酒宴
宴もたけなわとなった頃、ジークフリートは、オーディンの瞳を取り出した。
ジークルーネの封印を解いた以上、次の目的地が、示されている可能性があったからだ。
結論から言うと、その予想は当たっていた。
フヴェルゲルミルの中心を射していた光は、明らかに別の方角を示していた。
ジークフリートは、行き先を確かめるべくブリュンヒルデを呼び、天空の瞳を起動してもらった。
「さて、次の行き先は、どこだ?」
「光は、この街を示しているぞ!主殿!」
その街の地図を見た、ディートリヒは、ジークフリートが渋い顔をしていることに気が付いた。
「どうやら、城砦都市ヴィーグリーズを示しているようですな。あそこの女神の封石と言えば・・・。」
「大闘技場のモニュメントだ。国を興した初代国王が、雷神トールより授けられたと言われているあれだ。王位継承の秘宝とされているあの封石を手に入れるためには、大闘技祭で優勝して、傭兵王ガルガンチュアに挑戦して、勝たなきゃならんということだろうな。」
その答えを聞いたディートリヒは、驚いて立ち上がった。
「まさか!”雷帝”ガルガンチュアですか!」
「そうだ。しかも、俺はミズガルズの騎士として、ヴィーグリーズの侵略を何度も防いできた。あの国にとって、俺は不倶戴天の敵だろうな・・・。」
「そんな・・・。」
そんな暗い雰囲気を吹き飛ばしたのは、やはりブリュンヒルデだった。
「主殿なら大丈夫!それに胸躍るではないか!大闘技祭だと!戦乙女の血が騒ぐぞ!」
「そっちかよ!」
ジークフリートは、その変らないブリュンヒルデの信頼に、内心励まされながら、ふと思い返したようにディートリヒに尋ねた。
「ところで、ディートリヒ達は、この後どうするんだ?」
その質問に、ディートリヒ、アリシア夫妻は困ったように顔を見合わせた。
「これまで拠点にしていたミズガルズへは、もう帰る気はありません。ホグニ公爵に目を付けられてしまった以上、商売がしづらくなると思い。すでに、全財産を持って国を出ましたから。」
「なるほど。それで襲われた訳だな。」
ジークフリートは、魔導鞄に収納していた魔導宝庫を取り出した。
「実は、頼みがある。」
と言いながら、魔導宝庫の中からヴァルカンの財宝の一部を取り出した。
「なっ!」
「スゲえ!!なんですこの財宝は!?」
「炎竜ヴァルカンの財宝だ。これを使ってやって貰いたいことがある。」
ジークフリートは、予てより思い描いていた計画に、ディートリヒの協力を仰ぐことにしたのだった。
新たな目的地が示されました。そして、ジークフリートの頼みとは?以下次回!!




