魔導宝庫
ヴァルカンを倒し、ジークルーネを復活させたジークフリート達に、ミーミル神の声が聞こえた。
『無事に終わったようじゃの。では、こちらに戻すぞい。』
その声に答える間もなく、ジークフリート達はミーミルの泉へ戻っていた。
「御苦労じゃったの、ジークフリートよ。やはり、オーディンの見立ては間違っていなかったということかのう。」
ミーミル神が、しみじみと言うなか、ブリュンヒルデが進み出て答えた。
「当たり前です!我らの主殿こそ、まさに約束の者ですから!」
ジークフリートは、その言葉に照れながら答えた。
「まあ、どこまでやれるか分からないけど、やってみる価値はあるかもな。なんせ、世界の危機だ。何もしないでいたら、後悔するに決ってるからな。」
その答えに、ミーミル神が頷いた時、剣からヴァルカンの声がした。
『我も共に行くぞ!というか、行くしかないのだが。それが、我にとっても最良の選択らしいからな。』
ミーミル神は、剣を見ながら答えた。
「そなた、アカシックレコードに触れたようじゃの。しかし、その選択が、いかな未来を導くか、ワシにも分からん。本当によいのか?」
『それでいい!それに、我が花嫁もいるのだ。もう付いて行くしかないだろう。』
「ま、確かにのう。」
そこで、ミーミル神は、ジークフリートに向きなおった。
「さて、ここでの試練は、見事合格じゃといっておこうかの。そうそう、ヴァルカンのお嬢ちゃんの持ち込んだ財宝じゃが、そなたの、魔導鞄では、持ち切れまい。そこで、この魔導宝庫を授けよう。これからの冒険に役立ててくれい。」
そう言って、取り出したのは、掌に載るほどの木箱であった。
「すでに、財宝は中に入れておいた。心おきなく旅立つがよい。」
そうして、転移魔法を掛けようとしたミーミル神に、ジークフリートがあわてて声をかけた。
「そのまえに、一つだけ聞きたいことがあります。俺の知る話とこの世界は、あまりにも違いすぎる。これにも、なにか意味があるのでしょうか?」
その質問に、ミーミル神は笑って答えた。
「それでよいのじゃ。すでに、ワシ等の知る黄昏への道筋から、世界の運命は離れ始めた。そなたが、自身の前世の名を忘れていることも、その一環じゃ。この世界にこそお主の居場所を造れるようにのう。しかも、お主の記憶にあった物語の知識を反映させてこの世界は創られておる。お主が、往く先々でその知識が、お主を助けることもあるじゃろう。」
言われて、ジークフリートは魔導宝庫を見降ろした。
(なるほどな・・・。)
「では、また会う時までさらばじゃ!救世主ジークフリートよ!」
その言葉と共に、ジークフリート達は、転移の光に包まれた。
でたよ!アカシックレコード!中二ではお約束です!