第二試合決着
王に用意された特別観覧席で、ガルガンチュアは、自分の娘の瞳に、並々ならぬ闘志が宿っていることを見てとった。
(カーシャが敗れたことで、気負ったか?いや、それにしては闘志は充実しているし、肩に余計な力も入っていない。ここは、信じて送り出してやるか。)
などと考えている内に、リンドブルムとエルルーンは、武器を構えあっていた。
「悪いが、負ける訳にはいかん。勝たせてもらうぞ!エルルーン殿!」
「私とて、薔薇十字聖騎士団の団長の一人として、易々と遅れを取るつもりはありません。今年こそ、勝たせてもらいます!」
両者共に、気力は十分である。
それを察し、ガルガンチュアは試合開始を宣言した。
「それでは!本選第二試合、試合開始!」
二人が同時に動き、武舞台の中央で武器を交錯させた。
ガキィイイイン!
リンドブルムの斧槍と、エルルーンの騎士剣がぶつかり合い、高い音をたてた。
二度三度と、二人は武器を交え、互いの成長ぶりを確かめているようであった。
(流石は、紅の戦姫!更に鋭く、そしてしなやかになっている!なにより!)
エルルーンは、上段から振り下ろされた斧槍を受け止めきれず、後方に跳んで威力を殺した。
(この力!ブリュンヒルデ様の仰っていた、神鎧甲とやらの力か!)
すでに、エルルーンの魔導装甲はフル稼働していた。
しかし、リンドブルムには、未だ余裕が残されているようだった。
その理由は、ただ一つ。
リンドブルムが、雷鳴の斧槍の力を開放していないからであった。
「遠慮は無用です!リンドブルム王女!その斧槍の力、使われるとよろしい!手加減されたとあっては、我が騎士団の名折れ!」
その言葉を聞いたリンドブルムは、ニヤリと笑った。
「それは失礼した!ならば、行くぞ!雷を纏え!雷鳴の斧槍よ!」
雷光が迸り、リンドブルムの斧槍の刃に、電刃が形成された。
その切っ先をエルルーンに向けると、リンドブルムは勝利を宣言した。
「最早、我に敵なし!覚悟は良いか!エルルーン!」
エルルーンは、盾を構えると、魔法を行使した。
「簡単にはいかせません!『守備力上昇』」
エルルーンの全身から、白い光が溢れだし、輝いた。
僧侶の使う防御法術である。
リンドブルムは、距離を詰めると、雷鳴の斧槍をエルルーンの盾に叩きつけた。
バシィイイイイイイイイン!!!!
まるで、高圧電流が流れるような音が、接触面から鳴り響いた。
「グアッ!!!」
防御したにも関わらず、エルルーンは苦悶の声を上げた。
雷鳴の斧槍の電撃が、エルルーンの防御法術を容易く貫いたからである。
エルルーンは、全身から白い煙を上げながら、膝を付いた。
再び斧槍が振られると、エルルーンの手から、騎士剣が弾き飛ばされた。
「さて、どうする?エルル-ン殿。」
問われたエルルーンは、震える身体を支えながら答えた。
「私、の、負けです。」
その瞬間、闘技場が、歓声に包まれた。
エルルーン敗退!
そしてようやく、主人公の出番がやってきます。
ジークフリート、久しぶりに戦いやね!