船上の一時
「グハア!!」
気絶することから十分後、ようやくジークフリートは目覚めた。
「おお!目が覚めたか!主殿!」
「殿下!ご無事で!!」
ブリュンヒルデや、ディートリヒ達が声をかけるが、ジークフリートは上の空であった。
ジークフリートは、自らの身体が五体満足であるのを確認していた。
「凄いな・・・。」
改めて、ジークルーネの魔法の凄さに、驚きを禁じ得なかった。
そして一つ、ブリュンヒルデ達に聞かなければならないことがあった。
「ヒルデ、ライテ、お前達二人は、神技を使えたんだな?」
ブリュンヒルデとシュベルトライテは、顔を見合わせてから答えた。
「我らは戦乙女だ。戦うことを定められた我らは、それぞれの力に特化した神技を使える。」
「黙っていてすみませんでした。隠していた訳ではなかったのですが・・・。」
どうやら、二人はそのことを、ジークフリートが責めていると勘違いしたらしい。
「いや!責めているんじゃない!むしろありがたいくらいだ。おれも一度、ガルガンチュアが神技を使っている光景を見たことがあるが、あれを何とかしない限り、俺に勝利はないからな。」
ジークフリートは、ジークルーネを見ると、質問をした。
「あれは、どのくらいの時間になるんだ?」
その質問に、ジークルーネは軽い感じで答えた。
「現実では五分ほどでしょうか。」
「五分!!一時間近くは闘っていたぞ!それに、感じていた疲労もない。」
「目覚めてしまえば、回復します。しかし、精神の世界とは言え、死に至る激痛を何度も受けていては、精神が崩壊する可能性もありますがね。」
その答えに、ジークフリートは、獰猛に笑った。
「ありがたい!!これなら、なんとか間に合うかもしれない!いや!間に合わせてみせる!!」
グラムからもヴィーの悔しげな声がした。
『元気じゃのう、マスターは、しかし、我も負けっぱなしは気に食わぬしな!』
ブリュンヒルデとシュベルトライテに向きなおると、ジークフリートは、頭を下げた。
「頼む!二人とも、俺にもう少し付き合ってくれ!!」
ブリュンヒルデは、フフフと嬉しそうに微笑んだ。
「流石は、我が主殿!少しなどと遠慮はいらん!我の力、存分に役立てるがよい!!」
シュベルトライテも、一歩進み出て告げた。
「私も、微力ながら主様に協力させていただきます。」
ディートリヒだけが、心配そうにしていたが、やはり、ガルガンチュアに勝つ方法が、これしかないと分かっているらしく、ジークフリートを信じて応援することにしたらしい。
アリシアに、昼食の用意を頼むと、自らの持ち場に戻っていった。
「さあ!続けてくれ!!」
「手加減はせんぞ!主殿!」
「始めましょう!私の剣は易々とは、見切れませんよ!」
『我もいつでもいいぞ!!』
「では、再開します。いきますよ。」
一行の旅は、順調に進んでいた。
特訓は、厳しいものです。しかし、ジークフリートも折れません。
船の旅が終るまでに、ジークフリートは神技を手に入れられるのでしょうか?
次回は、あの方達の話です。