初戦
「ハアアアアアアアア!!!」
先手を取ったのは、カーシャであった。
バトルアックスが唸りを上げ、ブリュンヒルデに襲いかかった。
ゴガアアアアアアン!!!
カーシャのバトルアックスが、ブリュンヒルデの守護の盾に当たり、凄まじい音を立てた。
ブリュンヒルデは揺るがなかった。
しかし、カーシャの方も、体勢を崩さず、盾に弾かれた反動を利用し、再びバトルアックスを振るった。
それを今度は受け止めず、盾で軌道をずらし受け流した。
普通は、その時点で隙だらけになるはずであるが、カーシャはそこから、膝蹴りを放ち、盾でガードさせると、距離を取った。
だが、ブリュンヒルデは神速で踏み込むと、正義の剣を振るった。
攻守が入れ替わり、ブリュンヒルデの連撃がカーシャを襲う。
カーシャは、バトルアックスをまるで手足のように使い、その連撃を凌ぐ、大振りの上段からの斬り下ろしを捌くと、身体ごと回転しバトルアックスをフルスイングした。
ガキイイイイイン!!!
再び、バトルアックスと守護の盾が激突し、今度はブリュンヒルデは、後方に跳びながら受けたため、かなりの距離を開けることとなった。
闘技場は一瞬、静寂に包まれ、次の瞬間、歓声が爆発した。
「「「「ウオオオーーーーーーーーー!!!!」」」」
観客達は、二人の見せた高等な技の応酬に、すっかり魅せられてしまったのである。
これだけ巨大な闘技場での試合にもかかわらず、観客の全てにその戦いは、詳細に渡って伝わっていた。
闘技場に掛けられた、特殊な魔術によるもので、客席を守る必要のない時は、こうして遠見の魔法で得た映像を伝心の魔法で伝えることができるのだ。
閑話休題
二人の闘士は、互いに相手の強さを認識しあった。
「その細腕で、よくもアタイの攻撃を受けられるもんだねぇ!固いったりゃありゃしないよ!」
「そなたも、その重いバトルアックスを器用に使う!並大抵の修錬では身に付くまい!流石と言っておく!」
カーシャは、フフンと鼻で笑うと、こう続けた。
「言っとくが、アタイの本気は、まだまだこんなもんじゃないよ!今のうちに、降参した方がいいんじゃないかい!?」
この言葉に、ブリュンヒルデが満面の笑みで応えた。
「冗談を言うな!これからもっと面白くなるのだろう?降参などありえん!」
カーシャは、チッと舌打ちすると。
「後悔するんじゃないよ!」
と言い、精神を集中し始めた。
それと同時に、カーシャの全身に、光の筋が浮かび上がり始めた。
それは、身体能力を高めるための刻印であった。
「ほう!刻印を魔導装甲ではなく、直接身体に刻みこむとは!一昔前の技法だな!」
それは、使用者が、刻印に適応しなければ、命に関わるため、失伝した技法であった。
「これがアタイの切り札!鬼神の呪印だよ!」
カーシャの闘気が、膨れ上がって行く様を、ブリュンヒルデは闘いの熱気に浸りながら見守っていた。
そして、正義の剣を翳し、宣言した。
「では、こちらも本気と行こう!」
二人の女闘士の激突となります!ブリュンヒルデの本気とは?
以下次回にて!