受け継いだ物
リンドブルムの持つ斧槍から発せられた雷光が収まると、斧槍の先端部分に、雷の刃が形成されていた。
鎧皮犀が、眼を眩まされている内に、リンドブルムは側面に回避し、攻撃を加えた。
その一撃は、鎧皮犀の鎧皮を安々と切り裂いた。
「なんだ、あの武器は!?」
「主殿?」
「あの武器は、見たことがない。過去の対戦において使っていた斧槍とは別物だ!」
その疑問に答えたのは、フェルナンデスだった。
「あの武器こそ、姫様の御母君、ヒルデガルド様より受け継いだ雷鳴の斧槍ですよ。十八歳の御誕生日に、ガルガンチュア様より、あの紅の鎧と共に授かったのですよ。」
ゴライアスが、その言葉に続いた。
「今までの姫様とは、別人と思うことだな。事実、闘ってみた我等が、その強さを嫌というほど味あわされたからな。」
「あの電撃は、ヤバかったですね。受けることが出来ず、躱すしかないのですから。」
「二度とごめんだな。」
話を聞き、ジークフリートは武舞台上のリンドブルムを見た。
確かに、自分と戦った時とは、鎧の意匠も違っていた。
その動きも、洗練され昇華されていた。
リンドブルムは、斧槍をまるで自分の一部の様に扱い、鎧皮犀を翻弄していた。
他の出場者達も攻撃に加わるが、いずれもすべて弾き返されていた。
しかし、彼女達も熟練の戦士である。
自分達の攻撃が、鎧皮犀に効かないことが解ると、即座にリンドブルムの援護にまわることを厭わなかった。
注意を逸らし、リンドブルムの攻撃に有利になるように、陣形を変えたりしていた。
「皆!次で決める!退いてくれ!」
リンドブルムは叫ぶと、斧槍を振りかぶり、闘気を高めた。
紅の鎧が輝き、斧槍の光刃が一回り大きくなった。
「主殿!あの鎧、ただの魔導装甲ではないな!おそらく神鎧甲だ!」
ブリュンヒルデが、驚きを隠さずジークフリートに伝えた。
「神鎧甲は、お前達、戦乙女にしか着られない物じゃなかったのか?」
「リンドブルムの母、ヒルデガルドとは、おそらくトール神に仕える戦乙女であったのではなかろうか。リンドブルム自身も、その血を受け継いでいるのだ。神鎧甲を着られたとしても、不思議ではない!」
武舞台の鎧皮犀は、残った体力の全てを費やし、リンドブルムに突撃を開始した。
しかし、リンドブルムには躱そうという気配は感じられない。
ドドッドドッドドッドドッドドッ!!!!
「オオオオオオオオオオ!!!!」
鎧皮犀の蹄の音が響き、リンドブルムの咆哮が轟いた。
「雷神閃!!!!」
ズバアアアアアアアアン!!!
まるで神鳴りのような轟音が響いたと同時に、リンドブルムは斧槍を振りぬいていた。
そして、両断された鎧皮犀が、リンドブルムの左右を通り過ぎていった。
「「「「ウオーーーーーーーーーー!!!!」」」」
リンドブルムの勝利に、またしても闘技場が揺れた。
リンドブルムさん圧勝!これで、女子部門の四強が出揃いました。
いよいよ、本選の開始となります。