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ラグナロクブレイカー  作者: 闇夜野 カラス
始まりの章
8/211

死霊騎士の昇天

 シグルドと死霊騎士(スケルトンナイト)ヴィーザルが激突した音は、静寂を常とするヴァルムンクの王城にも響き渡った。

 そのボロボロの廃墟の深奥、数多くの調度品に飾られた部屋で、壁に架けられた赤ん坊を抱く、貴婦人の肖像画を眺めていた一つの存在が、その絵に語りかけるように呟いた。


『また、招かれざる客人が来たようだ。ヘカーティア・・・少し行って来るよ』


 その存在は、壁に掛けられていた剣を掴むと、魔導装甲(マギアームス)を起動させ、赤いマントを羽織ってその部屋を出て行った。


 それと時を同じくして、ヴァルムンクの王城の前では、一つの奇跡が起きようとしていた。


『こ、これは?』


 ヴィーザルは両断された己の槍と、袈裟がけに斬られた鎧を見ていた。

 斬られた箇所から光が溢れ出し、それが全身に広がりつつあったからだ。


『一体・・・?』


 そう言いながらヴィーザルの身体は、ゆっくりと崩れ落ちた。

 ガシャン!と音を立ててバラバラになる魔導装甲(マギアームス)、その中に在った死霊騎士(スケルトンナイト)の骨で出来た身体は、灰となって消え去ったからであった。

 しかし、その場に、未だ存在しているものがあった。霊体のみとなったヴィーザルが、生前の姿で立っていたのである。


『奇跡・・・なのかこれは?』


 そう言って、二人の決闘を見ていたアルベリヒは、シグルドの剣が起こした奇跡に驚愕していた。しかし、シグルド自身も、自分の振るった剣の引き起こした事態に驚いているようだった。


『やはり彼こそが、約束の者。』


 ヴィーザルはそう言って静かにアルベリヒを見た。

 その表情に、最早、この世に憂いは一切無いというかのような笑みを穿()き、空を見上げて、アルベリヒに(おごそ)かに告げた。


『友よ・・・先にヴァルハラへ参る。後は頼む。』


 霧を切り裂いて、空から一筋の光がさし、ヴィーザルを包み込むと、彼は天に向かいゆっくりと昇天していった。ヴィーザルが雲の中に姿を隠すと、光も共に消え去って行った。


「どうなってるんだ?」


 シグルドは、自分が何をしたのか分からなかったが。


『・・・あなたの勝ちです。』


 アルベリヒが静かに、シグルドの勝利を宣言した。


『一体、どうやったというのですか?』

「奴の力を利用した。切っ先を逸らしそのまま斬っただけだ。後のアレは知らん!」 

『なるほど・・・時に、なぜあなたはここに来たのか、今一度詳しく聞かせて頂いてもいいですか?』


 何故、それほどまでに死霊騎士(スケルトンナイト)がここに来た理由に(こだわ)るのか、分からなかったが、シグルドは懐から導きの宝珠を取り出し、それを見せながら答えた。


「この宝珠に導かれてここにやって来た。なんでも、俺の行くべき道を指し示すらしいんでな。光は王城の中を指し示している。邪魔をすると言うなら押し通るしかないが、どうする?アンタもやるかい?」


 そう聞いて、アルベリヒは考え込んでいるようだったが、顔を上げて言った。


『付いて参られるがよろしい。』


 そう言うと、シグルドを先導し歩き始めた。


(やれやれ、流石に先程の光景には度肝を抜かれたが、もう何が出て来たとしても驚くことは無いだろう・・・)


 そう思ったシグルドだが、これがまだ序の口であることを、すぐに思い知らされることとなるのであった。


 ヴァルハラは北欧神話で言うところの、天国のようなものです。

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