宣戦布告
ジークフリートは、去っていったリンドブルムの後ろ姿を見ていたが、その視線をブリュンヒルデが遮った。
「主殿!少しあの者と話がしたい。少し離れるぞ。」
「おいおい、離れるって、どうやって合流するんだよ。」
「忘れたか?私には、天空の眼があるだろう!心配は無用だ!」
と言うやいなや、いい笑顔を残して、リンドブルムの後を追っていった。
ジークフリートが、不思議そうな顔をしている後ろで、シュベルトライテとジークルーネがひそひそと話していた。
「見ましたか、ルーネ?姉上のあの顔を・・・。」
「姉上の悪い癖が出ましたね。遊び相手を見つけた子供のようでした。」
「まあ、成るようにしか成らないでしょう。放っておくのが一番です。」
「そうですね。あのお姫様には、気の毒ですが。」
その二人の前で、リンドブルムと共に来ていた二人の戦士が、ジークフリートに対し、あからさまな挑発を始めた。
「随分と言ってくれるじゃねえか!俺はこのヴィーグリーズの重戦士団の団長、ゴライアス様だ!ガルガンチュア様に挑むだと!巫山戯るのも大概にしろよ!コラ!」
「そうですね。はっきりいって不快です!私はヴィーグリーズ剣士隊隊長、フェルナンデス!あなたはガルガンチュア様に挑むことなど出来ません。何故なら、私に敗れるからです!」
どうやら、この二人は、ガルガンチュアに仕える、高位の戦士達らしい。
ガルガンチュアは、このヴィーグリーズに暮らす者たちにとって、尊敬の的である。
その偉大な王に挑むと言うだけでも不敬なのに、ジークフリートは何と言ったのか。
そう、王位継承権に係るものを頂くと言ったのだ。
つまり、彼等は自分達を差し置いて求婚したものと思い込んでいたのであった。
そうと知らないジークフリートは、二人の行動は、純粋に王に仕える者の忠義心より出たものと思い、こう答えた。
「俺は負けるつもりは無い。こちらははなから命がけだからな。」
この言葉に、ゴライアスとフェルナンデスは息を飲んだ。
「そこまでの覚悟があるのなら、こちらもそれに応えなければならんな!」
「我らも相応の覚悟を持って貴方と闘いましょう。」
そう言うと、二人は受付を済ませると、去り際に二人揃って振り返り、ジークフリートに向かってこう言った。
「「お前(貴方)には、絶対負けん(負けません)!!」」
ジークフリートの後ろで、遣り取りを見ていたシュベルトライテと、ジークルーネは、困った顔で、向き合った。
「微妙に話が噛み合っていないような気がするのですが。」
「ご主人様も、意外に天然ですね。」
その後ろで、少女の姿のヴィーが、露店で買った食料を頬張りながら呆れていた。
「やれやれじゃの。」
ゴライアス、フェルナンデス共に、ジークフリートに対して、敵既心を燃やします。
さて、ブリュンヒルデは、リンドブルムに何をいうつもりでしょうか?