精神修行
結局の所、ブリュンヒルデとシュベルトライテは、ジークフリートのプロポーズというのは、人生のうちで最も重要なイベントである、だから、軽々しく行うべきではないという説得によって、普段通りの二人に戻った。
そしてようやく、傭兵王ガルガンチュアの攻略のための修行が始まったのである。
「で、これはどういう修行なんだ?」
ジークフリートは、ジークルーネの描いた魔法陣の上に胡坐をかいていた。
そして、正面にブリュンヒルデ、背面にシュベルトライテが座っていた。
ジークルーネが進み出て、説明を始めた。
「いまから、私の精神制御魔法で、四人の意識のみを繋げます。その精神で造られた世界では、現実と同じ条件で戦闘の経験を積むことが出来ます。後は、ご主人様の意志の強さ次第ですね。」
「精神だけ鍛えても、現実の身体は鍛えられないんじゃないか?」
「主殿、ジークルーネの魔法は、そこいらの魔法使いのものとは違う。現実の肉体にも、反映されるよう魔法陣を組んだのであろう。」
「その通りです姉上、ただしダメージを受けた場合、精神的な苦痛は感じますが、肉体に影響はありません。」
意志の強さとはそういうことかと、ジークフリートは納得した。
ただし、相手は、ブリュンヒルデと、シュベルトライテの二人である。
シュベルトライテ一人だけでも、あれだけ苦戦させられたのだ。
ジークフリートは、知らず知らずの内に、笑みを浮かべていた。
『マスターは、ヤル気満々のようじゃな。』
ジークフリートの膝の上で、グラムと化したヴィーが声を出した。
この修行は、グラムの力を引き出し、神技を習得するため、女神三人によって考案されたものだった。
なにせ、このままフィンブリスルの大河の流れに乗っていけば、大闘技祭には十分間に合うのだが、逆に時間がないのだ。
たった五日で、剣の達人が数十年かけて、やっと手にすることのできる奥義を、ジークフリートに習得させようというのだ。
女神が三人そろってこそ、実現させることのできるその力技に、ジークフリートはもちろん、ディートリヒ達も絶句したものだったが。
「では、行きますよ!」
ジークルーネがそう言うと同時に、魔法陣が輝きだした。
それと同時に、ジークフリート達四人の意識は、現実より精神の世界に旅立った。
そして、五分後、ジークフリートは、絶叫して気絶した。
強くなるための試練であります。ありがちですが、王道ですね!