもなく参戦する事になるだろう。そして帝国は既に宗主国ではない為増援を送る必要が無い。帝国はこれを狙わない筈が無い。それどころか、意気揚々と進駐したオルマル帝国軍をヴィルヴァリア地方に閉じ込める事も可能性としては無くはない。」
更に言うと、ヴィルヴァリアは全体的に自国への関心が非常に強く、外はどうでも良いと考えているのだ。そこを付けこまれて気が付いた時には手遅れな位に攻め込まれているかもしれない。
それがあのロセア帝国が戦時中とも知らない発言。これぞ閉鎖的社会だな。鎖国か?まぁ、外交はしている様だが。
「理解して頂けたかな?」
オルドが俺の言葉に頷く。
「つまり、我々が帝国から切り離される可能性が高いため、早めにヴァミリア様の計画を進めたいと、そういう事ですね?」
俺は理解してくれた事に満足して頷く。
「皆も理解してくれたな?」
俺の問いに他の側近貴族達は肯定の言葉をそれぞれ述べた。
「よし、では計画について話そう。」
この戦争の元ネタは露土戦争です。
まぁお分かりかとは思いますが一応。
次回もよろしくお願いします。