幕間
気を失い東門から、担架で運ばれたカーシャに、リンドブルムが駆け寄った。
「カーシャ!無事か!?」
その呼びかけに、カーシャは目を開け、リンドブルムに答えた。
「リンド・・・。ここは・・・そうか、負けたのか、アタイは。」
「本当に大丈夫か?私には、お前がバッサリ斬られたように見えたが。」
カーシャは、自分の体を見下ろし、傷がない事に驚いた。
「そんな・・・アタイは確かに斬られた。なのに傷どころか、痣もないなんて・・・。」
リンドブルムは、カーシャのその様子から、ブリュンヒルデの使った技を推察した。
「おそらくは、一握りの練達の者にしか扱えぬ秘技であろう。コレは油断ならんな。」
リンドブルムのいつにない真剣な様子に、カーシャが笑顔を見せながら、軽く肩を叩いた。
「そう思いつめるな、リンド。ブリュンヒルデとやり合うのは、次の試合に勝つまでお預けなんだからな。」
「ああ、分かっているさ。」
そこまで言ったところで、リンドブルムは、カーシャが自分の名、しかも愛称を呼んでいることに気が付いた。
「カーシャ、また私の名を呼んでくれるようになったのだな。」
「あ!そうだった。正直、死んだと思っていたから気が緩んだんだね。ごめんよ。姫様。」
「元に戻さなくていい!ついでに城に戻ってこい!私を一人にするな!」
真剣に見つめて来るリンドブルムに、カーシャはこれまで肩肘張っていたことが、なんだか馬鹿馬鹿しく思えて来た。
自分は、リンドブルムを守る力を手に入れる為に、傍を離れていたのに、リンドブルムを孤独にしていたことに気付いたからだ。
「ハハハ・・・我儘なのは、昔っから変らないね。降参だ。帰るよ、リンド。それより、次の試合、負けるんじゃないよ!」
カーシャの言葉に、リンドブルムは満面の笑みを浮かべた。
東門が再び開き、場内にリンドブルムの入場を告げるアナウンスが聞こえて来た。
その声を聞きながら、リンドブルムはカーシャに振り向き、声を上げた。
「私を誰だと思っている!紅の戦姫、リンドブルムだぞ!それと、先程の言葉、忘れるなよ!」
その堂々たる姿に、カーシャは安心し、見送った。
すでに入場していたエルルーンは、リンドブルムの姿を見て気を引き締めた。
(少しは、こちらを甘く見て、油断してくれるかと思いましたが、流石は紅の戦姫ということですか)
すでに、リンドブルムは完全武装であった。
御約束の、魔導装甲の装着もなく、その顔には、闘志が漲っていた。
「さあ!始めようか!」
「参ります!!」
リンドブルムとエルルーンの戦いの火蓋が切って落とされた。
ブリュンヒルデが、使ったのは、人の業だけを斬る技です。
そして、第二回戦が始まります。果たしてエルルーンは、リンドブルムに勝てるでしょうか(笑)