金色の猪
巨大な猪が、跳ね橋へ一歩踏み出す度に、ギシリ!と跳ね橋が軋んだ。
「爺、あれはなんだ?」
リンドブルムも初めて見る、その存在は、ブラギが持ち込んだものであった。
「あれは、遺跡で発掘された遺物でしてな、名はゼーリムニル、不滅の者と名付けられた守護者でしてな。錬金術師たちの研究が終ったので、こちらにまわしてもらったのですじゃ。」
武舞台の中央まで、何事もなく進んできたゼーリムニルは、急に立ち止った。
「随分、大袈裟な相手だな。」
ジークフリートが、そう呟いた時、ゼーリムニルの緑色に光っていた眼が、赤い色に変った。
「来るぞ!ヴィー。」
ブフオオオオオオオオオ!!!
大きな唸り声が響き、ゼーリムニルが、蹄で武舞台を引っ掻いた。
まるで生き物のようなその仕草に、観客達は大いに沸いた。
ゼーリムニルが、走り出すと、闘士達は前面から退避し、攻撃を開始した。
すると、ぜーリムニルの背面から、筒状の突起物がせり出し、火を吹いた。
それにより、どんどん加速してゆくゼーリムニル、闘士達の中にも、突進に巻き込まれ、弾き飛ばされる者が出て来た。
「どんどん速くなるみたいだな!しかもあの装甲だ、こちらの攻撃が通らないんじゃないか?」
『感心している場合じゃないだろう。ご主人。』
「よし!『炎を纏え!魔剣よ!!』」
ジークフリートの持つ炎の魔剣が赤熱化し、刀身が輝きだした。
持ち主であるジークフリートは何も感じないが、その刀身は凄まじい高熱を宿しているのだ。
ブリュンヒルデ達との、特訓によって得た、ヴィーの力の一つ、赤熱刃である。
ゼーリムニルが、方向転換し、ジークフリートを標的に定めたように突進を始めた。
リンドブルムは、思わずブラギに問うた。
「ジークフリートに向かっているようだが。爺、ゼーリムニルに何か細工でもしたのか?」
「いいえ、姫様。ゼーリムニルには、力の強い者にのみ反応するよう命じているだけです。ある程度の力を持つ者は、先程ご覧になったように標的にされるのですよ。」
「なるほどな!」
赤面しながら納得したリンドブルムは、少し大袈裟に答えた。
ジークフリートは、その突進を避けざま斬りつけた。
ズドオオオオンン!!!
ゼーリムニルは、足を一本断たれて倒れた。
「「「「オオオオオオオオオ!!!!」」」」
観客達は、ジークフリートが勝利したものだと歓声を上げたが。
ガキン!ゴキン!ガキン!
ゼーリムニルの切断された足から、金属の触手の様なモノが出ると、それが一瞬にして、音を立てながら元の状態に戻ったのだ。
「・・・流石に、一筋縄ではいかないか!」
今度は、ジークフリートから仕掛けた。
ギュイイイン!!
またしても、金属音が響き、今度はゼーリムニルの前面から、金属の筒が現れた。
それはどう見ても、砲身であった。
「なにぃ!?」
ジークフリートが横に飛んだ瞬間、ゼーリムニルの砲身が火を吹いた。
ゼーリムニルは、セーフリームニルともいうヴァルハラにいるという猪です。
殺され、料理されて食卓に並んでも、翌日には復活して、また料理されるという、なんとも可哀想な猪ですが、この話では、ゴーレム系のモンスターに変えました。
さて、決着は?(笑)