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第2話 側近貴族の任命

プロローグと第1話を少し改稿しました。

側近貴族。

それはこの世界において次期国家元首が諸侯貴族に対して様々な部分において権力を掌握し、その地位を幼い頃より高める為に国内の次期上級爵位貴族と為る者を傍に仕えさせることで定着した制度である。



さて、急に側近貴族を選べと言われても困るだろうが、俺は抜かりない。

図書室に籠っている時に国内貴族の能力や家系を調べていた。

そもそも、この側近貴族選びが次期大公としての見極めに繫がるのではないかと考える。

そこで選び抜いた貴族を発表する事にした。


俺は深呼吸をすると、用意された壇上に上がり手渡された声を増幅させるという何気に初めての魔法が使われた「魔導具」と言われる奴で、その名も「マイク」。

完全に地球の現代人が関わっているな、コレ。


まぁ、そんな下らない思考を脳の片隅に追いやり発表するとしよう。


場は静まっており貴族たちは固唾を飲んで見守る、と言った様子でこちらを見ている。

まぁ、時期大公などと言ってもまだ子供。健常な精神を持つ者であれば、それは心配するだろう。

俺は彼らの視線に威圧されるも、緊張しつつ一人ずつ発表する。


「これより、私の側近貴族を発表します」


この世界での貴族は、正式な場において誰一人例外なく、一人称を「私」とする事と為っている。俺はその規則に則り話さなければならないが、正直面倒だ。まぁ、どうこう言おうと仕方が無いのでちゃんとやるのだが……

そう考えつつ、俺は口を開く。


「初めに筆頭側近貴族。シェーンハウゲン公、オルド・ヘルツォーク・フォン・ビルマルク」

「はっ!」


名前を呼ばれたオルドは力強い声で答え、壇上に上がり、俺に臣下の礼を執る。


オルド・ヘルツォーク・フォン・ビルマルク

20代前半の貴公子が似合うような男だ。

ビルマルク家はローゼンベルク大公国の宰相を代々歴任しており、その事から諸侯の間では「宰相家」とも呼ばれている。

この公爵家は我が大公家と旧王国時代の血縁関係にあり、両家ともその時代の王家の血を引いている。と言うよりも、旧王国時代最後の王太子が今のローゼンベルク大公であると言う裏話が有るのだが。まぁ、これは今はいいだろう。

シェーンハウゲン公とはビルマルク家が旧王国時代に持っていた称号であり、現在は永久名誉称号としてビルマルク公爵家に送られている。

また、旧ヴィルヴァリア系貴族の男子は当主でなくとも親の爵位を名乗る事が出来る。


「次に側近貴族。ハルト・グラーフ・フォン・ハイリヒ」

「はっ!」


ハルトは爽やかな声で答え、壇上に上がり、オルドと同じように臣下の礼を執る。


ハルト・グラーフ・フォン・ハイリヒ

10代後半のイケメン男。妬ましい。

ハイリヒ家は代々優秀な人材を輩出する家系であり、彼は特に諜報関係で優秀な人間のようだ。

このハイリヒ家も旧王国時代から続く家系である。


さて、ここまでは歴代の側近貴族の定番となっているのだが、ここからは俺が使えると判断した者達だ。


「次に、イリヒ・グラーフ・フォン・レーター」

「は、はっ!」


イリヒは自分が呼ばれた事に驚きつつもしっかりと返事をして壇上に上がり、臣下の礼を執る。

周りも少しざわついている様だ。


当然の反応だな。まぁ、彼らには大いに驚いてもらおう。


イリヒ・グラーフ・フォン・レーター

20代後半の少し疲れた顔をした男。

レーター家は旧王国時代の海軍卿を多く輩出する家系であり、船舶運用や戦術能力はいまだ健在であるため現レーター伯は現在、大公国の貿易輸送船の護衛隊の総司令官に任命されている。

彼自身も艦隊指揮能力は高いようでこれからは俺の計画にとことん付き合って貰おう。俺の計画では海上関係は特に力を入れたいからな。まぁ、手始めに造船能力、船舶性能強化、新海戦戦術の作成、色々とやって貰おうか……彼、絶対老け顔になりそう。可哀想に。


「次に、リヒト・グラーフ・フォン・マインシュタイン」

「はっ‼」


リヒトは覇気のある迷いのない返事をして壇上へと上がり、臣下の礼を執る。

ここで会場は一気にざわつく。

それも当然だろう。彼の爵位は城伯、分かりやすく言うと子爵相当の階位だからだ。そして、代々側近貴族には伯爵以上が選ばれることが当たり前だからである。


リヒト・グラーフ・フォン・マインシュタイン

30代前半の現役近衛騎士団副団長。

マインシュタイン家はあまり有名な貴族では無く、側近貴族に選ばれた事のある家系では無いが旧王国時代から続く家系であり、当時は軍務卿を割合的に多く輩出していた家系だ。

現在も陸戦能力、指揮統制能力は非常に高いため騎士団では重宝されている。

彼も私の計画の為に頑張って貰う事になるだろう。


そして、次が本命と言っても過言ではない、俺にとってかなり重要な人物だ。


「最後に、アリア・バロネット・フォン・ジロー」

「はっ。」


アリアは透き通った声で返事をして壇上に上がり、臣下の礼を執る。


ここで既にざわついていた貴族たちの声が一気に大きくなる。


歴史的にみて、女性貴族が側近貴族に選ばれた事は一度もない。それ故に一部貴族からは反発が発生するかもしれないが、先ずはこの国に新しい風を少しでも入れなければならない。

この国は良くも悪くも、旧王国時代から殆ど変化していない。いかに仲間思いの人間が団結している組織と言えど、長く変わらなければ大なり小なり腐敗するものだ。と言うか、仲間思いが強すぎるというのも、一種の組織腐敗とも言えるのだが……まぁ、とにかく、新たな事を少しずつでも取り入れる事で俺はこの国を強くして行きたいと思う。何せ、時間が無いのだ。

さて、彼女だが、


アリア・バロネット・フォン・ジロー

20代前半の小柄な女性。

彼女の地位は準男爵相当の女爵であり、統一暦開始と同時に伝説の八人の勇者が制定を命じた「女性貴族制度」の名残として、大変な功績を挙げた女性を貴族として取り立てる際に与える爵位の事だ。

そしてアリアの功績は俺の計画をより素晴らしいものにする一人である。

アリアは元々、現ジロー城伯の愛娘であったが飛行船に興味をひかれ魔導飛行船の研究に没頭し、大公国初の魔導飛行船を建造した為、5年前に女爵として取り立てられた。


「静粛に!」


未だに騒めく貴族達に父が一喝入れる。

流石に君主の言葉の為、ざわついていた諸侯貴族達が静まる。宛ら鶴の一声と言った所か。

その代わりに諸侯貴族達は俺のこの選定について様々な憶測を立てて考え込んだり、近くの者と小声で話し合ったりしていて注意がこちらに向かなくなっている。


「以上五名を私の側近貴族とする。任命された五名はこれより私に付いてくるように」


俺はその状況をいいタイミングだと思い形式的な終了の宣言をすると、先程任命したばかりの側近貴族を引き連れて会場を後にする。


名前が似ていますが歴史上の人物とは一切関係ないのでロシア圏でドイツ系の名前でも問題ありません(迫真)

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