出場決定
ジークフリート一行は、ディートリヒ達との合流地点である港へと戻っていた。
ディートリヒは既に、ウルザブルンで手に入れた鮮魚の商談を済ませていた。
卸した鮮魚は、地元の漁協が捌くらしい。
なんでも、時期が時期だけに、かなりの収益になりそうだということらしいのだが、ジークフリートにはさっぱり分からなかった。
「殿下は、この後どうするおつもりですか?」
「宿を探して泊まろうと思う。予選は明日からだしな。」
「では、私達も共に参りましょう。闘技祭の間は、私達もここに留まるつもりですからね。」
と二人が話していると、人混みの中から、恐ろしい勢いで近づいてくる者があった。
それは、ブリュンヒルデあった。
彼女は、トウッ!と、跳び上がると、空中で二回ほど回転し、ジークフリートの前に着地した。
「主殿!私も今回の闘技祭、女性の部で出場することにしたぞ!」
「何!?」
ジークフリートは驚いたが、シュベルトライテとジークルーネは、予想通りという感じで、ブリュンヒルデに話しかけた。
「やはり、そうなりましたか。」
「やはりって、どういうことだよ?」
「ご主人様、姉上は見込みのある女戦士を見つけると、決って闘いたがるのですよ。」
「うむ!あのリンドブルムというもの、なかなかの腕と見た。これは、是非手合わせしてみなければなるまい!」
「ヒルデ・・・。お前な。」
「主殿に迷惑はかけない!任せてくれ!」
ジークフリートを見つめるブリュンヒルデの瞳には、迷いが全く無かった。
こうなった彼女を止めることは出来ないと、ジークフリートは知っていた。
「分かった!お前の事だ。止めても無駄だろ。やりたいようにやれ!」
「流石、主殿。話が分かるな!」
嬉しそうにそう言うと、ブリュンヒルデはジークフリートの腕に、しがみ付いてきた。
「さあ!明日からの闘いに備えて、今日の宿に向かおうではないか!」
とそこまで言った所で、ディートリヒの妻、アリシアが済まなさそうに声をかけて来た。
「ごめんなさい!宿はどこも、満室らしく、部屋がとれませんでした。これまで通りスキーズブラズニルでの寝泊まりになると思います。」
それを聞いてジークフリートは、もっともだと思った。
この大闘技祭は、このアズガルドでは、知らない者がいないくらいの、大イベントである。
当然、各地から人が集まり、その分、宿が埋まってしまうのだ。
「仕方がないな。ディートリヒ構わないか?」
「そうですね。前もって予約したならともかく、この時期に、飛び込みで泊まれる宿は、なかなかありませんからね。」
と言いつつ、ディートリヒは内心、ホッとしていた。
この、城砦都市ヴィーグリーズは、言わば敵地である。
自分達と一緒にいたほうが、危険は少ないからだ。
下手な宿に泊まって、刺客に襲われでもすればと思うと、いてもたっても居られなかったからだ。
最も、刺客など、逆に返り討ちにしてしまえそうな面子であるのだが。
ブリュンヒルデさん、出場決定です。
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