第三の女神
三人は、この時の塔に来た目的である、ドラゴンの姿を、初めてはっきりと見た。
「古代竜の持つ膨大な魔力は、ワシらの力からの干渉を受け付けんのじゃ。元々はこの塔に様々な罠や、ゴーレムなどを配置して試練とする予定だったのじゃが・・・。」
ミーミル神は、苦々しくモニターに映った竜を見た。
「こやつが、全て破壊してしもうたわい。最下層に配置した、守護者も、見事に倒してしまいよった。こやつとの戦いは、まさに、命がけとなろう。それでも行くか?」
ジークフリートは、肩の力が抜けた。
これまで、命がけで無かったことなど一度もなかったからだ。
そしてこうも思った。
おそらく、このミーミルという神は、未来を覗けるがゆえに、不確かな未来を恐れているのだと。
ジークフリートは、ブリュンヒルデと、シュベルトライテを見て答えた。
「正直な話、救世主とか言われてもピンとこないな。だが、俺はこの二人に認められるような男になりたい。当然行くさ!」
「それでこそだ!主殿」
「私も、お供します!」
三人の様子を見て、ミーミル神は、オーディン神の見込んだだけのことはあるということかと、思い直した。
「どうやら、余計な心配だったようじゃの。そなたらが望むのなら、今すぐあの竜の眠る部屋の前に転移させることもできるぞい。どうしてほしいかね?」
問われてジークフリートは、モニターを見た。
「あの子の名は?」
「あれは、ジークルーネだな!我らの中でも、特に魔法を使うことに秀でた戦乙女だ!」
モニターの中の女神は、鎧ではなく、ローブを着ていた。淡い水色のローブで、動きやすいように、ゆったりとした造りである。
髪は、海を想わせる青色で、三つ編みに編みこみ、その顔には、この世界では、ほとんど見られない、眼鏡が掛けられていた。
両手を広げ、直立するその前に、大きな水昌球が付いた錫杖が浮いた形で、固定されていた。
「ルーネは、魔法による支援や攻撃を得意としている。あの武器は、破壊の杖という、多対一の戦いにおいては、最も威力を発揮する神宝具だな!」
「広範囲攻撃魔法が得意ですからね、あの子は。」
「で、どうする?主殿。」
ジークフリートは、ニヤリと笑った。
「一刻も早く封石から出してやらないとな!じいさん!転移させてくれ!」
ミーミル神は、ニコリと笑うと杖を振った。
ジークフリート達は、一瞬にしてドラゴンの眠る部屋の前へ跳ばされた。
「ジークフリートよ!後はお主に託す。この世界を終焉より救い出してくれい!」
ミーミル神は、戦いに赴いたジークフリート達の無事を祈るばかりであった。
次回ようやくドラゴンとの戦いに入ります!