紅の戦姫
リンドブルムと呼ばれた女性は、ジークフリートから距離をとると、手首をクルリとスナップをきかせた。
手にはめられた指輪から、電光が迸った。
電光は、一瞬で斧槍に変化した。
そして、一瞬で距離をつめ、斧槍を振り下ろした。
ジークフリートは、この展開を読んでいたので、落ち着いてグラムの召喚を行おうとした。
『我が元に来たれ!グ「我にまかせよ!主殿!」
ジークフリートの横から、ブリュンヒルデが飛び出さなければ、であるが。
ガコオン!!という音が鳴り響き、リンドブルムの斧槍は、ブリュンヒルデの守護の盾に阻まれた。
「おのれ!邪魔だぁ!!」
再び、斧槍を振り上げるが、ブリュンヒルデの右腕が煌くほうが速かった。
リンドブルムの首筋に、ブリュンヒルデの正義の剣の切っ先が当てられていた。
「バ、バカな・・・。」
「有りえん!姫様が戦いにおいて、遅れをとるなど・・・。」
リンドブルムと共に来た、二人の戦士はその光景を驚いて見ていた。
「何者だ!貴様は!」
「人に名を尋ねるときは、自ら名乗るものだぞ!」
「グググ・・・。」
紅の戦姫が手玉に取られるなど、このヴィーグリーズでは嘗てない事だった。
受付に集まっていた者たちは、皆が注目を余儀なくさせられた。
「・・・ヴィーグリーズ第一王女、紅の戦姫、リンドブルム!」
ブリュンヒルデは剣を引きながら、その名乗りに答えた。
「オーディンが第一女、守護の女神、ブリュンヒルデ!」
「ふ、ふざけるな!」
リンドブルムが、そう思うのも、無理はない。
しかし、ジークフリートが補足した。
「事実だ。彼女は女神だ。貴方が勝てないのも当然のことだ。」
そう言ったが、リンドブルムの怒りは収まらない。
「嘘をつくな!先程は不意を突かれただけだ!そうだ、シグルド!お前なぜここにいる!なぜ、大闘技祭などに出場する!?」
矢継ぎ早に、繰り出されてくる質問に答える前に、訂正することがあったことを、ジークフリートは思い出した。
「俺の本名は、ジークフリートだ。俺は、国を捨てた身だ。それに、ここへは、ある目的で来たんだよ。」
リンドブルムは、ジークフリートが出奔したことは知っていたようだったが、名が変わっていたことには驚いていた。
「お前の本当の名は、ジークフリートというのか。それに目的だと?なんだその目的とは。」
ジークフリートは、包み隠さず答えた。
「ガルガンチュア王に挑むためだ。王位継承に関わるあるものを頂く為に来た。」
その答えを聞いたリンドブルムの反応は、実に不可思議なものだった。
突然後ずさり、顔を赤くし、アワアワと声にならない声を発していた。
その様子を、ブリュンヒルデは興味深そうに見ていた。
「と、とにかく!父上に挑むのなら好都合というもの!敗者となった貴様を捕えればいい事!首を洗って待っているがいい!」
言うやいなや、リンドブルムは足早に去っていった。
リンドブルムさん、何やら勘違いしたみたいです。
お約束ですね!