魔法の女神
ジークフリートは、あれだけの力を振るったヴァルカンが、まだ成竜ではない子供であると、ブリュンヒルデ達に説明された。
なんでも、古代竜が成竜となるには、一万年かかるということだ。
それゆえに、ドラゴンの中でも、古代竜は希少種であるとのことだった。
(そりゃあ、あんなのが百も、二百もいたら世界が、滅ぶよな。昔の戦いで、ジークルーネ達は、どうやって戦ったんだろうか?)
疑問のつきぬジークフリートであったが、ブリュンヒルデの声が、彼を現実に戻した。
「さあ!主殿!ジークルーネの封印を解こうではないか!」
その言葉に反応したのは、ジークフリートだけではなかったが、
『なに!我が花嫁の封印が解けるというのか!』
興奮した様子で、語りかけて来たのは、ジークフリートの剣に同化したヴァルカンの声だった。
「そうだ。邪魔しないで見ていろよ。」
そういうと、ジークフリートは、剣を翳し念じた。
(封印よ!退け!)
剣に刻まれたルーン文字が輝き、封石に罅が入った。
その時、ヴァルカンが妙な声を上げた。
『む!むむむむ!』
「だから、邪魔するなと言っただろ!」
『そうではない!ただ、今、真理の一端に、手が届きそうなそうな気がしたのだ。』
ジークフリートが、怪訝に思っていた間に、封石は音を立てて砕けた。
またしても、破片は空中で静止し、その中から、女神が、光と共に現れた。
光が収束し、封石が元の結晶体に戻ると同時に、ジークルーネが大地に降り立った。
そして、優雅に一礼すると、自己紹介を始めた。
「はじめまして。ご主人様。私の名はご存知かと思いますが、あえて名乗らせてもらいましょう。オーディン神が三女にして、古代魔法の担い手、ジークルーネ。これより、貴方様の臣として、粉骨砕身、全力を持って仕えさせて頂きます。では、失礼します。」
そう言うと、静かに近づき、ジークフリートにキスをした。
その瞬間、叫び声が聞こえた。
『あーーーーー!!!我が花嫁に、なにをするかーーーーー!!!』
ブリュンヒルデは、その声をまるで無視して、ジークルーネに話しかけた。
「相変わらず真面目だな。ルーネ!久しぶりだ!」
そう言うと、ジークルーネに抱きつき、再会を噛みしめているようだった。
シュベルトライテも、嬉しそうに語りかけた。
「ようやく会えましたね。ルーネ。これで残る姉妹は、あと六人です。貴方の力、当てにしていますよ。」
「はい、姉上。頑張ります。」
まるっきり無視された形になったヴァルカンは、力なく呟いた。
『あ、あのー、無視しないでほしいのだが・・・。』
ジークフリートは、思った。
(これから先、どうなるのか俺にも分からん。こんな話は無かったはずだ。)
ジークルーネさん復活!委員長さんタイプです。