ヴィーグリーズの誇り
闘技場の内部には、装飾が施され王の観覧席の左右には、各国の来賓の為に貴賓席が造られていた。
ドン!ドン!と太鼓が鳴らされ、本選の開始が近いことを、観客達に知らせていた。
ディートリヒ夫妻とシュベルトライテ、ジークルーネ達は、一般席からの観戦である。
「一晩で、凄い変りようですね。あの貴賓席など、昨日はなかったというのに。」
「そこは、この国の魔導士と、闘士達の力によるものでしょうね。大闘技祭は、ヴィーグリーズにとって、自国の力を他国に示す絶好の機会です。この早変りもその一環でしょう。」
「御二人とも!席はこちらです!」
客席は、すでに満員で、立ち席まで一杯である。
そこへ、ガルガンチュア王が現れると、客席から歓声が上がった。
「ガルガンチュア王万歳!」
「王の身世に幸あれーーー!」
このヴィーグリーズにおいて、ガルガンチュア王に敬意を抱かない民はいない。
ガルガンチュアはかつて、辺境貴族の生まれであったが、先代の王、狂王と呼ばれた、ファールバウティ王の世に、父を殺され、自身も奴隷に落され、闘技場で剣闘士として生かされていたのである。
ガルガンチュアを王に導いたのは、宮廷魔術師の筆頭ブラギである。
ブラギは、ガルガンチュアを当時、国宝であったニョルニルの元へ連れ出し、見事にニョルニルを手に入れさせたのだ。
神宝具であるニョルニルに、主と認めさせるには、それなりの資格が必要であったが、ブラギはガルガンチュアにその素質があると見抜いたのである。
それ以来、この二人の治めるヴィーグリーズは、発展の一途を辿った。
ヴィーグリーズにおいて、闘技場の闘士にいたるまで、そのカリスマ性は、行き渡っているのである。
王が歓声に応え手を上げると、波が引くように、静寂が訪れた。
「愛すべきヴィーグリーズの民達よ!並びに各国から来られた来賓も聞かれるがよい!今日ここに、大闘技祭二日目を開催すると同時に、女性部門本選の開始を宣言する!」
王が宣言するとともに、ファンファーレが鳴り響き、太鼓が大地を揺らせた。
『それでは、闘士達の入場です!』
場内に、魔法で拡大された声が響き、まずは西門が開かれた。
『西の門より、白銀の女騎士ブリュンヒルデ殿が入場されます。』
歓声に包まれ、ブリュンヒルデが現れると、貴賓席から感嘆の声が上がった。
主に、彼女の美しさにであったが。
『続いて、東の門より、当闘技場筆頭女闘士、旋風のカーシャ殿の入場となります。』
必要最低限の防御能力しかないと思われるような、ビキニアーマーを着たカーシャが現れると、また違った反応が見られたが、その鍛え抜かれ筋肉の鎧を纏った身体と、手に持ったバトルアックスの巨大さには、別種の美しさが、見て取れた。
「さあ!始めようか!」
「手加減はしないよ!」
二人の女は、互いに武器を構えた。
「それでは!第一試合!はじめい!」
ガルガンチュアの声と共に、巨大なドラが鳴らされた。
その瞬間、ブリュンヒルデとカーシャは大地を蹴った。
二日目開始!そして、ガルガンチュア王の過去について少し語られました。
外伝として、書いてみたいですね(笑)